31話『オネット視点:唐突な決定』
ルセスの言葉に俺は言い淀む。
「俺は――」
何を迷う必要がある?
こいつの手を取ればリーシェを守る事が出来るんだ。
だったら迷う必要なんて――
そう俺が決断しようとした。その瞬間――
「騙されないで。」
リーシェの凛とした声が響き渡る。
「リーシェ?」
「奴等は貴方を手中に収める事で。私を支配下に
置こうとしている。だからそいつの言葉を鵜呑み
にしては駄目よ。」
リーシェの言葉で俺は正気に戻る。
「それもそうだな。」
俺の言葉にルセスは顔を歪ませる。
「余計な真似を。」
忌々しげに吐き捨てながらルセスはリーシェを睨む。
「お前らなんかにオネットは渡さない。」
そう言ってリーシェは俺を守るように俺の前で手を
広げる。
そんなリーシェの姿に俺は惚れ惚れとしてしまう。
「リーシェ。」
俺がそう呼び掛けるとリーシェは俺にしか聞こえない
声量で告げる。
「大丈夫。私が貴方を守るから。」
凛々しい表情でリーシェはルセスを見据える。
「流石の私でも貴女を相手するのは骨が折れますからね?
今日の所は引き下がるとしましょう。」
「その様子じゃ。オネットの事を諦めてはくれなさ
そうね?」
「ええ。どんな手を使ってでも彼の事を引き入れますよ?」
そう言い残してルセスはその場を去った。
「面倒な奴に目を付けられたな。」
俺は憂鬱げに溜息を吐く。
「とりあえず。必要な物をまとめておきなさい。」
突然そんな事を言い出すリーシェに俺は思わず困惑する。
「何で?急に荷造りなんか?」
「襲撃された以上。ここに留まり続けるのは危険でしょ?
だから今日中に荷物まとめて出ていくわよ?」
その唐突な決定に俺は度肝を抜く。
「まじか。」
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