増える謎
なんだかいい匂いがして目を覚ました
これはお茶の香りかしら…?身体をゆっくりと起こす
そこで私は腕が後ろで縛られていることに気づいた
あ~そういえばなんか後ろから口になにか布のようなものをあてられて眠くなって…誘拐かこれ
あるあるだけどまさか私が誘拐されるとは…やばい少し怖くなってきた…
とりあえず現状把握から始めないと
場所は広めの部屋だ。倉庫だとか誘拐と聞いて想像されるような汚い場所じゃないみたい
私はそこに手を縛られて転がされていた感じだ
扉は正面にあるけど窓はどこにもない。ということはここからしか出入りはできないと
とりあえず扉の前まで行くがドアノブがない。ならばと体を押し付けてみるがびくともしない
「まぁそうよね~…」
他に何かないか周りを見渡してみよう。幸いなんか物がいっぱいあるし役立つものがあるかもしれない
え~となになに
乱雑に積まれた壊れてる椅子
袋に詰められたゴミのようなもの
からの本棚に積まれた本
いつものニコニコ笑顔でお茶を入れているフウカさんとそれを見ている部屋で見る謎の女の子
破れた服
何に使うのかよくわからない家具のようなものなどなど
う~む…どうしたものか・・・・・・・・ん???今何かおかしな物なかった??
もう一度見てみよう
壊れた椅子
ゴミ
本
お茶菓子を切り分けるフウカさんとお茶を飲んでいる女の子…おるやんけ!
「フウカさん!?なにしてるの!!!」
フウカさんはいつもの手帳に「こんばんは。」と書き込んだ
「こんばんは。じゃないわよ!なにしてるの!?それにその子は?」
フウカさんは「まぁまぁ落ち着いて」と言わんばかりに私の前にお茶を置いた
いや手を後ろで縛られてるので飲めないんですが…
と思いきや急に腕が楽になった
あれ?縄がほどけてる?
見ると後ろにいつの間にかあの女の子がいてほどいてくれたらしい
「あ、ありがとう…」
とりあえず頭を撫でてみる。気持ちよさそうに目を細めて撫でられている…可愛いじゃないの
しかし本当になんだこの子…はっ!まさか座敷童の類か!!!!?なんて馬鹿なことを考えれるくらいには落ち着いたらしい私
しかしこの子は改めてじっくり見てみると何かに似ている気がする
黒くて小さくてかわいい…
「ナクロ?」
「?」
何気なくつぶやいたその言葉に、なになに?呼んだ?と言わんばかりにこちらを見上げてくる女の子
え…本当にナクロなの…?
「ナクロ?ほんとのホントにナクロ…?」
こくこくと頷いたナクロ(?)
人型になれたのね…?リアもいつの間にか人型になってたし魔獣にしたら珍しいことじゃないのかしら?
驚いたけど正体が分かった今ではこうして気持ちよさそうに撫でられている姿は確かにナクロだ
うんうん疑問も解決したし安心安心
じゃないわ
今絶賛誘拐され中だった。忘れてたわ
「それでフウカさんは何でここにいるんです?もしかして私って誘拐されてるんじゃなくてドッキリとかですか?」
フウカさんは少し考える素振りそ見せた後、手帳に「私がここにいる理由はお気になさらずに。あと誘拐はちゃんとされてますので安心してください」と書いた
いや気になるわ!安心できんわ!!前々から思ってたけどやっぱりこの人も少しおかしいよ!お母様が小さいころからの付き合いらしいけどそのころのお母様を描いた絵画を見せてもらったところなんと見た目が変わってなかった
謎過ぎるぜフウカさん
とりあえずお茶を飲み干しお茶菓子を完食して後片付けをはじめたフウカさんを眺めながらナクロを撫でる
平和だ…とその時、部屋の外から足音が近づいてきた
それからの行動は早かった
ナクロが機敏な動きで再度私の腕を縛り
フウカさんは荷物をまとめて部屋の隅でナクロを抱えて座った
いやいやいや!ばれるでしょうそれ!!!
しかしもう私にはどうすることもできない!
そして扉が雑に開かれて…やたらとこじゃれた服を着た男性が数人現れた
「なんだこの部屋?なんか妙にいい匂いがしないか?」
「今はそんなこといいだろ。早く行こう」
「そうだな…おい立て」
グイっと胸元を掴まれて立ち上がらされる
もうちょっと丁寧に扱ってほしい
しかしこいつら…フウカさんたちに気づいてない…?
ちらっと横目で見るとフウカさんが手帳をこちらに向けていてそこには「大丈夫ですので安心してください」と書き込まれていた
なんだかんだ小さいころから色々と面倒をみてくれたフウカさんがいるとつい安心してしまうチョロい私
「ちんたらするな、早く歩け。この帝国の小娘が」
その物言いでわかったけど…いやなんとなくはわかっていたけどやっぱそういう感じの人か…どんだけ私嫌われてるのよ全く…
男たちに連れられて歩いていたけどここはどこかのお城らしい
周りを囲まれているので逃げ出せないからおとなしくてくてくと歩く
ちなみに後ろからフウカさんがナクロを抱えたままついてきているが気にされている様子はない
謎は増えるばかりである
そして一際大きな扉の前まで行くと入れと蹴り飛ばされた
痛っ…くはない。なんでだ???なんかびっくりするくらい痛くなかった
それでも部屋の中に倒れ込んでしまったので腕が使えない中なんとか立ち上がる
そして正面にその人はいた
「あなた…」
「お久しぶりですわね。まさか私の名前を忘れてはいないでしょう?」
正直覚えてない
というか名乗られただろうか…?本当に覚えてない
ただ別の名前なら憶えている
その人はあの伝説の革命の乙女(笑)さんだった




