新しい出会いとあるある体験
パーティーの喧騒から離れてテラスに出た
オープンになっているので風が気持ちいい
なんて言っている場合ではないのだけれども
「それでお兄様?こちらの方たちは…」
「あぁうん、驚いたよね。この人たちは」
「まぁ待ちたまえディース!ここは素敵なレディに俺自ら挨拶させてもらえないだろうか」
キラキラオーラのお兄さんが金髪をかき上げニコッと笑った
はは~ん…さては楽しい人だな???
「それでは改めまして、俺はハルトレーベ・アルス。親しみ込めてハルトとでも呼んでくれ」
ぱちっとウインクまで決められた
余談だけど私はウインクができない。
「兄さん。恥ずかしいから私といるときに無駄にかっこつけないでって言ってるでしょう…さて私も名乗っていいかしら?」
今度はキラキラしたお姉さんのほうが前に出た
腕を前に組んでこちらを見つめてくるその姿にすこしだけキツイ印象を受けるがそれよりもキラキラオーラがすごくてもう凄い
「私はレーメルーリ・アルスよよろしく」
キラキラな二人からの挨拶が終わり私も慌てて挨拶を返す
「ご丁寧にありがとうございます。私はヒスイ・スズノカワと申します。先ほどは助けていただきありがとうございます」
ぺこりとお辞儀する
あのまま止めてもらえなかったらパーティーで王子をぼこぼこにした女として語り継がれてしまっていたとことでしょう
「気にしないでおくれ、レディを守るのはナイトの役目さっ!」
「はぁ…兄さんはおいておいて、怖かったでしょう?弟…とは言いたくないけれどアレがごめんなさいね」
レーメルーリ様から頭を撫でられる
きつそうな見た目に反して優しい人だなぁ
というかアレが弟ってことはやっぱり
「あの…お二人はもしかして王族の…?」
「そうだよヒスイ。この二人は一応この国の第一王子と王女様だ」
お兄様が私の考えを肯定してくれた
やっぱりそうなのか~でもなんだか当の二人は苦笑いを浮かべていた
「はは、もう俺たちのほうにはこの国の王族なんて自覚はないけどね」
「そうですわね。私たちはもう自らを帝国の民だと認識していますわね」
えぇ…確かこの二人って人質として帝国に行ってたのよね?
帝国のほうが住み心地がいいのかな?まぁ私なんて一応帝国人のはずなのに帝国に行ったことないんだけどね!!!
ちょっとそこらへんの事情を聞いてみたいけれどデリケートな理由だったらツッコみにくいよね…
「いや実はね、俺たちは今の王妃の子供じゃなくてね」
おっとなんか語ってくれるらしいぞ?これはありがたいので粛々と聞くことにする
「その関係でよくいびられたものさ。母親は俺たちが幼いころに病死してしまって今の王妃にここぞとばかりに帝国に送られてしまったという事さ」
「あらまぁ…」
やっぱりなかなかヘビィーな話だった
このまま聞いてていいのかな…?話してくれてるからいいのかな
「まぁでも結果としてはそれでよかったのですわ。皇帝陛下は私たちを快く迎えてくれましたし、自由もある程度は許していただいて不満なんてありませんもの」
「そうそう、ここにいた頃とは大違いさ」
「そうなんですわね…あのところでお兄様とはどういう関係なんです?」
「ああそれね。この二人は見ての通りこっちにもよく来てるから父上から紹介されて一緒にお仕事したりしてるんだよ」
「その通り!いやぁ我が友ディースはいろいろと有能でなぁ、随分と助けられているよ~はっはっは!」
お兄様とハルトレーベ様は肩を組んで笑っていた
本当に仲良しさんなのね~年が少し離れてるはずだけど…お二人は確か24歳くらいだったはず…
それでもお兄様もため口だしいい感じの雰囲気だ
しかしそんなに仲良しならもっと早く私に紹介してくれてもよかったのでは?
むむむ…まぁそこもなんか理由があるのかな?しかし話してくれないことは気にしないのが私クオリティー
「はぁ…兄さん、あんまりディース君を困らせないように…ところでヒスイ?」
「あ、はい!なんでしょうかレーメルーリ様!」
「そんなにかしこまらないで頂戴な。私の事はレーメって気軽に呼んでいいわよ」
「ではレーメ様と」
「うんうん、素直でよろしい…あの弟と違って可愛いわ」
なでなで
めっちゃ頭を撫でられる
こういうの割と新鮮だなぁ…私の周りってこういうとあれだけど、その…手下みたいなのしかいないから…こういうお姉ちゃんみたいな人は珍しい
しかしお姉ちゃんか…やっぱりあの第二王子とは仲が悪いのかな?
「あの弟といいますと…やっぱり仲は悪いんですか?」
「悪いなんてもんじゃないわ…もう半分でも血がつながっているのが許せないレベルよ」
「そ、そんなにですか…」
「そうそう。あの子はあの王妃と王の子供だからってのもあるかもしれないけれどどうしようもなくてね…もう物心ついた時から「愛人の子のくせに偉そうにするな」とか「僕に対等に口をきくな」とかもう最悪だったわね」
「おおう…」
「でもほら、一応弟だし分別がつくようになったら変わってくれるかもって二人でたまに会いに行ってたんだけど変わらず。もうここまで育ってあれなんだからもう駄目だと見切りをつけたところよ」
なるほど…それは仕方ない…
「それは…大変でしたね」
「いや私よりあなたのほうが大変でしょうに。あれの婚約者なんでしょう?ディース君からいろいろ来聞いたわよ」
「そうそれだ!ヒスイ!君も色々大変だろう。何かあったら遠慮せずこの俺を頼ってくれたまえ!」
ハルトレーベ様が私の手の甲にキスをした
おぉ~こういうの本当にあるんだね~すげぇ~
「ハルト!妹に手を出すのはやめろ!」
「はっはっは!我が友ディースよ!妹が大事なのはわかるがこのような可憐な花を日陰に閉じ込めておくのはよろしくないぞ?花は日のもとでこそ美しく咲き誇るのだから!」
「わけのわからないことを言うのはやめろ!そして僕がどうとかじゃなくて妹に手を出すと本当にいろいろとあれだから落ち着けって!」
お兄様、お兄様よ、あ~お兄様?
あれってなに?私に手を出すと何が起こるの?私が怖いんだけど
「まぁ兄さんは置いておいて何かあったら遠慮なく頼ってね?それとこんどお茶でもしましょう」
「わぁレーメ様ありがとうございます!…そうだ今度お兄様の好きなお茶とかお菓子ももっていきますね…?」
レーメ様が固まった
ふふふ私が気づかないとでも?レーメ様あなたお兄様を見つめる目が真っ赤かですわよ!!
カツラギがリリィベル先生を
セリックがサーシャを見つめる目に似ている
そういえばあいつらの関係は少しは進展しているんだろうか…?
「お兄様はずっと独り身で私心配してましたので…レーメ様が本気なのでしたら応援しますよ?」
「…ヒスイ、あなた本当にかわいい子ね。私の事は姉と思ってくれていいからね」
「おお!?今何の話をしていたんだい!?姉とか聞こえたがなら私の事もお兄様と呼んで…」
「それは僕の特権だぞハルト!!!」
こうしてこの日、私にキラキラのお兄様(?)とお姉さまができたのであった
そしてパーティーもぼちぼちと解散になったころ
三人で打ち合わせがあるという皆を置いて一人で戻ろうとしていたところ
背後から突然なにか布のようなものを口に押し当てられた
あ、やばい…これって…よくあ…る………展開の…やつ………
私の身体から力が抜けて意識も遠ざかっていく
そう私はあるある展開の一つである誘拐という目にあってしまったらしい




