理不尽な決闘開幕
決闘を申し込まれて30分がたった
私は第二王子の監視のもと向かい合って剣を構えていた
え?始まるまで短すぎないかですって?
私もそう思った。
準備期間とかないの?と思ったんだけどそのままグラウンドに設置された舞台まで連れていかれてさぁやれと言われたのだ
「…こういうのって数日くらい時間を貰えるのでは?」
「あぁだから決闘を受理して三日目の今日だ。ちゃんと申請書にもそう書いてある」
「私は何も聞いていないのですが?」
「ふん。雲隠れしていた自分の卑劣さを恨むがいい」
無茶苦茶だ…決闘は国にちゃんと認められていることだからいろいろルールがある
こんなの絶対ルール違反だと訴えてみたが第二王子の「俺が許可した」の一言ですべてが認められてしまう
もう一か八かやるしかないのだ
幸いセリックから剣技を、カツラギから身体の動かし方を習っていてスジがいいとお墨付きをもらっている
これで革命の乙女(笑)さんが実はへっぽこという可能性に賭けてみよう
「お嬢様…これを」
心配そうな顔をしたメリッサから剣を受け取る
装飾がはいった剣だ
もちろん刃はつぶしてある
「せめて身体強化の魔法くらいかけておきます?」
「おい。外部からの魔法はルール違反だ」
サーシャの提案も第二王子に即却下されてしまった
「お嬢様、危なくなったらすぐにお逃げください。何があっても私がお守りいたしますから」
セリックが私の手を痛いほどに握る
いやマジで痛いんだが
「………」
エリーはさっきから何も喋らない
ただただ革命の乙女(笑)さんと第二王子を見つめているだけだ
ちょっと怖いですよエリーさん?
そしてグラウンドには野次馬で大勢の生徒たちが集まってきていた
くそ~見世物扱いかよぉ…
というか野次馬の中をよく見ると
「お~い~ヒスイがんばれ~」
なんかリアがいる
神出鬼没な子だ…ほらぁなんか知らないナイスバディな美人のお姉さん(見た目)がいるからざわざわしちゃってるじゃん
はぁ~なんか…不思議なことがおこって全てを解決してくれないだろうか…
まぁでも覚悟を決めてやるしかない…負けちゃったらうちの領地の平民たちが連れていかれてしまう
大切な労働力だし何よりも大切な家族だ…こんなわけのわからないことで失うわけにはいかない
まぁ負けたら負けたでめちゃくちゃごねるけどね
あ、そうだ
「ナクロは危ないから離れててね」
頭の上のナクロを地面に下ろす
私本人も忘れがちだがナクロは基本的にいつも私の頭の上で寝ているのであしからず
さぁもうあとは当たって砕けるしかない
「準備はよろしいですか?」
革命の乙女(笑)さんが余裕の笑みを浮かべながら確認をしてくる
「全くよくはないですが大丈夫です」
「では始めましょうか。殿下お願いします」
「では双方、正々堂々と戦うように…はじめ!!」
第二王子が仰々しくポーズを取り手を振り下ろした
合図と同時に革命の乙女(笑)さんが細剣を構え突進してくる
やっぱそういう感じですよね
斬るよりは突くといった感じの武器だ。あれって刃がつぶしてあっても突かれるとヤバいよね?というかつぶしてあるよね刃?大丈夫だよね?
というか速い!?
「ぐぅ…!!」
何とか横に飛んで回避するけど足が速いだけじゃなくて突きもめちゃくちゃ速かった
これは…へっぽこじゃないな!!!
しかもそれだけでは終わらない
「水よ」
その言葉と共に革命の乙女(笑)さんの手から水の塊のようなものが放たれた
「えっ嘘でしょう!?」
完全な不意打ちだったために慌てて回避したものだから地面に転がってしまった私
「魔法を使うなんて!これはルール違反なのでは!?」
外からセリックの抗議の声が聞こえるが…
「魔法の禁止などルールにない。」
ほらねぇ…こうなるんですよ
私は頑張って平静をたもちつつ立ち上がり革命の乙女(笑)さんに問いかけてみる
「あなた最初に剣の勝負って言ってなかった?」
「いいえ?そんなこと言ってませんよ…私は「見てわかりませんか?」と聞いただけです。そこで何もお聞きになりませんでしたので知っているのかと…申し訳ありません」
すげぇ…めちゃくちゃ卑怯だ…もう本当に革命の乙女(笑)さんじゃん!
「そもそも魔法が使えない私に魔法を使って戦うなんて卑怯だと思いませんか?」
「戦いはいつも全力で。相手に敬意を持つからこそ私も持てる力をすべて使う…それだけの事です」
このやろう!屁理屈ばかり言いやがって!
何を言おうともばっちり卑怯だからな!?
「では再開しましょうか。水よ!」
今度は先ほどよりも大きな水の塊が私に襲い掛かる
くそ!こっちもねやられっぱなしじゃないんですよ!
来るってわかってるならやりようはある!
私は剣を構えると水の塊に向かって思いっきり叩きつけた
「なめるな!!!」
すると水の塊はまるで最初からなかったかのように綺麗に消えた
そう、この剣は何を隠そうカナン姉妹の合作の「魔力斬れる君」である
その名の通り魔法を斬ることができる不思議な剣なのだ!
もちろん限度はあるがアレくらいの魔法なら大丈夫
「はぁ…不思議な剣をお持ちのようですね。平民を虐げて徴収した血税をそんなものに無駄遣いして恥ずかしいとは思いませんの?」
「いや、あなたが言わないでよ…」
それにこの剣は普通の少しだけお高めの剣にカナン姉妹が魔法をちょいちょいってしたものだから価値はともかくとしてお金はかかってないのだよ?
その後はしばらく硬直状態が続いた
剣の扱いは多分革命の乙女(笑)さんのほうが上だけど私は何とか攻撃をかわし続けられている
そして攻められることには慣れてないのか私がたまに反撃すると体制を崩して少し慌てる
だが体制を整えられるとまた私は逃げに徹しなければいけないのでそれの繰り返しだ
どちらも決定打がない
すると革命の乙女(笑)さんがしびれを切らしたのかとんでもない手に出た
「こうしていても埒が明きませんわ。ならばこちらも切り札を切るとしましょう」
カツンと革命の乙女(笑)さんが細剣を地面に突き立てた
するとそこを中心に魔方陣が広がっていく
あの魔方陣…どこかで見たような…?
「お嬢様!お逃げください!あれは使い魔召喚です!」
メリッサの叫び声で思い出した
あれはナクロを召喚した時に見たやつだ
まってさすがに魔獣の相手なんか無理よ?
革命の乙女(笑)さんはなんか無駄にすごいやつ召喚しそうで怖い
一応横目で第二王子を見るがニヤニヤと笑っているだけで止める気配はない
はいはいこれもルール違反じゃないんですね~っと
そして魔方陣が眩しく輝いて
革命の乙女(笑)さんの背後に現れたそれは
大きな大きな青いドラゴンだった




