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エリナリナ視点 王との謁見と絶対の強者

魔力検査の後、式は一時中止となった

私が龍の魔力を見せたせいだ

当初は私もタマリと同じように自分の魔力を偽装するはずだった

しかし気が変わった

この学園はダメだ

ヒスイ様に敬意を払わない連中が多すぎる。

まぁ敬意を払わないのは仕方がないかもしれない。みんなあの方がどれだけ素晴らしい人なのか知らないのだから

でも、悪意を持つのなら話は別だ

ヒスイ様の事を何も知らないくせに、あいつらは悪意をもってヒスイ様を笑いものにした

だからこそ私は自分の魔力を隠さずに見せてあげた

こうすれば否が応でも私に注目が集まるだろう

そして教えてあげるんです。あなた達が笑ったその人がどれだけ尊い存在なのかを


無駄に長いなんのためにあるのかわからない豪華な装飾を施された通路を歩く

ここは王宮

あのあとすぐに私はこの国の王様に呼び出されたのだ

学園長がすぐさま伝えたらしい

すぐに学園長の魔法でそのまま王宮に転移したわけだ

転移の魔法はかなり条件が厳しいのだけど…どうやら何らかの方法を確立してるみたい


やがて先導していた騎士が大きな扉の前で立ち止まるとこちらに向き直り


「この先が謁見の間だ。くれぐれも無礼のないように」


と言い放った

私はその問いに何も答えなかった


「おい!聞いているのか!」

「まぁまぁ落ち着くのじゃ騎士よ…この娘はまだ15になったばかりの平民の娘故に緊張しておるのだろうし少しくらい大目に見てやるがよいじゃろう」


学園長が的外れな擁護を繰り出した

まぁ今はそれでいいですよ。めんどくさいですしね


そしてやけに勿体つけながら大きな扉が開く


「入れ」

騎士に言われその先に進む

周りにはたくさん豪華な服を着た偉そうな人達

そして真ん中の一番高い位置にあるこれまた豪華な椅子に腰かけたどっぷりと太った王様

私は促されるままに部屋に入りそして玉座の前で止まった

隣にいた学園長と後ろから入ってきた騎士が跪き、礼の姿勢を取る

でも私は立ったまま、まっすぐと王様を見据える


「貴様!王の御前だぞ!跪かぬか!!」

王様の隣にいる男性が叫ぶその言葉も無視する


「よい。その娘を呼びつけたのは私だ…ならば一度くらいの無礼は許そうではないか…皆の者も顔を上げよ」


その場の全員が顔を上げ立ち上がった


「さて…貴様も知っていようが私がこの国の王だ。今回は我が国に龍の魔力をもつ巫女が現れたと聞いたわけだが…貴様で間違いないのだな?」

「はい間違いありません」


「そうか…名前は何という?名乗ることを許そう」

「エリナリナ・キールスと申します」


私はそのままで名乗ったが

「馬鹿者!礼をせぬか…!」


学園長から小声でお叱りを受けるがもちろん礼などしない


「ふむ…エリナリナと言ったか?なるほど容姿は優れているな。ならば平民という環境ならば何もせずとも生きていけたのだろうがここでは私に礼を尽くさぬものは生きては行けぬということをおいおい覚えておくがよい」


王様の言葉に周りに居た騎士たちが剣に手をかける

ローブを羽織った魔術師たちも腕を上げる

そして文官や宰相と思わしき人たちは私を不愉快そうに見ていました

だから私はこう言った


「お断りします。」

「なに?今なんと言った?私も歳だ…耳が遠くなっておってな。もう一度申してみよ。今なんと言った?」


「お断りしますと言いました。私はあなたに敬意を払うつもりはありません」


その瞬間、私を案内していた後ろに控えていた騎士が動いた

背後から私に剣を突き出してきたのだ

しかしその剣は私に触れることなく灰になって消えていく


「な…!不敬罪及び暴行罪だ!この女をとらえろ!!」

王様の隣にいた男性の叫びと同時に周りに居た騎士が剣を抜き襲い掛かってくる

魔術師もまた私に向かって魔法を放った

私は腕を一振りして魔力を放つ

それだけで剣と鎧は灰となり

魔法はその魔力ごと跡形もなく消え去る


「な、なんだと…」

「これは…ふむ…なるほど…」


反応は様々だった

魔法を消された魔術師たちは腰を抜かし

武装をなくした騎士たちはおろおろと困惑するばかり

他の者たちは何が起きたのか理解できずに言葉を発せずにいた

ただ一人

「おぉ!素晴らしい!これが龍の巫女の力…!!!」


学園長だけはすごく喜んでいた


「こ…この!」


最初に攻撃してきた騎士が素手で私を殴りつけてきた

もうこれは魔力すら必要ありません

セリックさんは王国の騎士は弱すぎるって嘆いていたけどこれは想像以上だ

私なんかにも動きが見えるんですもの


私はその騎士の拳を受け流すと掌底の形を作り急所を打ち抜いた

ドサリと騎士が倒れた


「き、貴様わかっているのか…これは重罪だぞ…!!」

王様の隣にいる人が叫ぶ

なんだろ?さっきから喋ってるけどあの人が偉い人なんですかね?宰相さん?

そちらに視線を向けると「ひぃ!」という情けない声と共にその場にへたり込んでしまった


「わ、わかった!そなたは私に力を見せようとしたのだな?十分に見せてもらったぞ龍の力を!これからは私のため、王国のためにその力を振るって欲しい!」


あれ…?どうやら王様はさっきの私の返答を聞いてはいなかったようです

だからもう一度はっきりと伝える


「お断りします」と


「…我が臣下達が無礼を働いたのは謝ろう、王が謝ろうと言うのだ。すべてを水に流してくれるであろう?」

「そんなことどうでもいいのです」


私は玉座に向かって一歩を踏み出す


「わかった!報酬だな?その力を王国のために使ってくれるのなら好きな額を払うぞ!永遠に使いきれぬほどの金をやろう!」

「いりません」


もう一歩


「今そなたに無礼を働いたものは全員極刑に処す!それで満足だろう!?」

「どうでもいいと言いました」


そして数歩

私と王様の距離はもう目と鼻の先


「なんだ…何が望みなのだ…」

「王様。私はですねスズノカワ家でお世話になっているんです」


「なんだと…あの帝国の連中のもとで…?」

「はい。なのに次から次へといろいろ嫌がらせをしてくれましたね」


「待て、待ってくれ…違う。あれはそなたがいるとは思わなかったのだ…知っていたらそんな」

「私がいるかどうかではなく、もう手を出さないで欲しいんです私は」


「なぜスズノカワに肩入れする…?そなたほどの力があればあんな奴らより…」

「あんなやつら?」


私を、私たちを助けてくれなかったのによく言いますよね

孤児院の話は聞いていました

許せないと思った

でも同時に感謝もしているんです実は

だってそのおかげでヒスイ様と会えたのだから

でもあんなやつら呼びはダメです


「私に手を差し伸べてくれたのはヒスイ様です。あんなやつらなんて呼ばないでください」

「ヒスイ…?あの家の一人娘か…!あんな魔力もない小娘など…ぐぅ!?」


あぁだめだ…ヒスイ様への汚い言葉だけはどうしても許せません

自分を抑えきれなくなってつい魔力を放ってしまった

ヒスイ様の事となると自分を抑えきれなくなるのが悪い癖ですね本当に…

でも仕方ないじゃないですか…誰だって自分の大切なものがけなされるのは我慢できないでしょう?大切ということはそういうことです


でもこのままじゃ話が進みません

もう私の目的だけ話してしまったほうがいいかも


「そなたは…スズノカワの…帝国の味方をするというのか…?」

「陛下。私はどこの国だとかに味方するつもりはありません。あえていうのなら私はスズノカワ家の…いえ、ヒスイ様の味方です。ですからもうヒスイ様やスズノカワ領に手を出すのはやめていただけませんか?」


「ま、待ってくれ…なにか望みはないのか?なんでもこの私がかなえてやるぞ…?だからこちらにつかぬか?」


この期に及んでまだそんなことを言うのか

私が望むのはヒスイ様が笑って暮らせる世界だけ

それ以外は何もいらない


「そうだ我が息子のキースロイスなどどうだ?あれは女どもに人気だと聞くぞ?あれをそなたの婚約者としようではないか!」


死んでも嫌だ

と答えようとしたが少し考える

いいんじゃないかな?とも思えるのだ

アレが私の婚約者になるのならヒスイ様から引き離せる

それでヒスイ様の心労が少しでも軽減されるのならありかもしれません

私は検討する価値があるとしてこたえようとして


「ダメだよ」

視界の隅で炎が燃え上がった


~王国側視点~


宰相は魔法で外と連絡をとっていた

王が龍の巫女と交渉している間にこの状況を打開するべく動いていたのだ

この場にいる兵たちではかなわなかったが外にはさらに強いものたちがいる

あの忌々しい魔女たちを研究してその力の一端を再現した魔法兵たち。それを呼び出していた。

もうじきここに来る

そうすればいかに龍の力を持とうともねじ伏せることができるはずだ

王をコケにした罰は受けてもらわねばならない

そして心からの謝罪を引き出した後は契約で縛って死ぬまで国のために働いてもらおう

そして魔法兵が到着した時


「ダメだよ」

そんな声と共に龍の巫女の横で大きな炎が燃え上がった

やがてその炎は人の形をとると何も燃やさずに消え去りそして…そこに一人の女性が立っていた

一言でいうと妖艶な美女だ


足元まで伸びる長くまっすぐな深紅の髪にたれ目が特徴的な異様に整った容姿

そしてゆったりとした服の上からでもわかるその豊満な身体つき

それはまさに誰かが一から作り上げたこの世の美とでもいうべき存在だった


「リア?どうしたのいきなり」


龍の巫女がその美女に親し気に話しかけた

そして美女も口を開く


「あのね~あの王子~?と~リナが~一緒になるのは~み~と~め~な~い~」

それはまさに異質だった

妖艶な美女から発せられたとは思えぬほどの間延びした幼い喋り方だ

しかしそれが逆に美女の異様さを引き立てていた


「どうして?私は結構いい考えだと思ったんだけど?」

「ダメです~僕はゆる~しません~…僕と~リナは~一心同体だから~あれと~一緒になるなんて~絶対~い~や~」


「これでヒスイ様が嫌な思いをしなくてよくなるかもしれないのよ?」

「それはそれ~これはこれ~と~に~か~く~だ~め~」


どうやらこの美女は龍の巫女とキースロイス王子の婚約を認めたくないようだ

そもそもこの美女は誰なのか

その正体にこの場の誰もが気づいていた

ただそこにいるだけなのに感じるすさまじいプレッシャー

あの虎の子の魔法兵も動けずにいる。もちろん宰相や王も指一本すら動かせない

力の差だとかそんなものじゃない

次元が違う。生物としてこの人には…いやこの存在には絶対にかなわないと本能で理解していた

そうこの美女の正体こそ…龍なのだ


「はぁ…リアがこんなに拒絶するなんて…ほんとに嫌なのね」

「うん~これだけは~絶対に~許さない~」


「わかった。じゃあこの話はなしね」

「うん~それじゃあ帰るね~ん~とね~そこの~王様だっけ~?もう~僕のリナに~変なこと~言ったら許さないから~」


その言葉を残して巫女と龍は姿を消した

その場の全員が滝のように汗を流していた


「…キースロイスを呼べ」


王がそういった


「殿下をですか…?な、なぜ…」

「決まっている…あいつにこのままスズノカワの娘と円満に事を進めよと念を押すのだ…あれを敵に回してはならぬ。だがキースロイスがあの娘を手に入れられたのなら…我らはあの強大な龍も手にすることができる」


王のその言葉に全員が頷いた

この日から王によるスズノカワへの干渉はぴたりと止まる

だが彼らは知らなかった

頼みの綱のキースロイスが最もヒスイを傷つけている者だということを

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