学園の始まり
ついにこの日が来た
今日は学園の入学式の日である
つまりどういう事かって?とうとう今日から物語が始まるってことよ!!!
ぎゃぁあああ~~~~~!!!
とまぁ叫んだところで何も変わらないわけで
やるしかないのだ。私は覚悟を決めて一歩を踏み出した
「けどなんだか周りのメンツはほぼ変わらないからいまいち緊張感はでないわよね」
学園に向かう馬車の中には私とエリー、そして従者を連れていくこともできるのでメリッサとサーシャの姉妹も同席、最後に護衛としてセリックがいる
もう一台馬車があってそっちには同じく入学組のギア、メナ、タマリとお兄様が乗っている
ほとんどが屋敷でも一緒にいるいつめんじゃんね
「楽しみですね。ヒスイ様」
「…そうね」
エリーがにっこりと笑っている
この子もこの5年で美少女感に磨きがかかっている
圧倒的美少女である
さすが主人公だ
可愛すぎて私でもドキドキしてしまう時がある
おそらく入学するとモテるだろな~…そして恋仲になった男と結託して私を倒しに来るんだ…
おのれ美少女め…!
「どうかなさいましたかヒスイ様?私の顔に何か?」
「…いや、可愛いなと思って」
ガタン!と馬車が揺れた
珍しく慌てた表情を見せるメリッサ
むせるサーシャ
態勢を崩すセリック
笑顔のまま固まっているエリー
「え?なに?どうしたの?」
「ヒスイ様」
体面に座っていたエリーがいつの間にか目の前にいた
あれ?私目を離してないのいつこんな至近距離に?
「ん?」
「私、可愛いですか?」
先ほどまでの笑顔じゃなくてすごく真剣な顔で聞かれた
え~?なにこれ、どういう状況?
というか誰が見てもエリーはかわいいと思うけど…
「ええ、すごく可愛いけど?」
「そうですか。ありがとうございます」
そういうとエリーはにっこりと笑って席に戻った
はは~んこれはあれだな?誰かに「可愛くない!」って言われたやつだな?
こんなに可愛いんだもの、女性に嫉妬して言われたか…男性に照れ隠しで言われたのね~うんうん言われたほうは傷つくよね
男子諸君は好きな子をいじめるのは普通に嫌われるから気をつけようね
「安心しなさいなエリー。誰がなんと言っても私はあなたの味方よ」
「はい。私もヒスイ様のすべてを愛してます」
うん
なんかかなりオーバーな返答が帰ってきた気がしなくもないけど元気そうでよかった
ただ未だに気まずそうな顔をしている他三人はなんなの?わけがわからん
そしてそんなこんなでとうとう学園に到着してしまった
いっぱい人いるな~うわ~降りたくねぇ~
「ねえメリッサ?このまま帰っていいかしら?」
「それでは行きましょうかお嬢様」
無視された
そしてテキパキと私の荷物を用意して軽く髪も整えてくれる
こやつ長年一緒にいるからか私の扱いになれてきてやがるぜ…頼もしい限りですハイ
「私に一番必要なのって絶対メリッサよね…いつもありがとう」
ピシっとまるで石にでもなったかのようにメリッサが固まった
「どうしたの?あ…もしかして嫌だった?」
「いえ!そういうわけではないのですが…こういうところでは言わないでもらえると…」
メリッサは汗を流しながら後ろをちらっと確認するがそこには笑顔でこちらを見ているエリーがいるだけである
…?エリーに聞かれたくないってこと?なんで?
まぁいいや…覚悟を決めていざ降り立ちましょう学園へ
今日が初めの第一歩…この一歩が破滅へとつながらないことを願って…
とりあえず案内通りに進んでいたのだがどうやらこれから新入生全員で講堂に行くらしい
いかんせん人が多いので流れに沿って歩くしかないのだがおそらくこっちが講堂なのだろう
それはそれとして視線が痛い
やっぱり周りからめちゃくちゃ見られている
まぁ当然ながらこの学園で黒髪なのは私だけだ
となれば私が誰なのかみんなわかるのだろう
私を見てはみんなひそひそひそひそと…めんどくさいったらありゃしない
「大丈夫ですか?ヒスイ様」
「ええ大丈夫よ。ありがと」
「それにしてもうざいよな~言いたいことあるなら直接言えっての」
「それができない小心者たちばかりですからこうして陰口を叩くしかできないんですよ。可哀そうな人たちです」
「うんうん、私もこういうの大嫌い!」
講堂へは新入生だけで行くので使用人組とは離れて私とエリー、ギアメナタマリの五人行動だ
お兄様も学園の仕事ですぐどこかに行ってしまった
まぁしかし周りはひそひそとうるさいが皆がいてくれるから少しは気が楽だ
ありがとうみんな
そして講堂につくと特に席は決まっていないらしいので適当な場所に座る
エリー達以外は見事に私から離れて座りよる
なんか地味に傷つくな…
まぁいいや。仲良し五人組でわいわいしようね…
やがて講堂が少しだけ暗くなった
お、はじまるのかな
壇上に白くて長いお髭が素敵なおじいさんが現れた
どうやらあのおじいさんが学園長らしい
そしてお決まりの長々としたご高説…寝ていいかしら?いや寝ないけども
おや?壇上にもう一人上がってきたぞ?あれは…あ、第二王子だ
「諸君!僕が今しがた紹介にあずかった新入生代表のキースロイスだ!」
きゃ~!と周りから黄色い歓声が飛んでいた
マジか
人気あるのかあの第二王子
まぁ顔はいいからな…私は正直あんまり好きじゃないんだけどな…会うたびに罵倒されるし~
あぁ~でもエリーやタマリはもしかしたら惚れちゃったりするのかしら?
…物語的に考えるとエリーはその可能性が非常に高い
今は仲が良くてもあの第二王子にエリーが惚れちゃって私が邪魔になったりする…みたいな事もおこりそうじゃない?
タマリだって第二王子について私のことを悪しざまに罵ってくるようになるかもしれない
それはとっても悲しいことだ
私は自分でも気づかないうちに一筋だけ涙を流してしまっていた
慌てて涙を拭う
いいや考えすぎよね。エリーもタマリも大切なお友達だもの…きっと大丈夫よね
私はこの件をもう考えないようにした
とにかく今日を頑張ろう。明日のことは明日考えればいい
今日には今日の、明日には明日の風が吹くってね
~~~~~~~~~
エリナリナは自らの魔力を抑えることに全力を尽くしていた
でないと今すぐにでも暴発してしまいそうだったからだ
キースロイスが壇上に現れたときから不快だった。彼が今までに何度もヒスイに害をなそうとしていることはもちろん知っている
だが今は「まだ」手を出せない
確実に彼に罪を償わせる。そのためにはタイミングが必要なのだ
だから我慢していた…なのにエリナリナは見てしまった
ヒスイがキースロイスを見た後に涙を流したのを
その瞬間、抑えていたはずの魔力が暴発して…すぐに消え去った
(だめだよ~そんなところで~爆発させちゃったら~ヒスイたちも大変なことに~なっちゃうよ~)
頭の中にこの五年でもはや一心同体と言ってもいいくらいの存在となった友達の声が響いた
どうやら彼女が助けてくれたらしい
(ありがとうリア)
(どういたし~ま~し~て~)
魔力が収まったエリナリナはヒスイを横目で見た
彼女はもう涙を流してはいなかった。まっすぐと前を見据えていた
(強いなぁ…やっぱりヒスイ様は素敵だ…でもだからこそ)
そんな彼女から笑顔を奪おうとする人が許せない
自分の隣からも魔力を感じた
そちらを見るとタマリが座っているその場所がわずかに白い結晶に覆われていた
彼女も怒っているのだ
よく見るとギアもメナもそれぞれ拳を血が滲みそうなほど握りしめていた
ヒスイに気づかれないようにタマリの腕を少しだけ叩く
はっとしたようにタマリが結晶を収めた
ここにいるみんなはヒスイの事が大好きなのだ。だから許せない
でもその感情を向けるのは今じゃない
だから今は少しでもヒスイが悲しむことのないように全力を尽くす。それだけだ
その時壇上のキースロイスがエリナリナのことを見つけ微笑んできた
そして隣にヒスイの姿を見つけると憎々し気に睨んだ
エリナリナは全ての感情を殺した
手を出そうというならやってみればいい
絶対にあなたなんかにこの人をよごさせはしない
全てはただ愛する人のために




