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三年間それぞれの視点…サーシャ視点 ~魔力の使い道~

~サーシャ視点~

私はずっと暗い暗い闇の中にいた

何処を見ても黒、黒、黒

歩いても走ってもどこにもたどり着けない無限のの闇

そしてどんどん私の身体が何かに覆いつくされていくような恐怖


きっと私はここで死ぬのだろう

姉さんは大丈夫かな

表情なんてほとんど変わらないくせに愛情深くて実は繊細な人なのに

私がいなくても平気かな

それだけが心残りだった


私が死ぬその瞬間まで続くと思われた闇がある時急に晴れた

いや何かに吸い取られていくようなそんな感じ

そして私を呼ぶ声

やがて光が爆発したかのように広がって


重い瞼を開ける。どれくらい眠っていたのかわからないけれど久しぶりに開いた瞳に外の光は強すぎるようで眩しくてよく見えない

でも誰かに抱きしめられているということはわかった

あぁこの匂い…間違いない

私のたった一人の家族


「ね…ぇ……さ…ん」

「サーシャ…!!よかった…よかったほんとに…!」

大切な人の安堵する声を聞いて私の意識は再び落ちていく

あたたかなぬくもりにつつまれて



次に目を覚ました時、私はなにやら豪華な部屋にいた

そこには姉さんもいて私が倒れてからのあれやこれを説明された


「…そっか20年もたったんだ」

「えぇもうだめかと思ったけど…本当に目覚めてくれてよかった…」


「ごめんね私のせいで…」

姉さんの話をきいて私は絶句した

私だけじゃなくて姉さんも心が死んでしまう寸前だったんじゃないかと思った


「ううん、いいの…ヒスイお嬢様が何もかも救ってくださったから」


ヒスイお嬢様

話に聞いた私が今いるお屋敷のお嬢様

私を救ってくれた立役者らしい

姉さんの話を聞いてるとなんだか大層すごい聖人みたいな人かのように聞こえるのだけど…

まだ10歳の女の子でしょう?

それに私には心配なことがあった


「ねぇ姉さん?大丈夫なのそのヒスイって子…」

「大丈夫って何が?」


「その子、私の魔力を持っちゃってるんでしょう?その…恩人にこんなことは言いたくないけれど…悪用しないか心配だわ」


10歳という多感な時期の子供が

今まで持ってなかったという魔力を、それも使い切れないほどの莫大な魔女の魔力を手に入れたのだ

道をふみ外さないとも限らない

私の魔力をそんなことに使われるのは不本意だ

それを伝えると姉さんはクスッと笑って


「お嬢様なら大丈夫よ」


そういった

この20年で姉さんもそうとう変わってしまったらしい

あんなに人を信じない人だったのに

もちろんこの私もそうだ他人を信じてもいいことなんてない

この世で信じられるのは自分と姉さんだけ

それが私たちが掴んだ真実のはず

なのに姉さんときたらそのお嬢様を心から信頼してるみたい

どうして?何が姉さんをそうさせるの?私にはわからなかった


そして


「メリッサ!サーシャ起きたんですって?」

件の少女が現れた


「お嬢様、はいおかげさまで妹もこの通り目を覚ましました」


表情こそ変わらないが姉さんの雰囲気からこの少女に対する信頼感が伝わってきた

気に入らない

でもお礼は言っておかないと

どうであれこのお嬢様は私の命の恩人なのだから


「初めまして、こんな格好で申し訳ありません。姉がお世話になってますサーシャ・カナンと申します」

「ご丁寧にどうも!ヒスイ・スズノカワよ!メリッサにはいろいろ助けられたの!よろしくね」


子供らしく元気で好感のもてる挨拶だった


「それにしてもやっぱりすごいわねあなたも…もう肌つやが戻ってる!あんなにがりがりだったのも戻ってるし…すごいわ」


お嬢様が私の身体をみてそう言った

私は回復魔法が得意だったので起きてすぐ自分の身体を健康時にまで回復させたのだ

これくらいは朝飯前である


「これだけが取り柄のようなものですので…遅くなりましたがこの度はこの命をお救いいただきありがとうございます。いつかこのご恩を返せるようにしたいと思っています」

「あー!あー!いいのいいの!私はほとんど何もしてないし!お礼はメリッサとエリーって子に言ってあげて!」


お嬢様はにかっと笑った

…たしかに毒気を抜かれるようなところがある子かもしれない

信用する気もないけど

とっとと義理だけははたして姉さんとまた二人でどこかで静かに暮らそう


「いえそういうわけにはいきません…なにか私にできることはありませんか?」

「お嬢様、私からもお願いします。どうかこの気持ちを受け取っていただけませんか?」


するとお嬢様はもじもじとしだすと思い切ったように口を開いた


「あ、あのね…?実は二人にちょっと頼みたいことあって…そういうことならちょっと聞いて欲しいなぁなんて思っちゃったりして」

えへへとはにかむその姿は…ちょっとかわいいかもしれない


「えっと…ほら私サーシャから魔力もらったじゃない?せっかくだから使ってみたいの!魔法!」


あぁやっぱり来た

なんせ魔女の魔力だ

強大な力を手にして使わずにはいられないのだろう

私はどうにか言いくるめようと考えを巡らせた

相手は子供だこの場を治めて対策は後で考えよう

そう結論づけたとき


「はい、いいですよ。お嬢様は今どんな魔法でも思うままに使えますから何でもできますよ。どんな魔法を使いたいんですか?」


ちょっと姉さん!?

どうして背中を押しちゃうの!?

これで街を消し飛ばす魔法とか言われたらどうする気なのか

ちなみにもちろんそんな魔法も使える

なにせ私の魔力でですからね!


「これ!これをやってみたいの!!!」

かくしてお嬢様が取り出したのは


…魔法で明かりをつける一般的に普及しているライトだった

え?それ…?


「あぁこれはですね…こうここに魔力を流して…」

「ふむふむ~…こう?………あ!光った!すごいすごい!みて!光ったわ!私魔法が使えたのよ!すごいわ!」


お嬢様は姉さんに習って明かりをつけたライトをもって嬉しそうにくるくると回っていた

いやそれは正確には魔法ではないのよ?

魔法が組み込まれた機器に魔力を流して動かしているだけだ

私の魔力を悪用されるのも嫌だけどこんな事に使われるのもなんだか微妙だ…


「ねぇねぇ!もしかしてこれも!これも!使えるのかなぁ」


そしてまぁ大量に取り出したるは様々な一般普及の魔力で動く機器たち

そりゃあ動きますよ

お嬢様はそれはそれは楽しそうに様々な機器を動かしていた


「なんであれだけのことであんなに喜べるんだか…」


あ、口に出しちゃった

まずいと思った時には遅く姉さんがそっと私の隣にきて頭を小突かれた


「いたっ、なにするのよ~」

「…お嬢様はね魔力がないって言ったでしょう?私たちにとっては当たり前でもお嬢様にとっては全てが新しいことなの」


そうか

そうかもしれない

私は人を疑うばかりにそんな事すらわからなくなっていたのか

はぁ…これは失敗かな

そう思っていた時、お嬢様が口を開いた


「ねえ!次はあれ!攻撃魔法使ってみたい!」


あ~あ…やっぱりね

ほらこうなった

続く

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