表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/54

三年間それぞれの視点…と見せかけたエリー暗躍回

~ギア、メナ、タマリ視点~

スズノカワ家にある鍛錬場にてひたすらに木刀を振るう少年の姿があった

「ふっ…99…ふっ!100!ふぃ~おわった~!!!」


その少年、ギアは日課である100回の素振りを終え満足そうに汗を流していた

そんなギアにタオルを持って近づくのは利発そうな少年メナだった


「ギア、おつかれ…はいこれ」

「おう!サンキューな!いや~しかし今日は調子もいいしもう1セットやっとくか!」


「ダメですよ。僕たちは今成長期ですからね無理な鍛錬はむしろ逆効果です」

「ちぇ、でも少しくらい…わかった!わかったからそんなに睨むなって!ディースのアニキにも止められてるしちゃんと休むから!」

「ならば良いのです。あとアニキではなく若とお呼びしなさい」


ディースとはこのスズノカワ家の時期当主であり彼らの憧れの人である

強く賢く優しいそんなヒーローのような存在なのだ


「アニキがそう呼んでいいって言ったからいいんだよ~メナはほんと細かいなぁ」

「あなたが大雑把なんですよ」

そんな言い合いを続ける二人のもとにさらにもう一人

メイド服を着た小さな少女、タマリが駆け寄る


「二人とも~これ三人で食べてってお菓子貰ったよ~」

「おいおいタマリ!あんま走るとまた転ぶぞ!お前どんくさいんだから」


「ふふ~ん、もう転ばないもんね~メリッサさんに転びにくい方法とかいろいろ教えてもらってるんだから!」

「だからって油断は行けませんよ。いついかなる時も最新の注意をはらって行動するべきです」

「んなことしてたら疲れるわ!んでお菓子だっけ?そんな気分じゃないんだけどな…誰から?」


タマリは顔に満開の笑顔を浮かべた

「えっとね、お嬢から!」


その瞬間ギアとメナは途端にそわそわしだしたのだった

「ふ、ふ~ん?お嬢からの差し入れか~そういえばなんか腹が減ってたんだったな~いやお嬢の差し入れだからとかじゃなくて普通に小腹がな~」

「大丈夫ですよギア?お嬢からの差し入れは僕がありがたくいただきますので無理しなくても大丈夫ですよええ。私も気分ではないのですがもったいないですからね」


ギアとメナはお菓子を挟みバチバチと火花を散らせていた


「もう!二人ともケンカしないで!お菓子は全部私がもらうからねっ!」

タマリが二人からお菓子を取り上げた


「「あぁ!お嬢のお菓子が!!!」」

お菓子はその後結局三人で仲良く分けた


「お嬢」

それは三人にとってとても大切な人だった

自分たちと同い年の少女ヒスイ・スズノカワ

しかし三人にとってはそれだけではない

自分たちに住む場所や暖かいご飯…居場所をくれた人である

それだけでなく今この領地で行われているさまざまな事業や自分たちと同じ住む場所のない人達への支援などもすべて彼女の発案だというのだ

素直にすごいと思った

そして恩人である彼女のために何かしたいと思った

そこに自分たちと同じ孤児院にいたエリナリナからこう提案されたのだ


「ねえ皆…私たちでヒスイ様を守ろうよ!ヒスイ様はねすごい人なの!気高くて美しくてもうとにかくすごいの!…でもねヒスイ様は脆いの…生まれつき魔力がないんだって…だからねそんなこと関係ないってくらい私たちが強くなろう!みんなでヒスイ様を怖いことからお守りするの!」


三人はその言葉にその通りだそれがいいと同意した

ギアは武力を付けるために修行を

メナは知力を身に着けるために勉強を

タマリは身の回りのお世話のためにメイドとしての技術を


それぞれのやり方で大切なお嬢を守るために

同年代の自分たちだからこそできることがあるはずだと日々を過ごしていく


「待っててくれお嬢!俺が絶対お嬢を危険なことから守ってやるからな!」

「いいえお嬢を真の意味で支えるのはこの僕です。暴漢より政敵のほうが厄介ですよ」

「お嬢の一番近くにいるのはメイドのこの私だもんっ」


喧嘩しながらも仲良しな三人組

彼らの活躍は…もう少し先なのかもしれない



~メリッサ視点~

その日は私が長い間夢見た日でもあった

スズノカワ家でのいろいろなことが片付いて落ち着いた時、お嬢様からそのことを告げられた


「さぁ行きましょうか。あなたの妹を助けに」


お嬢様は妹を蝕む病の正体とその治療法を教えてくれた

聞いてみれば簡単な話だ

魔力が悪さをしていて

龍の力でそれを取り除く

それだけの話

でもそれはやっぱり言葉にするほど簡単なことではない

まず龍なんてそう簡単に見つからない

それに龍は契約した人間のいう事しか聞かない

希少な龍と協力してくれる人間…その両方が必要なのだ

産まれてすぐに未来を見たというお嬢様はなぜ私に良くしてくれたのだろうか

私に利用価値があったことはわかる

お嬢様曰く私は「チート」なのだそう

よく意味はわからないが…


そして当日

私たち三人と一匹(?)は私の魔法で王宮の一室

妹が眠る部屋に忍び込んだ

お嬢様は魔法を使った私に不満げな何とも言えないような顔をしていたが気にしないことにした

そしていざ治療が始まると問題が発生した

今ある魔力をどうにかしないといけないそうだ

本来ならこれはすぐに済む

余分な魔力を魔法を使い消費すればいいのだから

しかしこの場合ではそうはならない

妹はもう意識がなかった。長年眠り続けているのだから

そして龍から提案された方法は妹の余分な魔力をお嬢様が引き受けるという方法だった

そんな危ないことできるはずがない

でもそうしないと妹が助からない。大切なたった一人の妹とお嬢様

私が切り捨てるべき人は決まっていた

私はここまで私に良くしてくれた恩人であるお嬢様を裏切るだろう

そうしないと妹が助からないのであれば無理やりにでもする

そんな最低で最悪な人でなしのまさに魔女とののしられても文句は言えないそんな決意をしたところで

お嬢様は口を開いた


「ええ大丈夫よ。やって頂戴」


私は耳を疑った

この人はわかっているのだろうか

今やろうとしていることがどれだけ大変なことなのか

うまくいく保証はない…後遺症が残るかもしれないしそれこそ死ぬかもしれないのだ

それなのにあなたは…


「だってここまで私に良くしてくれたメリッサのためだもの!それに最初に約束したでしょう?」

そう言ってお嬢様は微笑んだ

それは汚い私が見るにはまぶしくてきれいすぎる微笑みだった

結果的にだがすべてはうまくいった

お嬢様は無事だったし妹も目を覚ました

私は数十年ぶりとなる妹の声を聞いた時、声を上げて泣いた


妹は一応絶対安静ということでこっそりとスズノカワ家に運び込んだ

いつまでもここに置いていくわけにはいかなかったからだ

そうして落ち着いた後で私を襲ったのはとてつもない罪悪感だった

私は私を…妹を助けてくれたお嬢様を相手に何をしようとしていた…?

なんて汚れているのだろ私は

まるで全身に落ちないヘドロがまとわりついているようなそんな重さ

私はあんなに綺麗で優しい存在を

この見るもおぞましいヘドロで汚そうとしたのだ

許されていいことじゃない

そして危ないと思った


お嬢様にはお嬢様の目的がある。私のために行動してくれたわけじゃない

でもそれでも彼女の優しさは無償だ

妹を助ける対価として私は何も要求されていいない

正確に言えば以前に龍と巫女を探すために外に連れ出したがそれくらいである

あれは今思えば妹を救うために必要な過程だ

要求になっていない

そう伝えたところ


「ん~?じゃあこのお茶もう一杯ちょうだい!これすっごくおいしいわ!」

と言われてしまった

きっと彼女は何も考えていないのだろう

そして何も知らないのだ

この世には驚くほど悪いやつがいて平気で人を騙し陥れ使いつぶす

そんな人とも思えない連中が存在するのだ

そしてそれを知らないからこそ

彼女はどこまでも他人に優しくできてしまうのだ

それは危ういことである

このままではきっと彼女はいつかひどい目にあってしまうだろう

昔は嫌いだったお嬢様

でも今はもう

私が見てきたような世界を見て欲しくない…優しい世界で笑っていて欲しいとそう思うようになった

だから


「そう、だから私たちがあの人を守ってさしあげる必要があるんです」


そこにいたのは龍の巫女となった少女、エリナリナだった


「エリナリナ様…なぜこんなところに」

「メリッサさん。私知ってますよ?あなたあの瞬間にヒスイ様に無理やり魔力を移そうとしてましたよね?」


「!なんで…っ!?」

気が付くとすぐ目の前

目と鼻の先に彼女の顔があった

吐息すら把握でできるその距離で感情の見えない瞳でこちらを覗き込んでくる彼女から感じているもの…これは恐怖…?この私が…お嬢様と同じ年齢の少女に恐怖を感じているというの…?


「私、許せないんです…あの人を汚そうとするものが。だってそうでしょう?あんなに綺麗で美しいのに世の中にはそれを汚そうとするものがあまりにも多すぎます」


淡々と言葉を紡ぐ彼女に私は完全に気圧されて言葉を発することもできなくなっていた


「だから私は強くなろうと思ったんです…我ながら頑張りましたよ。どうですかあなたとここで戦っても結構いいところまで行けるんじゃないかと思っているんですけど…?」


いいところですって?とんでもない

彼女に勝てるイメージがわかない

これが龍の力だというの…?いやそれだけじゃない他に何かがある


「あぁ、気になりますか?私みたいな子供になんでこんな力があるのか。簡単なことですよ龍の巫女になるとぶわっと頭の中に龍の知識が入ってくるんですよ…その中にはいろいろありましてね~龍の力の使い方や魔力の制御方法なんかも…あとはそれを元に必死に努力すればいいだけです」


ここでようやく彼女がクスッと笑った

簡単に言うけどそんな単純な話なわけがない

いったいどんな無茶なことをすればここまでの力を身に着けることができるのか想像もできなかった


「でもダメなんです。こんなんじゃ全然足りないもっと力がいるんです…今回の件でそう改めて痛感しましたよ…だって私は何もできなかった…みすみすヒスイ様を危険な目に合わせてしまった…!もう少しで!!取り返しのつかないことに!!!なるかもしれなかった!!!!」


彼女の声に感応して空気が震えていた


「だからもっともっと力がいるんです…そしてあなたも必要なんです」


ガンっと音を立てて彼女が私の後ろの壁に手をついた


「メリッサさん自分のやろうとしたこと後悔してますよね?そしてヒスイ様の尊さも実感できたでしょう…?だったらもうやることはわかりますよね…?私と一緒にあの人を守りましょう傷つかないように壊れてしまわないように…ね…?一人では何もできないことを私はよく知っていますだからあなたのような強い人が必要なんです…私の話わかってもらえますか…?では、きっといい返事がもらえることをしんじてますねっ!」


そうして彼女は現れたときと同じように突然姿を消した

夢だったのかと思ったけど

体の震えが流れた冷や汗があれは現実だと物語っていた

私は服をただすとそのまま王室へと向かった



「メリッサ・カナン。突然来るとは何事だ?定期報告はまだ先のはずだが」


目の前に立つのはこの国の王

私を妹を食い物にした男だった


「国王陛下、今日はあなたに伝えたいことがあって参りました」


無礼だぞ!っと怒鳴り声が聞こえたがあれは宰相だっただろうか

まぁどうでもいいのだけども


「あなたも忙しいでしょうし手短に話させてもらいます。今日この時よりあなたとの契約を破棄させてもらいます」

「ほう…妹のことはもうよいと言うのだな?」


もう妹はここにはいない

あの方に救ってもらったのだから


「どう思おうとかまわないわ。私はあなたにもう仕える気はないそれだけ」

「ふむ…やはり魔女よな。情けなどの情はないと見える」


「あら奇遇ね。私ももう情なんてないと思っていたけど…意外とまだあったみたいなの」

そうだエリナリナに言われなくても私の心は決まっている

私はあの人に仕えたい

そして恩を返したい


「私が仕える相手はあなたじゃないの。だからこれで終わり…じゃあね」

私はそのまま歩いて王宮を出た

追手が来たらひと暴れしてやろうかとも思ったけど向こうもそこまで馬鹿じゃないみたい

ということで帰ろう

私の使えるべき主がいるその場所へ

誰に言われたからでもない私の意志で



エリナリナのくだりで勢いが乗ってしまい長くなってしまいました…

ちなみに黒いものが見え隠れしてるエリナリナですが愛が重いだけのいい子なので今後なにか問題を起こしたり敵になったりはしない予定ですのであしからず…wただまだまだ様子はおかしくなっていきます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ