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シスター視点 突然の取り壊し

私の名前はリリィベル

家名はない

物心つく頃には孤児院で育ったからだ

でも私はそれを不幸だと思ったことなんてない

院長先生は優しかったし私を立派に育ててくれた

だから私も将来は孤児たちを教え導く仕事がしたいと思った

そして教会で勉学に励み私は無事シスターとなった

この国ではシスターでも孤児院で働くことができるからだ


そして私が働くことになった場所は…とてもひどいところだった

そこは王国内にありながら帝国の貴族が納めているといういい噂なんて一度も聞いたことがない領地にある孤児院だった

いやこんな場所孤児院と呼べるはずない

中も外もボロボロでとてもじゃないが住めるはずないと思った

今私のもとには四人の孤児たちがいる

ヤンチャな男の子のギア君

おとなしい男の子のメナ君

内気な女の子のタマリちゃん

そして両親を亡くしたばかりのエリナリナちゃん

私にはこの子たちを守る義務があるの…絶対に皆に自分は不幸だなんて思わせないからね


まず私は現状を王国に報告すると共に資金の提供を申請した

しかし王国側からは「お金は出している」という返事が返ってくるだけ

それなら考えれれることは一つしかない

この領地を治めている帝国貴族の仕業だ

ありえない…いくら王国と仲が悪いからって罪のない子供たちにこんな仕打ちをするなんて…

負けるもんか!絶対に!


しばらくは私の貯蓄で何とかなるかもしれない

でも長くは続かない

ここも衛生的によくないしもう逃げだすしかないのかもしれない

そこで問題が起こった


エリナリナちゃんがいなくなったのだ

あの子は私に心を開いていない

無理もない突然家族がいなくなって連れてこられた先がこんな場所なのだから

それでも私にとっては大切な子の一人だ

探しに行かないとと準備をして外に出たとき

そこには奇妙な生き物を連れたエリナリナちゃんと初めて見る少女がいた


その子は帝国貴族の娘だった

私の中で何かがきれてしまって幼い女の子が相手だったのに酷いことを言ってしまった

子供に罪はないのに

これじゃあ帝国貴族と一緒じゃないかと自己嫌悪におちいった


その日からエリナリナちゃんの様子がおかしくなった

まずよく笑うようになった

何が楽しいのかいつも笑ってる

どうしたの?と聞くと


「迎えに来てくれる時が楽しみなんです!」

と怖いやら夢見がちなのやらよくわからない答えが返ってくる

そしてエリナリナちゃんがつれている謎の生き物

初めて見る生き物である

まぁおとなしいしエリナリナちゃんがしっかりと面倒を見ているのでみんなの気を紛らわせるのにはいいのかもしれない


そしておかしなことが一つ

たまにエリナリナちゃんがいなくなるのだ

でもそんなにしないうちにいつの間にか帰ってきている

何処に行ってたの?と聞いても「リアとかくれんぼしてたんです」という答え

あまり遠くに行っちゃだめよと注意しておくことは忘れない


しかしエリナリナちゃんがいなくなった後はなぜかすぐ近くで新鮮な獣の死体が見つかる

私は一応解体の心得もあるので食料問題が軽くなって助かるのだがなんで都合よく死体が…?

まさか…

私はエリナリナちゃんを見て…

いやいやそんなはずない

私は頭に浮かんだバカな考えを振り払った


そして数週間後

それは突然起こった

突然馬車がいっぱい来たと思ったら中から複数の男たちが姿を見せた

そしてその中央にはあの帝国貴族の女の子


「ここ取り壊すことになったから!」


その少女はそう言った

取り壊す…取り壊すですって!?


「なんなんですかいきなり!」

「えぇいきなりで悪いけど取り壊すのここ!」


「そんな!一体何の権限があって…」

「私ここの領主の娘です!」


小さな胸を張るその姿はおおよそ真面目だとは思えなかった

なんで?どうして…あなたと同い年くらいの子がいるのにそこを遊びで壊そうっていうの…?


「ここは子供たちの居場所なんです!それを何とも思わないのですか!」

「居場所って…ここすごくボロいよ?取り壊さないとあぶないよ?」


「そういう事を言ってるんじゃ…!!」

「ヒスイ様~!」

「きゅっきゅ!」

私の横をすり抜けてエリナリナちゃんがその少女のもとに駆け寄って抱き着いた


「ようやく迎えに来てくれたんですね!」

「えぇエリー待たせて悪かったわね」


「いいえ!私はヒスイ様が来てくれただけで満足です!あぁ…ヒスイ様のにおいだぁ…」

「あははっエリー、ちょっとくすぐったいわ!」


仲睦まじい二人の様子を私は茫然と見つめることしかできなかった


「さてそれじゃあ行きましょうか」

「はいっ!ヒスイ様!」

ヒスイと呼ばれた少女がエリナリナちゃんの手を引き馬車に乗ろうとする


「ちょっとまっ…!エリナリナちゃんをどこに連れていく気!?」

「え?何を言ってるの?あなたたちみんな一緒にうちの屋敷に行くのよ」


何を言ってるんだといわんばかりのその表情に

いやあんたが何を言ってるんだという思いである


「あれ?なにその表情…ここ取り壊すんだから新しく住むところがいるでしょう…?」

「お嬢、そこらへんちゃんと説明しておかないとさすがにわからんでしょう」


男の一人が少女に何やら耳打ちをする


「あれ…?私、先に説明してなかった…?」

「してなかったかと…」


ばっ!とこちらに向き直ると少女は頭を下げた


「ご、ごめんなさい!気がはやっちゃって…!あのねうちの使ってないところね新しく孤児院として作り替えたから危ないしここは取り壊してそっちに移ってもらおうって話だったんです…」

「はぇ…?」


そこからは早かった

あっという間に城…ではなくお屋敷まで連れていかれ

新しい孤児院として豪華な…これはもはや家を提供された

そして他にもいた孤児たちや職に就いていなかった領民たちも集められており住処などを提供する代わりに屋敷のお手伝いをするといった方針になったことを告げられた

私も子供たちの面倒をみる傍らでヒスイお嬢様含む子供たちや学問を習わなかった人たち相手に勉強を教えたりする教師のような役割を与えられた

そして衣食住すべてが保証されたのだ

今までの仕打ちは一体何だったのかという待遇である

一応ことのあらましは説明されたものの王国が私たちに酷いことをしていたなんて信じたくない話だった

しかしここまでの誠意ある対応をされてはスズノカワ家をお嬢様を憎く思う事なんてできるわけなく

子供たちもあっという間にヒスイお嬢様に懐いてしまって「おじょう!おじょう!」と後をついて回っている始末である

はぁ…これから私はどうすれば…


「おう、おつかれさんリリちゃん」

「あっカツラギさん…」


「おーおー相変わらずかわいいのぉ~どや?デートの件考えてくれたか?」

「からかわないでください…私は忙しいので失礼しますよ」


「からかってるんと違うんやけど…」


最近よくカツラギさんに話しかけられるんだけどあの人顔が怖くて少し苦手なんだよね…

いい人なのはわかるんだけど…

私は速足でその場を立ち去った


「アカン…脈無しや…なんとかせな…」


何か聞こえた気がするけど多分気のせいだと思った


なんか事あるごとに別視点を挟んでますけどヒスイちゃんは内面がかなりふざけてるのため真面目な話にできないので少しシリアスを加えたい場合はこうして他の人に頑張ってもらうしかないという理由です。すみなせん…

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