一度きりの最終奥義
孤児院の話をしたところお父様からは知らないとの答えが返ってきたわけですが…
そんなことある?お母様やお兄様、カツラギも知らないという
「このあたりにあるのですが…?え?ここうちの領地ですよね?」
地図を引っ張り出してだいたいの場所を指さすのだがやっぱり皆首をひねるばかりである
「ふむ…このあたりだと大きな花畑がある場所だな?視察もおこなってるはずだが孤児院なんかやはりあった覚えは…」
「いやオヤジ、このへんは確かなんか建物ありまへんでした?今にも崩れそうなやつ」
それだ!!それが孤児院でしょうよ!
「そう!それです!あそこが孤児院なんです!」
「いや待て。確かに思い返せば建物があったはずだがあそこに人は住んでないはずだ。ましてや孤児院などあるわけは…」
「でも実際はあるんです!この目で見ましたし中の人ともお話ししました!」
うちの領地のことなのに把握してないなんてどういうこと!?おかしいじゃない!
「あ~オヤジ…これあれちゃいますか?王国の」
「そういうことか…まったくこれだからこの国の王は好きになれんのだ」
なんかお父様とカツラギがうなずきあってる…私にもわかるように説明してほしい
「お父様?」
「あなた?いったいどういう事ですの?孤児院がどうのこうのなんて私でも気になりますわ」
そうだそうだ!とお母様と一緒に抗議する
私とお母様は大の仲良し!
「まぁつまり簡単に言うとだな…」
その後のお父様の説明はちっとも簡単じゃなかった
私の頭脳をもってしても難しすぎた
しかしその時、頭がぴよぴよしている私に救いの手を差し出したのはまさかのお兄様だった
「なるほど~つまりは王国側に騙されているということですね?こちらの視察時には何もなかったはずなのにそのあとであそこを勝手に孤児院として登録、そこに実際孤児を送り施設としてのていをなしつつ費用等は着服していると」
「そうですそうです。さすがは若!理解がはやいでんな~」
マジか
お兄様って頭よかったの!?脳筋だとばかり思ってたのに…
今年12歳のおこちゃまとは思えないわね…まぁ私は7歳だけども
「そして付け加えるならうちの領地なのだから金を着服しているのは俺たちだと思われてしまうわけだ…何としてもうちの評判を落としたいという意図もあるのだろうな全く…」
「そんな!何とかならないのですか?あなた…それでは孤児院の子たちがあまりにかわいそうではないですか…」
「そうです!お父様!なんとかしてあげて欲しいのです!」
と、いうか何とかしないと私は破滅するかもよ!いいのか父よ!娘に待ってるのはこのままだと死ぞ!!?
「うむ…しかしこうなるといろいろ難しいな…国王を問い詰めてもしらばくれるのがオチだろうしな…」
「相変わらず舐めたマネしくさりよりますなぁ…ウチの若いもん送り込みますかぁ?」
「馬鹿か、そんな真似しても何もならんだろう…なんとかしてやれんこともないと無いと思うがしかし…」
カツラギは物騒なこと言い出すしお父様はいまいち煮え切らないみたい
やっぱり大人の世界ではいろいろあるのかな…難しいことはわからないけどでもやっぱりなんとかしないとダメだよね
私は破滅したくない
それにエリーにも…ううん皆にも幸せになってほしい
だからやるしかない
やるなら一直線、即行動!
見せてやる…いや魅せてやるぞこんな時のためにとっておいたとっておきの奴
一度きりしか使えない
チートを何ももらえなかった私の最終奥義!!!
私は瞳に精いっぱいの涙をためてお父様にしがみついた
そして
「【一生のお願い】ですお父様…!私、いい子にしますからぁどうか皆を助けてあげてくださいませ!領地で誰かが悲しい思いをしてるなんて私耐えられませんわぁ!!!もう今度のお誕生日も何もいりませんしお小遣いもしばらくいらないですからどうかぁ!ふぇぇ~」
どうよこの究極奥義【一生のお願い】+嘘泣き
家族の情につけ込むまさに神の一撃
そして結局は他力本願という厚顔無恥っぷり
代償は誕生日とお小遣い
さぁその効果はいかに!!!!!?
「うぅ…!ヒスイちゃん…こんなに優しい子に育って…お母様は幸せですよ……あなた!ヒスイちゃんがこう言ってるのだからなんとかしてあげましょう!」
おおう?なぜかお母様に効いている
「ヒスイ…!なんて健気なんだ…!!父上!ここは我がスズノカワ家の長として男を見せるときなのではないのですか!?」
お兄様にも効いた
すごいわ私
そして肝心のお父様はというと
「そうだな…父が愚かだった…ヒスイよ…娘を泣かせるなどあってはならぬことだな…よかろう!このヤナギ・スズノカワの名にかけて!娘のため我が領民のためにここに領地改革を宣言するっ!!」
しちゃったよ宣言
さすがは【一生のお願い】だ効き目が違う
「ありがとう!お父様!だーいすきっ!」
「あぁ!私もだぞ我が天使よ!はっはっはっは!」
うむ!一家団欒しててよきよき!
「アカン…あほばっかや…いやお嬢が見事といいますか。将来はどえらい悪女になるかもですなぁこれは」
不穏なことを口走ったカツラギは後でお菓子を買いにパシらせようと思いましたとさ。