第五十四話 ■■■■と「!?」【!?】
ギャグ話②「!?」【!?】です。
部屋に残された天音は、鳳月に用件はなんでしょうかと催促する。
「柊巡査、彼は知らず知らずのうちに自分自身に鍵をかける習性がある」
天音はこれまでの天鐘の生活態度であるていど通の性格を把握していたので、鳳月の言いたいことは見当がつく。
【なるほど……離れられない霊体の身を利用して、通君の心を私が解きほぐしてあげれば良いんですね?】
「う――む、そうなんだが――――これは話してもいいのか? いや、しかしだな――」
一人押し問答している、歯切れが悪い鳳月を不思議がる天音。
「まあ信じるか信じないかは本人次第か」
どうやら己のなかで結論に行き着き、突拍子のないことを天音に教えた。
「柊巡査は赤い糸を信じるか?」
【赤い糸……ですか?】
なんのこっちゃ? 首を傾げ、目を上に向けて思考を巡らせていると鳳月が左手の小指を立てクイクイ揺らす。
鳳月の笑みを浮かべたヒントで赤い糸に思い至り、霊体の身をだが危険を感じて背後に飛び、鳳月から距離を取った。
英雄色を好むと言葉があるように日本を代表する経営者も例外ではない。フィアンセがいるのに私にも手を出すなんて! と天音は目を細めて軽蔑の眼差しを鳳月に送る。
天音の想定外の行動に「!?」と面食らい、慌てて訂正に入る。
「ま、まってくれ! 私には心に決めた女性がいる! そこは誤解しないでほしい! 柊巡査の赤い糸の相手は私ではなく天鐘君だ」
鳳月の言葉に今度は天音が【!?】となり、慌てふためいた。
【な、な、な、何を根拠に言っているのですか!?】
「柊巡査が驚くのも無理はない。私も半信半疑だ。さきほど天鐘君と魂の契約を結んだ時に習得した【霊体視認】【霊素視認】【霊体言語】の三つの技能が私の■■■と相性が良く、新たな■■■■を覚えた、その名も■■■■ ■■■■という」
【技能名がわかりませんよ!】
お互いに秘密技能持ち以外に伝わらないジレンマで摩擦が生まれ言い争いになるが、そこは大した問題ではなかった。
「今、柊巡査の赤い糸は天鐘君に繋がっている」
【そ、それは何かの間違いでは?】
気持ちが落ち着かない天音。通の傍から離れることができないから尚更パニックだ。
「室内には私と天鐘君と柊巡査しかいなかったのにか? 私が糸と糸の先を直接確認したから確かだ。当然私の小指にも赤い糸が結ばれている。方角はフィアンセがいるから信憑性は高い。それに私は直感者という二つ名を持っている」
天音は正体が露見した現場の、鳳月の冴えわたる直感をその身で体験ずみ。
まさか、まさか、本当に? しどろもどろになる天音。
「柊巡査。さきほど申し上げた通り、信じるか信じないかは本人次第だ」
【(ずるい!)】
天音は霊を信じる性質。本人が霊体になったことで更に深みにハマり、生前より信じるようになってしまっている。そこに逃れられない鳳月の二択攻撃。
信頼度抜群の根拠ある力に、天音は霊能関連を嘘と持っていくことができない。
信じる選択肢しか持ち合わせていない天音の思想が赤い糸の先にある未来に辿り着き、声が漏れ出す。
【え、え! そ、そんな、ちょ、ちょっと待ってください。私たち五歳、年が離れてますよ!】
「ははっ、恋に歳の差は関係ないよ柊巡査。恋は盲目とよく言うだろう?」
【それはそうなんですが、き、急に言われても気持ちの整理がつきません!】
「柊巡査、下で天鐘君が待っているから行ってあげなさい」
【(くぅ~~~~! この人、絶対面白がってます!)】
後退しながら頬を少し膨らませて鳳月をキッと睨みすえた天音。
「柊巡査、通君のこと今後ともよろしく頼む」
【あなたに言われなくてもそのつもりです!】
そのまま二階の壁をすり抜けて去るのが最短距離なのだが、乱れた心を鎮ませようと天音は一人プリプリと怒り散らしながらドアから退出。階段方面を伝って遠回りしながら時間をかけて降りていく。
一階の地面にわざわざ足をつけて歩き、沼前で通とプルが自衛隊の人と楽しそうに駄弁っている。
【(うう、平常心、平常心)】
天音に気づいた通がそろそろ戻りますのでと会話を切り上げ、天音が来るのを何ごともない様子で待っていた。
二人は一言も言葉を交わさずにテレスポットで現地に戻り、クランメンバーが待機して会話している場所に足を運ぶ。
「皆さん、ただいま戻りました」
「おう、通。その、元気出せよ」
「えっ? 急にどうしたの鋼?」
通は平然を装い、場に残されたメンバーの顔色を覗くと全員が心配している様子が手に取るようにわかった。
鳳月に内情を語って泣きっ面だった自分を思い出し、目が真っ赤に腫れ上がり何があったか一目瞭然と仲間が判断したと踏んだ。
鳳月同様クランメンバー全員にも話すべきだと口を開ける前にデイジーが先に口を滑らせる。
「私たち全員、通君が鳳月さんに喋ったこと知っているから大丈夫よ」
【「えっ!?」】
「デイジーの電波技能は警官の俺が震えるくらい恐ろしいな。簡単に人との会話がスマホを通じて傍受可能だ」
それでかと納得して黙っていたことを謝る通。もう一人現場にいた天音の思考は【「まさか! まさか!? えぇ~~!?」】と通の背を盾にして後ろに振り返り、自然と頬に両手を当てていた。
完全にこの恨み晴らさずおくべきか! の、ぶっ○○案件……ゴホゴホ事案であった。
【(これ公開処刑じゃないですか! 鳳月総帥ぃ~~~~幽霊の恨みは恐ろしいんですからね!!)】
怒り心頭でご立腹な天音は器用にも面には出さず、宙を舞いデイジーの背後に回り込む。
【デイジーさん、デイジーさん! 少しいいですか!?】
「天音さん?」
意を決してデイジー耳打ちする天音。
「通君のスマホから内容を聞き取っていたから、二人の会話は流石に聞いてないわよ?」
【そ、そうですか(良かったぁ)】
デイジーの答えに不安定だった情緒を安定化させることに成功する天音。
その一方で男性陣は通の境遇を知り、気合を入れ闘志を燃やしていた。
「天鐘! 土曜までにレベル三ダンジョンに対応できる水準まで強くなるぞ!」
「戦闘職ではありませんが、そんなこと言ってられない事情を知ってしまいましたから、僕も力になれるよう精一杯努力しますよ天鐘君!」
「通、みんなついてる、だから心配すんな」
通は「ありがとう」の言葉しか浮かんでこなかった。他にも感謝します、深謝の意を表します、などあったが一番慣れ親しみがある一礼「ありがとう」を魂を込めて返答した。
気休めの言葉が、クランメンバーから励まされたことにより母の症状を一旦考えるのを止め、思考を新たに切り替える通。
辛くとも時の針は一寸も狂わずに、正確無慈悲に音を鳴らす。足踏みなどしている時間など最初からない。
「皆さんの意気込みを信じて、封印していたある能力を解放します」
♤ ♢ ♡ ♧
一人部屋に取り残された鳳月はテレビ電話をONにして、瞳に映し出された人々の小指にある赤い糸を【秘密技能:運命の糸】で覗き見る。
「なるほど、なるほど。やはり危険な力だ。フィアンセとこの糸が繋がっているのを確認したら封印することにしよう」
椅子を鳴らして腰を上げ、電源を落とした鳳月はスライム二匹を近くにあった黒い網目状のスイカネットにまとめてから紙袋に入れ、自衛隊に問われることなく倉庫内から移動。
乾運転手が運転する乗用車に乗り、ダイバーシティにあるフィアンセ専用の個人病院施設に向かった。
前書きとタイトルが怪しさ爆発してるのもあり、執筆してる最中、頬が緩みっぱなしでした笑




