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スライムサモナー  作者: おひるねずみ
第1部第1章 愛別離苦のアウロラ
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第五十話 トゥエルカ報告説明会②

「それから威力偵察を進めていくうちに大規模な滝を発見したんですが、そこで問題が発生しました」


 通の合図でテレスポット区画が映り、滝口がアップされ、青空の映像が大人たちの瞳に入る。


――――ガタッ!!


 数人のパイプ椅子が浮かび上がり後ろに倒れた。予想できなかった情報にショックを受けたようだ。


「なんてことだ!」

「まさか地上も探索範囲に入るのか!?」


 慌ただしく騒ぎだす中、クランメンバーは冷静さを保っている。この後の映像が、午前中に発生したイベントのメインディッシュだ。


「静粛に。動画はまだ続いている」


 鳳月に注意され、聞き分けがいい子供のように黙り込んで映像を見守る。


「むっ!」


 水遊びから水球の水操作に移行。一連の動作後に水弾を青空に向けて放ち、撮影主が移動しているのか画像が上下にブレる。

 そして通の黒髪が水色になったところで衝撃波が発生して映像が途切れた。

 先を知りたい視聴者たちはブラックアウトしたモニター画面を凝視し、映像が切り替わった途端、前に身を乗り出した。


――――BUBUBUBUBUBU!


 デイジーの音声加工によって滝水が下層に打ちつける爆音が取り払われ、耳障りな羽音が映像から流れ出す。


「なんて数だ…………」


 百匹近い蜂の妖精さんたちが姿を晒し「ちぃーす! ちぃーす!」と複眼を入れた五百個の眼を青々と輝かせ「楽しいお注射の時間だよ――!!」と撮影者にとつる。


――――プッツン! ジリジリジリジリ…………


 これ以上はグロテスクな際どい映像が流出してしまうので、デイジーのGJグッジョブな英断でカットした。


「…………よく五体満足で生きて戻ってこれたものだ…………この私でも現場に滞在していたら、流石に怖気づくだろう…………」

「実戦を想定した戦闘訓練に慣れている我々も躊躇しますね…………遮蔽物が一切ありませんし」


 自衛隊員も目視できるテレスポットまで、即時後退しながら遠隔魔技と銃ブッパ推奨だと鳳月の感想に同意する。


「いやはや、辻巡査の証言は真実だったようだ。ご両人、本当に疑って悪かったね」


 公式の場で再び謝罪を入れる伊藤教授。

「いえ、映像をご覧にならなければ信じられないのも無理はないでしょう」とTPOと職務をわきまえた辻巡査。

「無傷で生還したら誰もが疑うので、伊藤さんが悪いわけではないですよ」と通がありきたりな社交辞令で返答した。


 鳳月の前で仲直りをして、誤解が生んだ不和を払拭し終えたところで話が再開する。


「今回の襲撃で判明しましたが、蜂達はテレスポット区画の天井が存在しない吹き抜け部分から地下洞穴に侵入してきていることが分かりました。同種族のカーティル級(暗殺者)も恐らく外部からやってきたと推測できます」

「根拠はあるのかい?」

「はい。威力偵察をしてわかったことは地下洞穴に生息するモンスターよりも獲得経験値が二倍近く違い、明らかなへだたりがあります。これは外部に生息する地上生物が洞穴内部の生物より強いという証拠です。更にもう一つ決定的に違う部分が『魔魂水晶(ソウルクォーツ)』の大きさです。これも実際に見たほうが早いですね」


 通がデイジーからスマホを返してもらいリリーに連絡。

 一緒に調査する自衛隊にスライムのことがバレるのは時間の問題なので、もういっそのことバラしてしまおうと、こちらに来るよう命令してスライムたちと鳳月たちが初めて面会することになった。


    ♤   ♢   ♡   ♧


「これすべて天鐘君一人が召喚したスライムか……」


 蜂達の戦闘で一匹も消失していない計六十匹のスライムたちが一堂に揃い、通の話で触っても腐食しないと知ると、自衛隊員と伊藤教授が好奇心に負けてスライムに手を伸ばす。


――――ぷるぷる、ぽよぽよ


「あぁ~~武田少佐、これ一匹持ち帰っちゃってもいいですかね?」

「私ではなく天鐘君に聞いてくれ」

「だめだめっ! それ私のリリーちゃんだから!」


 女性自衛隊員である杉下軍曹が抱きしめてるリリーを、お持ち帰りしようとしているのを慌てて阻止に入るデイジー。

 感力が上がったことでクランメンバーは従者スライムを正確に把握できるようになっていた。


「私のリリーちゃん? もしかして一匹譲り受けたんですか!?」

「今日契約したばかり――ね~~リリーちゃん!」

「……!!」


 リリーの意志で杉下軍曹の手を振り払いデイジーに抱かれに行き、疑似腕で背中に手を回して仲の良さをアピールする。フレンドリーな関係をまざまざと見せつけられ、嫉妬魂に火が付いた女性軍曹は天鐘から譲ってもらう決意を固める。隣にいる武田少佐はほどほどにしろよと渋い顔をした。


「弾力と伸縮性が想像以上だ! いい! 実にいい研究対象にぃ――――ハッ!」


 言語を理解する賢いスライムがスススッと後ろに下がる。伊藤教授が距離を詰める分、群れのスライムたちが波打って連鎖するよう離れていく。教授本人が嫌われたと理解するに時間は掛からなかった。まるで対応したスライムが嫌がる猫の姿と重なって見えるのは気のせいだろう。

 今日一番楽しんでいる時間かもしれない、笑顔にあふれたふれあい現場をどこかの広い空間で観察する鳳月が、我慢できずに口を開いた。


「天鐘君、悪いようにはしないから私と取引しよう。スライム二匹を工面してもらえないだろうか? 一匹はフィアンセにプレゼントとして贈りたい」

「構いませんよ。条件厳守が絶対条件ですが」


 モニター越しに映る鳳月の提案を了承した通に、伊藤教授と杉下軍曹が獲物に狙いを定めた目つきに豹変。スライムから離れて召喚者に急接近する。


「「天鐘君!」」


 通の正面に立ち、肩を互いにぶつけて「私が先だ!」「私ですよぉ!」と醜い争いに発展した。


「二人とも落ち着いてください。鳳月さんと同じ条件を提示しますので守ってくれるならお譲りしますよ」


 それなら争う必要はないと二人とも荒い呼吸を整えて冷静さを取り戻す。

 とりあえずスライムは横に置いて先に『魔魂水晶(ソウルクォーツ)』の素材報告を終わらせるよう通が議題を進行させる。


「プル、蜂型がドロップする魔魂水晶(ソウルクォーツ)と、それ以外の魔魂水晶(ソウルクォーツ)を一つずつ出してくれる?」

「……!!」


 プルから受け取ったビー玉サイズの極小魔魂水晶(ソウルクォーツ)とごつごつした卓球のボールサイズの魔魂水晶(ソウルクォーツ)の説明に入り、大きさに明確な違いがあると認めさせて、最後にモンスター以外の素材関連情報を【秘密技能:完全鑑定】を使い全員に名称込みで伝えた。



『コバルト岩塩』Eランク

 良質な岩塩とコバルトが混ざった岩。コバルトと岩塩をスライムの体内で分離可能。


『サンタン』Eランク

 本来ならばトゥエルカに自生することはないライトラル原産の夜照植物。種を火種代わりとして使用可能でよく燃えて火力も高い。


『カニヅメキノコ』Eランク

 カニの爪の形をした茶色いキノコ。食用可能、爪部分だけ少し硬い。椎茸に似た味がする。


『銀箔鉱石』Dランク

 銀色に鈍く輝くが鉱石とは名ばかりの軟弱物質。純度99パーセントの自然銀と魔素の塊で、酸化鉄がゼロに近い状態で構成されている。圧を加えることで内包する魔素の力が暴走し内部崩壊するので、取り扱いには注意が必要。加工するには魔素を暴走させない、抑え込む技能がいる。

 通常銀のHBW換算(ブリネル硬さ)は約25だが、銀箔鉱石は加工すれば250以上の数値を叩きだし、魔素をさらに込めれば強度は加算される。全ては職人と使い手次第。


『スピリツアのキノコ』Dランク

 魔女スピリツアが愛用した魔素を含んだ黒キノコ。上部の傘とツバ部分の有毒性が強く分量を間違えれば大変危険だが、乾燥させたのち、粉末にしてから錬金すれば状態異常を解除する薬の材料にもなる。凄く苦い。


『ヒールハーブ』Dランク

 見た目は香草のミント。傷口を癒すポーションの基本材料。錬金持ちしか薬効抽出ができない特殊な草。

香草の独特の匂いはせず、ただただ雑草臭い。


『トゥエルカ滝の魔水』Cランク

 大量の魔素を含んだ天然水。魔力30以下は生で摂取すると体内での分解が間に合わず毒になる。錬金技能で魔素を蒸留したのち濾過をすることで、薬剤の原料として使用可能となる。


『エトランタの小指』Bランク

悲運の指なし錬金術師エトランタが自身の人体再生に使用したワラビに似た植物。


 ry(以下略)

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