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スライムサモナー  作者: おひるねずみ
第1部第1章 愛別離苦のアウロラ
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第四十八話 EXPプール

 テレスポット区画の清掃をプルたちに一任。

 気休め程度に衣服を絞ってから場を後にして、光転送によってベースキャンプ地点まで移動する通と天音。

 またたきした一瞬で景観が変わる、末恐ろしい未来技術に仰天する。もし応用、転用できれば世界のパワーバランスがひっくり返る代物だ。


「お前ら!! いや、天鐘! 無事だったんだな!」


 天音の数を入れてしまい慌てて訂正する辻巡査。背後には鋼、デイジー、大鐘巡査と続き、武田少佐の隊や治療魔技で傷を癒すことが可能な伊藤名誉教授が緊急配備されていた。


「水が滴り落ちていることと髪色が気になるが、見たところ目立った外傷は……無さそうだ……辻巡査が自供した百匹以上の昆虫に襲われ、食い止めるために殿しんがりを務めたなら無傷で切り抜けられるわけがないのだが……これはどういうことかね?」


 矛盾点を指摘する白衣を羽織った伊藤教授に厳しい視線を送る同Tチームに所属する隊員たち。特にお目つけ役に抜擢された女性隊員である杉下軍曹の目力が一番殺意がこもっている。


「伊藤教授、協定に反する追及は控えていただきたい」

「…………すまない。私が迂闊だった。許してくれ、この通りだ」


 不和を生みたくないため即座に腰を折る還暦かんれきを迎えた名誉教授。

 研究にも悪影響を与えかねないと立場をわきまえた姿勢に、第一印象が最悪だったが決して悪い人ではないと認め、通は「顔を上げてください」と間髪容れずに手を差し伸べる。

 阿吽の呼吸を感じ取った伊藤教授は、孫と変わらない年齢層の落ち着き払った通を非常に高く評価した。


「まだ学生だというのに……将来有望だな。流石、鳳月総帥が目をかけることはある」


 ちょっとした行動でお気に入り登録ポチされた通。クランメンバーたちはあの人はもう落ちたなと、アダルトキラーのタレントを持つ通を交渉人として今後、全面に押し出す決意を更に強めた。


「報告は食事の後、あらためて聞くことにしよう。今は天鐘君の衣服を乾かすのが先だ」


 了承した自衛隊の杉下軍曹が指さした方向をなぞると、アウトドアで使用する羽釜で米を炊いているのが見える。


「食事が完成したらお呼びしますので、それまであそこの焚き火で暖を取るといいですよ」

(あれ?)


 疑問が生じる通。お昼はこちらで好きに取るとやんわり連絡を入れたのに、お呼ばれされた形になっている。


「俺たちの分も用意してくれるんですか?」

「実は天鐘君が来る一分前くらいに大鐘巡査たちと話して決まったことなんです。大丈夫です、食料品はたくさん用意されてますから気にする必要はありません」

「そうなんですね。では、ご厚意に甘えてご相伴しょうばんに与りたいと思います」


 自衛隊と別れてクランメンバーたちと合流し、髪のことを聞かれるが報告の時に話すとメンバーを説得。

 薪が加熱されて割れる音で安らぎ、一息つきながらサンタンの種を一粒指で弾いて火元に放り込む。


――――ゴウゥゥゥ!!


 種の持つ燃えやすい火種と言う特性を確かめてから、蜂達の戦闘を振り返って結末を教える通と天音。


「あれ全部を撃退したってのか!?」

「通君がドンドン人外になっていくわね……」

「しかも傷負ってないとか――――いや、そのほうが絶対いいけどよ!」

「少なく見積もっても百は超えていたような気がしますが…………」

「うん…………最終的には三百四十倒したかな」


 青白く輝く蜂の圧力。光が接近してくる恐怖に身を置き、あの状況下で一歩に引かずに交戦にできる勇気に尊敬するメンバー。


【私も涙目で頑張りましたよ】

「ああ、柊。お前は頑張った」

【全然称えてないですよ辻巡査! 軽すぎます、もっと褒めてくださいよぉ~~】


 通の背後から離れて辻巡査に纏わりつく精神崩壊気味の天音。よほど蜂型昆虫が怖かったと思われる。


「通と天音さんには経験値が大量に入っていそうだな」

「僕たち、あの場にいなかったので獲得経験値ゼロですね」


 交戦していないのだから仕方ないと割り切るが、通から思いもよらない一言を貰う。


「すみません。話していませんでした。プルたちスライムは『EXPプール』という技能を所持していて従者が得た経験値が主人に届かない場合、核を銀行バンク代わりにしてお金のように貯金することができるんですよ。大雑把に言えばスライムを使った貯蓄システムです」

「凄いですね――――僕たちがその場で戦っていなくても、ツバタが獲得した経験値をプール貯金していつでも取り出せる制度システム。自由時間を得ることが可能で、これなら仕事と両立できますね」


 画期的なスライム運用法。これを上手に運搬すればレベルアップが急速に進む。素材も核に収納できるし一石二鳥だ。安全地帯から指示出しして、わざわざ自分が現場まで足を運ばなくてもよくなる。不眠不休で動ける生命体スライムなので、常人の倍以上の速度でダンジョン攻略が進むだろう。


「それにしても腹減ったなぁ~~。十二時も過ぎてるし」


 ぐぅぅぅ~~~~と、美しい腹の音色を鳴らす鋼。つられて通は鼻で笑い、デイジーも頬を震わせている。


「鋼君、まったく働いていないじゃない。歩いて、走っただけでしょ。あと銀箔鉱石を破損させた」

「アレを引き合いに出すのは止めてくれ。新しい素材に触れた時、トラウマとして蘇りそうだ」

【あれには私もビックリしましたよ。岩塊が液体のように崩れて勢いよく落下するんですから】


 常識的に考えてあり得ないショッキングな事態の連続。俺、私は、未知なる世界を冒険している、堪能して楽しんでいると強く実感している人類十六名。その代金はおのチップだが、未だに誰一人として後悔していない。


 しばらくしてから食事が完成しましたと呼ばれてテーブル席に座る十五名。一人物欲しそうに通の背後に浮かんでいる天音を放置して、スプーンを手に取る。

 自衛隊が用意した昼食は軍用食ではなく、鳳月グループ直送の厳選された野菜と肉をふんだんに使用したカレーだった。米は新潟産コシヒカリでサンタンの光線を浴びキラキラと美しく黄色に光り、いつもと違う沼内での食事とミステリアスな雰囲気が合わさって食欲が促進される。

 肉は鹿児島産黒毛和牛のA5ランク、最高品質でデイジーも大満足して大人サイズの食器で五杯ペロリンする始末。

 あれだけ食べてもタンクトップ上からでも判別できるくびれを、キュと引き締まるウエストラインを維持しているのかと、自衛隊も逆に感心していた。

作者、謎のカレー推し

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