第四十五話 第二種技能獲得
(あれはっ!)
脳裏にある断片情報がかちゃりと合わさり、光の名称が判明する。
「みんな止まって!」
停止を指示した通はリリーのスマホに電話を入れて光の柱を画面に納めるように命令した。
「鋼、悪いけどスマホ出してくれる?」
「お、おう」
ズボンに手を入れスマホを握り、全員に画像が見えるように両手で左右端を持つ。
「通君、リリーちゃんが撮ってるこれは何?」
「これは俺も初めて見るけど、ダンジョン区内を移動できるテレスポットというものらしい。範囲内に入ればスタート地点に一瞬で光移動して戻ってこれたりと、今後自由に行き来できるようになる」
【それ、例えれば瞬間移動ですよね?】
「おぉぉぉ――――! 急にファンタジーっぽくなってきた~~!!」
「レベルアップも充分ファンタジーだろ鈴原」
「それを言うならダンジョン沼の全てがファンタジーですよ」
和気あいあい。リリーがいる場所まで水遊びを固辞しながら道中、敵の妨害を蹴散らして進み、十二時近辺になって動画に映っていた瀑布に到着した。
――――ドドドドドドドドッ!!!
膨大な水量の水が上から下層に向けて流れ、注ぎ込まれている。そして、ある驚きの事実に直面した。
「うそっ!?」
「あれって空……か?」
デイジーと鋼が、クランメンバー全員が絶句する。
水の落下開始場所である滝口。上階層の天井を見上げた一行に突きつけられる現実。あると思われていた閉鎖的な土壁はそこにはなく吹き抜けになっており、青一色の晴天な青空が上空に色づき浮かんでいた。
【これって……外部と繋がっているのでは】
腰付近で停滞して浮かんでいる天音が不安げに通を見て呟く。
「恐らくですが天音さんの予想は的中していると思います。今いるダンジョン沼、トゥエルカ地下洞穴はここだけで完結せず、地上フィールドにも枠を広げた大規模な領域を保有した大陸が舞台になっていると推測できます」
トリスから譲渡されたチケットにより生まれ落ちたダンジョン沼。地底ダンジョンで終わると信じていたものが根底から覆される。余計な捜索範囲の拡大、多種多彩の素材が集まる利点は大きいかもしれないが膨大な手間がかかる。
「話半分だけでも滅入るのにな。全体像を把握するのに何ヶ月かかるんだか」
「そうですね、僕と辻巡査が通君達と一緒にダンジョン沼で活動できる期間は、本部長から一週間と取り決めがなされていますので、最後まで立ち会うことはできないですね」
「やっぱり、期間が定められていたんですか?」
「僕たちの本業は警察官ですから、ずっとダンジョンに潜っていたら本末転倒です。ダイバーとして本腰を入れるなら業務内容の引継ぎをした後ですね。鳳月総帥が御上に掛け合ったことで許可が下りたので今回は特例中の特例ですよ」
厳格な規則がある警察官。本来なら横から口出しして引き抜くことなど不可能だが、鳳月は違う。
鶴の一声で警察ではなく検察庁の役人に手回ししていれば、すぐに直参から指示が特急で駆け巡り、下部組織である田舎警察のトップは波風立てることなく即、OKサインを出すだろう。
「許された時間は長いようで短いわね」
一週間の転属期間中に強くなって戻れば、それだけで地域社会貢献につながる。
部署に帰還した巡査二人の実力が警察上層部に認められれば、最前線であるレベル2ダンジョン沼の案件に配属されることを、通は大鐘巡査の言葉で簡単に想像できた。
レベル2ダンジョン沼に対応できる人材、現段階で最低レベル10以上に達した人間は世界広しと言えど限られているだろう。
どう考えても即対応できる人間はこれから必要になってくる。ひとつのダンジョン沼内部の面積規模が今回のように広大ならば、人手はいくらあっても足りない。
最低でも数パーティで攻略できる程度にしておかなければ世界中がダンジョン沼に溢れかえり、日々の生活に悪影響を与える。
今後、世界中から求められるダンジョンを潰せる人間の育成を助ける算段、ひいては日常生活を破綻させないようにする策とは言えない策を、通は取り纏めて話す決断をした。
「みんな、俺が練った構想を聞いてほしいんだけどいいかな?」
♤ ♢ ♡ ♧
しばらくのあいだ、通の策を静かに聞き、質問を繰り返しては訂正し内容が通たちに有利になる形で骨組み、枠組みが無事決まり、皆が深い溜息を吐いた。
この間にもプルを含めたスライムたちが通たちから距離を置いて、水遊びを仲良く使い熟練度六十人分を捻出している…………真剣な雰囲気にマッチしないシュールな光景だ。
「なかなかいい案だと私は思うわよ(プルちゃんたち、健気ね)」
「いいように使われそうだけどな(通とスライムが)」
「そこは鳳月さんとの話し合いで、手出しできないように上手く調整するよ」
【水遊びレベル3にランクアップ】
『水に属する系統の効率が一割改善されます』
【派生技能『水操作レベル1』をその身に授ける】
新たな技能を習得し、にっこにっこ顔の通は水操作で手のひらに水を浮かび上がらせて宙で固定する。その時、プルからの知識転写で複数の技能が頭部に刻まれ追加された。
『回転、振動、水圧圧縮』と、水弾を放つときセットで使用することが推奨される技能だ。
試しに通は浮かび上がらせた不安定な液体を『水操作』で球状にして固定。
次に『回転』で球をその場で回転させて勢いをつける。
「それ水遊びじゃないだろ!?」
「まさか! 新しく習得した技能なの!?」
「実は水遊びのランクが上がって習得した技能を混合させて、魔技を構築している最中なんだ」
魔技と聞いて彼らは、プルの主力技である水弾を連想した。
もちろん通も同じように思い描き、命中した瞬間に衝撃が炸裂し威力が上昇する『振動』を付与させ、最後に『水圧圧縮』で水の質量、圧力を上昇させる。
「うあぁぁ――――これ、ヤバイ――――!!?」
通が情けない声を上げ、どうしたと鋼が尋ねると魔力消費量が想像したよりずっと多く、腕が棒になったような疲労感がやってきたらしい。
このまま放置すれば操作が危ういと通は、青空に向けて魔技を初解放する。
――ボシュ!
【魔技『水弾』を我流習得】
小さい音を立て、通の掌から放たれる魔技。
【第二種技能獲得を確認】
腕の神経に異常をきたしているため、通自身も放った感覚がない。
【サマナーをアクアサマナーに格上げ認定する】
『全ステータスにボーナスが加算されます』
『全ステータス、レベルアップ時の成長率が上昇します』
『アクアサマナーの『秘密技能:水の加護』が常時発動します』
【水遊びレベル3から5にランクアップ】
『水に属する系統の効率が二割改善されます』
『水遊び最大レベル達成により魔力が5上昇します』
『200の経験値獲得』
何かに水弾が命中して経験値が加算された同時刻。通の身体を中心に水遊びの水と大気の渦が集合して混ざり始め、濃縮された空気圧と空気中に浮かぶ液体が一気に衝撃波と共に弾け、空間内に拡散する。
【「きゃああぁ――――!!」】
全員が身を震わせる凄まじい衝撃波が発生。
不意を突いた突風で瞳を閉じ、甲高い女性の悲鳴が木霊するなか、スコールに等しい大粒の雫が散弾となって周囲に飛散した!
「……!!……」
避けることが不可能と思われたが、従者スライムたちが起こる出来事を事前に知っていたのか、各主人の前に出て身を挺して壁になり衝撃から守り抜く。
大気が振動するほどの衝撃が収まり、静寂が訪れてからゆっくりと瞳を開け、まなこに映った通の黒髪は淡い水色に変色し水滴が光を反射させキラキラと光を放っていた。
名前 天鐘通
第一職業 水精召喚士 レベル21
筋力61
体力61
速力61
魔力155(139+16)
感力81(66+15)
振り分け可能数5P
【秘密技能:水の加護】
水系統吸収、消費量減少。炎系統半減。打撃耐性20パーセント上昇。水操作で自身の周囲に特殊防壁の構築可能。水圧圧縮を使用することで強度が上昇する。
感がいい人は? 薄々気づいていると思いますが。
作者には
「……!!」←ビックリマークがスライムの目に見え
「……!!……」←これは完璧に正面スライムに見えています(笑)




