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スライムサモナー  作者: おひるねずみ
プロローグ ダンジョン沼のプログレス
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第二十七話 自己責任という名の重責

 最初にお伝えしておきます。今回の話は後書き含めてヘイトが若干高いと思われます。気分を害する人がいるかもしれません…………

「あらためて、おはよう天鐘君」


 挨拶と自己紹介を手短に片付け、鳳月からチケットを使用するに好条件の土地を確保してあることを告げられ、私物を持ってから外に出て、庭先で鳳月が立ち止まり振り返った。


「後ろの二人は本当に天鐘君と共にダンジョン沼に挑戦する仲間なのか?」

「それは彼らが足枷となると考えているんですか?」


 天鐘は人体識別技能持ちである鳳月が力を使って探りを入れている微弱な魔力の波動を、自己紹介中に肌で感じ取っていた。


「実際にはその通りになるだろう? 鈴原君と彼女はレベル2ダンジョン沼に挑戦するにはまだ早い。レベル10以下で鈴原君に至ってはレベル1。身を守れるわけがない、自ら死地に飛び込むようなものだ。本当にいいのか天鐘君」

「ご心配されずとも大丈夫です。二人の身は俺が絶対に守りますから、彼らのサポートに期待していてください」


 自信を持って食い下がる天鐘に鳳月は『技能審査』で二人の所持技能を把握。戦闘要員ではないことを知りつつ物見遊山気分で挑む蛮勇に呆れるが、サモナー能力者である通が守勢に重点を置いた働きをすれば問題ないと、天鐘の力量をレベル16である彼の言動に迷いが無いと受動的に感覚器官が認めた。


「そうか。なら敢えて二人に問う――――世界ワールドダンジョン法令の第十二条にも書かれている通り、Dダイバーとしてやっていくのなら成人に満たない君達学生の身に、ダンジョン内での有事の際に自己責任が重責となってのしかかる。もし何かしらの問題に巻き込まれた場合、自身で対処することになるかもしれない……親にも矛先が向く可能性もある、その覚悟が本当にできているのか?」


 少々キツイ物言いだが、これは一種のテストだと通は見抜いた。もしここで鳳月雅人の発する、指導者の圧、高圧的な態度に耐えられなければ話にならない。ダンジョンは一種の戦場、手持ちの能力で生き残る力を試されるサバイバルに近い。明確な殺意を持ったモンスターがそこら中に生息するのだ。一人になっても諦めない、潜るための強い信念がなければ関わらない方がいい場所。足を踏み入れたら引き際を見失う、魔性の魅力を秘めたダンジョン沼が底へ底へと挑戦者を奈落に引きずり込むだろう。安易な考えで挑戦するには危険すぎる。

 沼の情報が出そろい始めてから挑戦するのも一つの手だと、考え方を改め直すように誘導する鳳月なりの優しさだった。


「言ってくれるわね! 家族なら好きにしていいと許可は取ってあるから問題ないし、貴方にとやかく言われる筋合いはないわ。それに覚悟なら死に直面した日の夜に決めてる! 私はDダイバーとして先駆者の一員としてやっていく! この意思は誰に何と言われても変えることはできないわ!」


 売り言葉に買い言葉。鳳月に負けず劣らず強い口調で自己主張し、デイジーから黄色い魔力を帯びた電波が飛び、鳳月のズボンポケット付近に着弾する。

 そして自らのピンクスマホを取り出し画面操作。映し出された英文と数字の二種類、二つの羅列を計四つ、鳳月にこれでもかと液晶パネル画面をグイグイと強引に近寄り見せつけた。スマホの画面に凝視する鳳月の顔色が見る見るうちに変わっていく。


「くくっ! はははははっ! 面白い! 少しばかり学生だと思って見くびっていたな! いやぁ降参だ、これには流石の私も参ったな! ははははっっ!!」


 鳳月は一歩下がって両手を上げ、敗退しながらも絵になる微笑みを浮かべ降参のアピールをした。

 今までは一カ月に一回笑えばいいほうだったが、最近になって本当に笑うことが多くなったと自覚している鳳月。理由は目的に向かって歯車が回り始めたことと、ダンジョンから派生する知識が莫大であり、新発見の情報報告が日常化しつつあることが挙げられるが、それは後日の話。

 愉快な気分の鳳月がニヒルに笑い言葉を締めた。


「デイジー嬢に逆らった者は現代社会では死を意味する!」


 突然の狂言に通と鋼は顔を見合わせて、デイジーがやらかしたことを脳内にて的中させた。

 その後も、デイジーの主張を黙して聞き、天鐘の仲間だと認める鳳月。


「デイジー嬢は電波スキルを強化して世界のサイバーテクノロジー保護に努めたいと、世界防衛、文明崩壊の防波堤になるために情報を統括し、トップダイバーに混じって活動したいわけか。凡人には不可能に近いが…………殊勝な心掛けだ」


 電波能力を体験し、自分の気持ちを正確に汲み取る鳳月にデイジーは「侮れない優秀な人」と認定。学生の身である自分に、目上にもかかわらず公共の場で要人向けの所作、家名を口にすることなく名に嬢を付け足すところから内偵調査は終わっていて身バレしていると瞬時に頭で理解した。


「兎にも角にもデイジー嬢の授かった技能の危険性は十二分に理解した。電波能力の情報が世界に拡散され、近いうちに身に危険が迫ると考えれば少なからず、自衛能力を高めるために死地へ飛び込む必要性や緊急性もある――――私にも臆せず強気に打って出る度胸、主導権は渡さないと有無を言わさず一発で口を封じる交渉術、流石は英国が誇る才女。実にたいしたものだ。この機会を逃せば後が無いことを頭で理解している」


 久しぶりの本音の対話を楽しみつつ、天鐘の仲間に相応しい人材だと一桁年齢が離れた彼女に感心し、デイジーの電波スキルを垣間見て十を知る鳳月。彼女達、電波持ちが成長し善の方向に本気を出せば、現代社会のサイバーテロを撲滅できるのは非常に容易いが、別の手法が新たに世に生み出されるのは時間の問題だろう。終わらぬいたちごっこは何処までも続くだろうが、世界秩序死守のために必要不可欠な技能だと心に留め、残りの高校生、天鐘の古くからの友人、鈴原鋼に視線を移す。

 第一印象は他の学生と同じ、目つきが悪いが何処にでもいる普通の高校生。技能は『素材把握』。主に後方、サポーターの技能だ。戦闘的スキルは一つも所持していないレベル1。どこのダンジョン沼に潜り脱出したのか興味が湧くが、天鐘が関与しているのは確実。秘密にしておきたいことも一つや二つもあるだろうと、鳳月は頭を切り替えて鋼に詰め寄った。


「さて、君がダンジョン沼に潜る理由を聞かせてもらおうか」


 鋼は昨日までは家業優先で動こうと軽く考えていたが、通の母親と天音蘇生の件で主題を変え、今では親友の通のために本気で力を貸そうとしていた。

 それが仇となり通の事情を隠し、最初の目的であった家業を助けるためにと解説するが、長年の付き合いで通には気が進まない口調で話しているのが透けて見えた。数多の人脈を築きあげてきた大人の鳳月は、通が懸念したとおり簡単に看破した。


「デイジー嬢に比べて遥かに動機が弱い」


一言。たった一言で、鋼もそれが頭で分かっていて鳳月に軽く追及されると、ごく短時間で窮地に押し込まれてしまった。


「ふぅ……いったい何が君をそう奮い立たせる? レベル1。戦闘技能なし。完全なお荷物だ! 鈴原君が挑戦する動機を私が言い当ててやろうか? 天鐘君の後ろで楽にレベルを上げて……何かな天鐘君」

「通……」


 二人のあいだに割って入り、鋼を庇い面と向かい合う通はいつもと変わらない表情だが、感情の起伏は感じ取れる。静かな怒りの青き魔力が背後から立ち昇るのを目を凝らさなくても鳳月には視認できた。


「鳳月さん。確かに仰いましたよね? 俺の要望はすべて聞き入れると!」

「その点については同意しよう。だが、決して甘くない社会ルールの非情な現実を力説する権利は私にもあるだろう? もし天鐘君が私の立場ならこのまま素直に『はい、そうですか』と身を引くのかな?」

「無理ですね、自分が認めない限りとことん追及します」

「だろう?」

「ですが、それは俺を信用していないことになりませんか?」

「痛いとこを突く……が、それは屁理屈だよ天鐘君。己の命との対話も然り、正面から真摯にリスクと向き合うことをしない人間はDダイバーになるべきではない」


 お互い引けなくなり、鳳月は仕方がないと前髪をかきあげて悩んだ末。通の目前で雰囲気を一変させ、後ろに隠れている鋼に向けて戦闘態勢時の威圧を放つ。

 隣にいたデイジーを巻き込む形で、機敏に実力差を感じ取った彼女は半歩後ろに下がり、鋼は平常通りに呼吸することもできず、明確な殺意を浴びて唸り声を漏らした。


「鳳月さん……いくらなんでもやりすぎです」

「わかっている」


 鳳月はフゥーと軽く息を吐いて威圧感を静めると、極度の緊張感により過呼吸になっていた鋼が咳をして、膝をついてむせ返した。


「如何かな? このようなやり取りがダンジョン沼内では頻繁に起こり得るのだが? それでも挑む覚悟が鈴原君には有るのか?」

「あるに…………決まってんだろ!」


 醜態を晒す鋼だったが目はまだ諦めていない。苦しくても立ち上がり、これは俺の戦いだと通を下がらせ、意地でも食い下がろうとする。


「君は正気か? 命を粗末にすると親御さんが悲しむことになりかねない。親不孝者のレッテルを自ら進んで背負うつもりか?」

「それをあんたが言うかよ! なら逆に聞くが通はどうなんだ!? 利用するだけ利用して、いらなくなったら使い捨ての社員のように足切りでもするつもりか!?」

「はははっ、笑わせてくれる! それは決して訪れない未来だ」


 人様の庭で相容れない口論が続き、ご近所さんの気配を感じたため鳳月は「ここまでのようだな」と説得を諦め、話を切り上げることにした。


「……いいだろう。その強い意志、苦境にもめげない反骨心に免じて同行を認めよう。ただし! 危機に直面した場合、自分の身の安全を第一とすること――――でなければ、最悪命を落とすことになるぞ?」

「……わかった」


 鳳月の許しを勝ち取り無事試練を突破した通達は、道路脇に停車させている最初の時とは違う型の白い横長リムジンに誘導された。

 そこで通と認識がある隻眼のいぬい運転手と視線がかち合い会釈えしゃくすると、手慣れた動作でキビキビとエスコートし、リムジンのドアが開いて見えた車内に驚愕する学生と天音。

 贅沢ここに極まれりといった感じに超リッチでゴージャス。ピッカピカのフカフカした高級感漂う革張りのU字型のソファーに映像が楽しめる小型モニター数点、アンティーク風のワイングラススタンドに、ワインラックには数十本のボトルが常備されている。

 そこに紫色の液体が入ったワイングラスを手にしてリラックスモード全開の警察官(先客)。辻巡査と大鐘巡査がシートベルトをして座席に座り、車外から覗かせた通らと視線が交差した。

 修正作業がひと段落致しましたので、8月9日まで一話ずつ32話分を予約投稿してきました。お手すきでしたら閲覧えつらんしてくれると『おひるねずみ』は眠りから覚めてハムスターが走るラーニングホイールを転がし、もし評価を頂けるのでしたら荷馬車のごとく走り回ってホイールをぶち壊し、真摯にモニター画面と向かい合い執筆に力を入れ始める『覚醒ネズミ』になるかもしれません。


 作者のモチベと自信に確実に影響を与えるので、続きをもう少し早く読みたいと作者冥利に尽きる感想を抱いている読者様がいるのであれば評価のほどを、どうかよろしくお願いいたします。

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