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スライムサモナー  作者: おひるねずみ
プロローグ ダンジョン沼のプログレス
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第二十五話 作戦概要

「それは?」

「聞いて驚くなよデイジー。通は限定チケットの当選者だ」

「うっ、えぇぇぇっっ~~~~! それってアメリカのメガ・ミリオンズの一等賞金並のチケットだよね!? ヤバイ、ヤバイ! スマホで画像保存しなきゃ」


 早速スマホにチケット画像を取り込むデイジー。


「SNSやツイッターのウェブ状に上げて公表するのは止めてくれると嬉しいんだけど」

「今は絶対にしないから安心して通君」

「今は?」

「世界に配信しても良い時期になったら載せるだけよ?」

「……わかった。デイジーさんの主観に任せるけど、騒ぎになったらリリーとの契約を白紙に戻すからそのつもりで」


 それは痛いと青ざめるデイジーは、契約を交わして通に弱みを握られたことに気づいた。


「じょ、冗談だからね? 本気にしないでね通君」


 デイジーが約束を反故ほごにしなければ問題ない。微笑を浮かべて通は冷ややかに答えを返す。


「それはさておき、命の保証もできない。遊びでは済まされない世界に足を突っ込むことになるわけだけど――――それでもついてくるのかな?」


 鋼とデイジーは通の自宅に来る前から覚悟を決めていた。これから先、魔法が全世界に浸透していく未来を予想すれば、自衛手段としてダンジョンでのレベルアップは必要不可欠。挑戦するのが早いか遅いかの違いだけだ。それに明確に打ち出された目標がある通を助けたい気持ちも加わり、断りを入れる理由が二人には無かった。

 

「俺はたとえ標的にされても、自分の気持ちに嘘をつかないためについていくぞ通! てか決断したんだな」

「それがさ、デイジーさんの食欲見てたら、悩んでいたことが馬鹿らしくなってきてさ」

「なによそれ――!」


 デイジーが不満の口調で突っかかる瞬間、通は相手の目元を真っ直ぐ見つめて穏やかに対処した。


「この際、自分に正直になることにしたよ。助言をありがとうデイジーさん」

「ふえっ? うん。どういたしまして?」


 突然の感謝の言葉に狼狽えるものの、デイジーは通の意見に賛同し同調した。


「いちおう通君には命を救われてるから恩義も感じてるし、私はついていくわ! それに例の約束もあるから……ね?」


 意味深長な言葉を返す対応に、鋼はニヤついて通へ詰め寄る。


「なんだ通? 約束って?」

「あぁ――――ダンジョンで突発的なイベントが発生してさ。デイジーさんのレベルを20まで上げることになってるんだよ」

「通。俺達親友だろ? 隠し事は良くないし体に負担がかかるから、吐いて楽になったほうが身のためだぞ!」


 前にも似たようなことがあったなと、素直に答えたらどうなるか予想する通。デイジーさんの好感度が下がり、親友の好感度は変動なし。こんなことで十年来じゅうねんらいの付き合いがある親友の絆は崩れたりしない。口を一の字で結ぶ一択だ。


「ちょっと鋼君。通君を問い詰めてる場合じゃないでしょ? 錬金保持者と素材確保、更には学業との両立をしながら全てのノルマを一週間以内にこなさないといけないのよ?」


 流石のデイジーも追及されたくないため、通に寄り添う形で素早くカバーに入る。鋼もデイジーの強い口調の正論に引け目を感じて素直に応じた。


「それでダンジョン条約第五と十二条にダンジョン沼に挑戦するにあたって届出と証明書が必要になってくるんだけど」


――――ブルル、ブルル!


「んっ、電話だ」


 振動するスマホを手に取ると着信画面には鳳月雅人と表示されていた。


「ごめん。電話の後に説明するよ、待たせてはいけない人だから。はい。天鐘ですが、どういったご用件でしょうか?」


 敬語の通に相手が目上の人と認識する二人。待たせてはいけない人の言葉に興味心をくすぐられ聞き耳を立てる同級生。


「おはよう天鐘君」

「おはようございます鳳月さん」

「朝早くから申し訳ないが、少し時間を頂けるか? 確認したいことがあってね」

「なんでしょう?」

「昨日の深夜、滅星の統治者からそちらにチケットが配付されていないかな?」

「……ッ!」


 電話越しの音声が、鋼とデイジーにも届いた。通なら絶対内緒にすると踏んでいたのだが……


「手元にありますが、それも技能の力ですか鳳月さん」


 会話を耳にした鋼とデイジーは耳を疑った。限られた小人数、六人だけの秘密と通から説明を受けていただけにショックは大きかった。


「そうだ。そしてチケットを使いダンジョン沼に挑戦しようと決心したと見計らい電話をしている。タイミング的にはバッチリだろう?」


 こちらを正確に予測する技能。ちょっと通の話を小耳に挟んだだけで読み取れる力を分析し、偽ることは不可能と考えた通に避難を浴びせることはお門違いだと、通の判断を黙して受け入れる鋼とデイジー。


「絶妙すぎて逆に怖いくらいです。監視でもつけているんですか?」

「ははははっ! 鋭いな天鐘君。実は私が雇っている直属の情報収集を目的とした暗部が君の家を遠巻きに観察(・・)している」

(うっそぉ――!)


 感力のステータスが上がり感覚が鋭くなったはずなのだが、気配に気づくことはなかった。天音の報告にもなかったことから一キロメートル以上離れた場所から探られている可能性が高い。

 彼の直属私兵部隊なら、最新鋭の単眼鏡スコープやらの道具も、潤沢な資金源を背景に豊富に取り揃えていることだろう。


「俺……油断しすぎですかね」

「いや、私の精鋭達が優秀なだけだ。怪しい人物がいたら強制的に排除しているから天鐘君が気に病むことはない――――おっと、話が脱線したな。私からの用件を伝える」


 陰ながら見守られていた事実に通は身を引き締め、鳳月雅人から承る初めての仕事(ファーストミッション)を聞く姿勢を正す。


「天鐘君も内容は察しがついていると思うが、採取してきてほしいのは現在流行中の『魔魂水晶化現象(ソウルクォーツ病)』に対する特効薬に適していそうな材料だ。あればあるほどいい。早急に確保していただきたい! 頼めるかな?」

「はい。できる範囲で善処しますが――――聞きたいことが俺も一つあります。いま日本で判明しているチケット保有者は俺だけでしょうか?」

「……確証はないが、直感が通君のみと囁いてる。ほぼ間違いないだろう」

「そうですか、ならレベル2ダンジョン沼に潜りたい人がいるなら条件付きで入場開放してもいいのですが」


 ふふっと薄く笑う鳳月雅人。まるでその言葉を待ち望んていたかのようだった。


「やはり世界各国の友人から伝聞でんぶんした通り、入場するには持ち主の許可が必要不可欠のようだ。わかった。以前に伝えた通り、天鐘君の要求を全て呑もう。言ってみたまえ」


 通のチケットを強権を発動させて、強制的に奪取することも可能だった権力者の鳳凰雅人なる人物。もし法や、政府、世論を操り、国民の病状を盾にして物事を押し通す人間なら通の命運はここで尽きていた。一個人が国家権力に反抗するなど余りにも滑稽だ。

 横暴な手段を選ばなかったことを頭で理解し、この人なら信用できると太鼓判を押す通。車の中で交わした『立場は対等』を念頭に置いて、臆すことなく日本グループを代表する総帥、鳳月雅人に忌憚なく意見を述べた。


「まず最初の突入する人数ですが、俺達を除いて十名に制限します」

「威力偵察を精鋭で行い、内部の危険性を判断するつもりか?」

「そうです。レベルは最低でも10以上の者で腕に自信があり、協調性がある人物にしてください」

「場を乱す真似をしない人物で身の危険は自分で守れることか――当然だな」

「次に調査箇所ちょうさかしょが被らないように、別々に行動することを上申じょうしんします」

「……ふむ…………部隊を振り分けて戦力を分散させる理由は?」

「探索区域の拡大を初動からすれば素材収集効率が良くなります。その後、ダンジョンからの帰還、連絡方法を確立させて安全地帯セーフティエリアを構築し、非戦闘員を突入させれば速やかに事が運ぶでしょう」

「理に適うが、随分と慎重な歩みだな天鐘君」


 本来なら最初から特効薬完成に影響する人材を投入したい通。しかしレベル2ダンジョン沼ナンバー00の推奨レベルは驚きの16。戦闘技術が乏しい人が来ても足手まといになる。戦闘条件の良し悪しなどで、多数のスライムを駆使しても危ない可能性を視野に入れると、新たに加わる他人へ余力は割けない。

 貰える経験値も目減りするため、一緒に行動することはナンセンスだ。


「16! 私が知る限りでは最高難度のダンジョン沼のようだが、そのぶん資源に期待が持てそうだ」

「あと最後に一つだけ願いがあるのですが」

「みなまで言わなくてもわかっているつもりだよ天鐘君。ダンジョン沼の届出と潜るための書状、証明書が入り用なのだろう? その辺りの要求は想定内、折り込み済みだ。何も心配する必要はない。ただ、チケットを使用するのは今しばらく待ってもらえないか? 場所はこちらが指定したい」


 通達では対処できない厄介事を、進む道をサポートして整えてくれる。それだけで通は感謝の気持ちで一杯だった。


「わかりました。鳳月さんの指示に従います」

「通君は聞き分けが良く素直で助かる。ああ、それとダンジョンに挑戦する格好で待機していてくれ。ニ十分後にそちらに到着する」

「はいっ!?」

「では後ほど」


 スマホの通話が切れ、会話内容と共に二人に新たなバイト先。鳳月グループ総帥との直接取引をした成り行きを説明した。

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