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スライムサモナー  作者: おひるねずみ
プロローグ ダンジョン沼のプログレス
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第二十一話 襲来

執筆中をストックすることにより、話を選択する操作を余分にしなければいけなくなってきたので、投稿することに決めました。(自分の場合、意外とこれがめんどくさく感じる…………)

「とりあえずその荷物を持つから家の中に入って」


 デイジーが転がしてきた重量がありそうな黒いアタッシュケースを、腰を下ろして通が代わりに持ちあげ、母が風邪で寝ているので騒がないよう伝えてからまっすぐ進んで台所方面へ案内する。


「プルちゃん!」


 テーブルの上に鎮座するマスコットアイドルてき存在のプルを見つけては素早く駆け寄り、頬をこすりつけるデイジー。


「デイジーさん。晩御飯は?」

「お気遣いありがと通くん。家で軽く取ってきたからお構いなく! 嗚呼ああ~会いたかったよぉプルちゃーーんっ!!」


 我を忘れて狂喜乱舞する彼女。夢中になっているところ悪いが鋼が風呂に入っていることを話すと、パジャマ姿の通を見て「次は私が入るね」と、にこやかに予約した。

 それを了承した通は鋼にデイジーが来訪して入浴することを軽く教えると、完全に油断していた鋼はバスタブから勢いよく立つと変な声をあげた。


「デ、デイジーがいま来てるのか!?」


 親友の予想通りの驚きよう。もし逆の立場だったら自分自身も鋼と同じ反応する。


「アポもなく来たから驚いたよ。じゃ、伝えたから」

「お、おう」


 慌てふためく鋼を置き去りにしてから一時間が経過。デイジーが入浴を終えて通の部屋に入室し、各々が動物の絵柄のついた丸い布製のクッションに座り、テーブルを囲んで情報を共有し合う。

 デイジーが二階の部屋に来るまでに通と鋼はクラスメイトとラインで連絡を取り合い、クラスの委員長から驚きの事実がまわってきたのでデイジーに教えた。


「同学年の両親の半数以上がとこに伏せてるって本当なの!?」


 それを裏付けするかのようにテレビをつければ、全チャンネルが正体不明の夏風邪に関してのニュース速報が映し出され統計、スーパーコンピュータから算出された全世界の患者数はおよそ十億人を超える。一日が終わる前にはじきだされた規格外の数値に世界各国がウイルスの特定に総力をあげて対応しているなか、ある事実が浮上した。

 この夏風邪は普通の風邪と変わらず殺傷能力が低く、感染するのは人類だけであり、十五才以下の子供の感染率がゼロに近いのに対し、四十代から感染率が急激にあがる。そしてダンジョンに入ったことがある者は抗体があるのか夏風邪を引かないという情報だった。


「これさ、俺の思い違いならいいんだけどダンジョン沼に向かえとばかりに誘導されてない?」

「いや、俺も同じことを考えてたぞ」


 地の底から湧いて出たダンジョン沼。現代科学では解明できない場所。中は命を落とす危険な領域。そこに誘おうとする異質な夏風邪。タイミングが良すぎて無関係とはとても思えない。


「う――ん」

「何だデイジー? 突然うなったりして」

「何者かの手のひらの上で踊らされてるのは確実なんだろうけど……この黒幕をダンジョンの創造主と例えるとして、私達。対象を人間達に限定してまで達成させたい、相手の目指す到達点が見えてこないのよね」

「つまるところ目的が不明で不気味ってことか」

「それもあるけど……だいいちダンジョンで不思議な力を授けるメリットって何? 徘徊するモンスターを倒しレベルアップさせて完全に成長の手助けしてるよね? さらに今後はレベル2ダンジョン沼が現れて有用な未知の資源を私達にもたらすんでしょ? 無償で! あり得ないから!」


 おいしい話には裏がある。世の常であり真理。甘い蜜に群がる虫達をおびきだし、油断したところを纏めて一網打尽にする。ダンジョンや夏風邪を世界に浸透させる力があるのなら人類抹殺は容易だろう。だからこそ矛盾点が生じるのだが……


「デイジーさん。ダンジョンの創造主は途方もない力を所持してるんだから俺達の常識で当てはめても答えは出ないと思う。わかることは俺達人間に対して強い殺意を抱いていないことかな」

「そうね。殺そうと思えば夏風邪をエボラやペスト。死亡率百パーセントの狂犬病やヤコブ(プリオン)を魔法で空気感染するように調整してばら撒けば済む話よね」

「真顔で平然と怖いこと言うなよ……そんな物騒なウイルスが蔓延したら世界中が阿鼻叫喚の地獄絵図。黄泉の道である黄泉比良坂よもつひらさかと化すぞ」

「あははは、そんな気を負わなくても大丈夫。大丈夫。通君が言った通りダンジョンの創造主様は私達を殺すつもりないから、むしろ利用価値があるからこそダンジョンを通して成長するように仕組んでるでしょ」

「そうだといいな……」

「ちょっとぉ~~! そこ同意するところでしょ! せっかく辛気臭い空気を和まそうとしてたのにぃ~~!! ねぇ~~プルちゃん!!」


 ポニーテールを崩したことでうなじが隠れ、潤いのある髪を下ろしたデイジーの膝上で撫でられ続けるプル。仕方ないなといった感じで、されるがまま身動みじろぎさえしない。


「鋼君ひどいよね~~プルちゃん?」

「!!」

「あっ! プルちゃんも酷いって!」

「おい通、なんとかしてくれ」


 はいはい。わかった、わかったと通はプルを呼ぶ言葉を魔力を乗せて吐いた。


帰ってこい(リターンコール)プル」


 プルがデイジーの魔の手から逃れ、召喚者である通の横に瞬間移動した。


「ああっ! 私のプルちゃんがぁ!!」

「いやいやいや。百歩譲ってプルは通の私兵だろ」


 現在の状況に危機感がない三人組。そこに冷たい風が入り込みレベルが一番低い鋼が身を震わせた。


「なんだか急に悪寒が」


 一番窓側に近い場所でくつろいでいた鋼の後ろには、霊体の天音が疲れた顔して浮いている。


「随分と疲れた様子ですか何かあったんですか天音さん」

「んっ? アマネ?」


 通とデイジーの視線をたどり後ろを振り向くが誰もいない。


「実はね鋼君。あなたの背後には…………」


 途中まで言いかけ、口を噤むデイジー。悲痛な顔をして随分と演技かかっている。これは乗っかる流れだなと察する通。


「おい。そこで言い止まるなよ。すっげえ気になるぞ」

「鋼。心して聞いてくれ」

「なんだよ通。改まって気味が悪い」

「後ろに背後霊がいる」

「はぁ? 寝言は寝て言えよ通。幽霊なんて存在するわけ…………いや待て。魔法があるならもしかして幽霊も…………」


 急速に頭をフル回転させ偽りではないと理解した鋼は焦り始めた。


「い、いるのか?」


 通はコクリと首を縦に振り、デイジーはもう無理と我慢できずに勝手に吹き出した。それで全てがオジャンとなり、通が天音のことを含めた諸事情を包み隠さず説明して鋼と魂の契約書を交わした。



【すみません。驚かせるつもりはなかったんですが】

「そんな! 滅相もない! 俺、こんな美人さんに憑りつかれるなら願ったり叶ったりです!」


 鋼が面と向かって本人に対して美人と言い張るなどよほどのことだ。経営する飲食店は地元周辺ではかなり人気があり、集客性が高い立地に建物がある。食事に関心があるグルメなOLや帰宅途中の女子高生も立ち寄るスポットで多少お金に余裕がある人達が集まる。そういった人たちはちゃんとした身嗜みをしていて総じてレベルが高い。つまるところ見る目は普通の人よりは肥えているのだ。


【デイジーさん。今の学生たちは平気で口説き文句をおっしゃるのですね】

「くふっ!」

【デイジーさん?】


 天音は肩を震わせてるデイジーの異変を感じ本気で心配するが。


「ふふっ! い、いるのか? ふふふっ! あははははっ! ダメ! 可笑しくて笑いが止まらない!!」

「言ってろ!」

「……天音さん。デイジーさんはどうやら壊れてしまったので気にしないでください」


 鋼の声真似をしてツボに入ったデイジーはさておき、帰ってきた天音の話を整理すると周辺に新たなダンジョン沼が発生し、自衛隊や警察官が対応に追われ決着を急いでいるようだ。

 そこにテレビのニュースキャスターが天音の話に信ぴょう性を加える。


「残すダンジョン、潰すダンジョンの仕分けが終わり次第、ダンジョン沼を除去する作戦が自衛隊主導で決行されるようです」


 テレビ報道している場がヒートアップするが、通たち四人は冷めた目で見ていた。


「天音さんの持ってきた情報通りに事が運んでいるけど」

「ぶっちゃけ丸投げだよな自衛隊に」

【そのしわ寄せが今回は私たち警官にもまわってくるんですけどね】

「それだけ政府が処理しないといけない法案が目白押しで、四苦八苦しくはっくしてるんでしょ。海外と密に連絡しあって今後のダンジョン沼の調整もしないといけないだろうし」


 ダンジョン沼は金のなる木だ。新たな業種の事業確立、未知の資源による販路拡大、それに付随して獲得できる利権絡みや税金で国が潤うのは確実。財政の討論で議会は荒波を進む船のごとく揺れに揺れるだろう。


「けどさ、夏風邪で人員不足になっているはずなのに今回は行動が迅速で、いつもの政府じゃないみたいだ」

「それだけ危機感があるってことだろ」

「当然よね。政治家達も夏風邪に感染してるから重い腰を上げざるを得ないし、大御所からも最優先で何とかしろと文句の一つや二つ言われたんでしょ。夏風邪の対象が国民全員だから支持率に大きく関わるだろうしミスすれば政権交代するくらい支持率低下することもあり得ない話ではないわ。『仕事してるぞ』と目に見える形の行動で、国民に分からせるようにする必要があったんでしょ」


 話が弾み、ニュースキャスターさえもが今まで見たこともないほど熱く語る。やはり魔法が一枚噛んでいることもあり、隣に座る仕事仲間にダンジョン沼に入りたいですかと聞かれると相槌を打ち賛同する。dボタン投票での魔法を使いたいと思う日本人は99パーセントを超える結果となった。


「大多数の人が魔法を使いたいんだ」と通が。

「ほれ見ろ!」と鋼が。

「安直ね~」とデイジーが。

【気持ちはわかりますが】と天音が。


 世界がダンジョン沼に振り回されている現実に四人中誰一人、背を向ける者はいない。向き合って前に進んでいこうと各々が思っていた矢先。プルが突然震えだし、何の前触れもなく部屋の電化製品の電源が消え、カーテン付きの窓側から夜中だというのに眼を開いていられない強烈な閃光が部屋の中まで入り込んできた。

 四人ともども周囲の家からも悲鳴が上がる中、明らかに一人の声量だけが異質だった。光が収束し部屋を見渡すと、前のめりに倒れているデイジーの姿に三人が動揺した。

 

「「まさか!」」


 二人してハモリ、通と鋼が駆け寄る前に霊体の天音が大声でストップをかけた。


【触らないでください。脳の異常なら逆効果になります】


 さすがは現職警察官。極めて冷静な対応だった。


「確かに脳に異常があるのかもしれませんが、これは魔法が関係している確率が高いんです!」

【どういうことですか?】


 通が説明しようとした時、それは――聞こえた。水面に水が落ち、波紋が広がるように。拡散するように。世界を包むかのように響き渡って、鮮明に前頭葉に刻まれる!


【全世界の人類諸君】


 冷徹で威厳ある透き通っていて聞き取りやすい声。部屋にいた三人は顔を見合わせて全てを悟った。


――――ダンジョン沼の創造主!


【我は滅星めつぼしの統治者。真名をトリスメギストス。親しみを込めてトリスとでも呼べばいい】


 物騒な肩書に全世界中の人々が畏怖するが、後に続く愛嬌ある緩衝材で多少なりとも緩和された。


【部屋の住人よ。そとへ出よ】


 三人が躊躇する。デイジーを置き去りにしていいだろうか?


【命に従えないのならば沼で得た技能は完全消去デリートする。以後、能力開花は永遠に訪れないものと知れ!】


 逆らうことができない強い口調の脅し文句。今後、沼での成長が一切できなくなるのならば従う道しか残されていない。 


【と、言ったが。こちらが突然の来訪した身だ。五分間の猶予をやろう】


 トリスの寛大な処置に寝ぼけ眼の人、トイレ中の人、いろいろな事情で外に出れない人達が一斉に動き出し五分後には人類の98パーセント以上の人が外に出て、彼の姿を瞳に焼き付け、限界まで眼を大きく開いた。

 月光に照らされて宙に浮かびあがる、ユラユラと揺らめく濃い紺色のフードを深々と被った影巨体。電子機器が完全に停止して体長、全長の正確な数値測定は不可能。連なる山脈よりも巨大なことだけは確かだった。

32話まで話が完成しているので、ストックが切れるまで毎日0時近辺に投稿しようと思います。


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