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スライムサモナー  作者: おひるねずみ
プロローグ ダンジョン沼のプログレス
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第十三話 自宅でホームワーク③

ようやく7話ほど書き終えたので投降を再開します。

 通が召喚したダンジョン沼は超小型サイズで手狭い自室でも設置可能な大きさ。沼の水分がフローリングの床に染み込む気配はなく、単なる液体ではないことが一目で分かる。そんな魔法で出現した不思議沼に通と天音は進んで入る。

 突如、床が無くなった感覚を感じた時には落とし穴に落ちたかのように引き込まれ、沈んで、下へ底へと次元移動し、何事もなくレベル1ダンジョン一層に到着。

 通は異常がないか辺りを見渡しながら現時点でのタイムリミットを確認する。


――ダンジョン稼働時間残り二十四時間。


 今現在の魔力で維持可能な時を念頭におきダンジョン内の光源量設定をいじる。

 ダンジョンを構成する規則正しい石材が光源を発生させて薄暗い暗闇が晴れていき、視界が明瞭となったところで横にいる天音と共に先へと進む。向かった場所は相手の逃げ道がない袋小路。


「天音さん。ゴブリンに復讐したいですか?」


 通の唐突な話題にもかかわらず天音は即答した。


【当たり前じゃないですか! 発見したら問答無用で発砲しますよ!】


 殺された相手に不平不満をぶつけられるならと天音の瞳が怪しく輝いた。


「天音さんは今は霊体なので相手から知覚されることはなく、一方的に蹂躙できますよ」

【それは願ったり叶ったりですね】


 問答無用、願ったり叶ったりという言葉に強い憎悪を感じた通は、これなら問題はないと【モブモンスター生成】のことを説明してから前面にゴブリン三体を出現させた。

 天音の瞳に映る汚らわしい緑肌の小鬼達。

 反射的に天音は霊体時に獲得した霊素と魔弾を掛け合わせた、銃器が無くても発生させることができる《複合魔技:霊魔弾スピリットショット》の銃弾を空中で回転させながら滞在させ、前方の敵に向けて射出。それぞれのゴブリンに的確に命中させた。

 肩に被弾したゴブリンのか細い片腕は弾のパワーに圧倒され、千切れてきりもみ回転しながら後方に飛び。胸部を撃ち抜かれたゴブリンと頭部を銃撃されたゴブリン二体は何が起きたか分からずに後ろに倒れ込んで絶命した。

 唯一、片腕を無くしたゴブリンが出血を止めようと傷口に手を当てて叫んでいるが、慈悲のない天音の追加弾で両膝、両足、主に下半身を重点的に攻撃され床に崩れ落ちた。


【私を殺した報いです】

 

 天音の冷徹な言葉が聞こえないゴブリンは、このような目に合わせたのを通と思い込み、殺意を込めて睨みつけるが悪意を感知したトークンスライム達が生き残りのゴブリンを囲み、四方から一斉に胴体から伸ばした疑似腕で滅多打ちにした。

 骨を砕き手足があり得ない方向にひん曲がる哀れなゴブリン。地面には大きな蜘蛛の巣模様の亀裂が生じていて、スライム打撃の威力を物語っている。


『レベル15以上のため経験値が獲得できません』


 制限があることを確認した通は、天音にも同じ症状があるか尋ねるが経験値が入っていることが分かると、高レベルな自分だけ経験値を入手することができないだけでパワーレベリングすることに支障はないと結論づけた。


「天音さん。一度に沢山ゴブリンを生成しても?」

【通君がそれで良いのなら私は全然構いませんよ。攻撃範囲に入らないで遠方から銃撃していれば安全ですし】


 了承を得た通は十匹のゴブリンを生成。トークンスライム達が前衛でとおせんぼ、中列では通がその場から動かずに天音が倒した分のゴブリンを再生成し、そこに最後尾の天音が憤怒の後方射撃。と、効率よく循環する陣形を生み出した。

 その中で特に『召喚士サモナー防護服マジックコート』によって魔力が増加した状態で召喚した後輩スライムは先輩スライムを圧倒する働きを叩きだした。通は最初のトークンスライム四体を帰らせて再度召喚。戦闘させると過剰戦力に更に拍車がかかりスライム二体でゴブリン十体を多彩な方法で瞬時に制圧できることが判明した。

 攻撃面、前衛で働く作業行動を実際に目で確認できた。ゆとりがある通はこの機を活かすことにする。今いる実験的空間なら誰にもスライムの情報が漏れることはない。通は思い切ってスライムの耐久性を知るべく、休憩を挟んでレベルアップ分の振り分けポイントを割り振ったことで魔力が五十に達した天音にある提案をした。


【ええっ!? 本当にいいのですか!?】

「遠慮はいりません。スライムの耐久テストをしたいので、天音さんの全力をもって俺のスライムを撃破してみてください」


 通は的になるスライムを五匹の中から選び、前に立たせて甘んじて受けるようにと命令する。

 従順なスライムは嫌がることなく素直に通のめいに従う。

 天音は困惑しながらも、自分の全解放した魔法の力が幾分か興味がないわけもなく「霊魔弾スピリットショット」の銃弾一つを生み出して、一点のみに集中させようと破壊の力を送り始める。

 徐々に銃弾へ凝縮される魔法力。


――――ギギギィ!!


 最大圧まで込められた時。金属と金属が擦られる時に発する奇怪な音が迷宮に木霊する。ステータスの魔力五十はボーナスPを割り振ることができない通常人にとってレベル三十相当にあたると通はプルをつうじて理解している。

 レベル三十台の魔法使いが放つ全力魔法と同等の威力にスライムが耐えられるか否か? その結果がもう少しで判明する。

 天音の全身全霊を乗せた一撃の魔力量に通は結構な威力だと推察した。軽く見積もっても自分に攻撃が直撃すればタダでは済まないが、受けるのはスライムであり自分ではない。そのこともあり、傍観者の通は心のどこかで期待に胸を膨らませていた。天音も己が力量を知る絶好のチャンスだと表情から不敵な笑みが自然とにじみ出ている。


【いきますよ!】


 空中に滞在する魔法の銃弾が天音の意志かけごえで高速回転。目標のスライムに向けて遂に前進を開始する。

 直後、通の迷宮に風船が割れたような乾いた音が鳴った。天音の「霊魔弾スピリットショット」がスライムの肉体を貫いて核を貫通破砕した時に破裂したスライムが亡くなる直前に発生させた現象音だった。

 当のスライムは元居た場所から姿を消した時、通にスライムの死亡を決定づけるメッセージが届いた。


『スライムトークンが1消失しました』


 これにより現状でレベル三十台の人間の完全な不意打ちを許してしまった場合。護衛であるスライム、もしくはスライムの実力以下の標的となったPTメンバーが死ぬことが確実となった。人々が集うであろうレベル2ダンジョン以降の立ち回りに注意しなければならないが、レベル制限が設けられている以上、対策する時間は十分にある。

 と、個人的思考を停止して魔法をぶっ放した天音の様子をうかがう通。


【これが自分の力…………ゴブリンの攻撃を平然と受け止めていたスライムを木っ端みじんにできるなんて!!】


 もうゴブリンなんて取るに足らない敵に成り下がりましたと言わんばかりの自信に満ちた表情。通は次のステップに進めることにした。


「さっきと同じようにスライムへアタックしてみてください。ただし今度は防衛機能ありになっているので簡単には倒せないと思います」

【それはそれは。非常に面白そうですね!】


 ノリノリな天音は満面の笑みで霊魔弾スピリットショットを放つ。選ばれた標的のスライムBは両手の疑似腕を合体させて前面に盾を手速く作り防御。魔法弾とスライム盾が衝突しパワーを相殺しきれなかったスライムBは後方の壁付近まで吹き飛ばされるものの健在である。

 見れば盾の疑似腕部分が消失しているが戦意は失っていないようだ。


【あれを耐えますか……あらためて通君のスライムが味方だと頼もしいと実感しました。肉体を持っている人なら更に身に染みるでしょうね】


 意外なほど頑丈な天鐘スライム。矢面に立つタンク型とアタッカー型。更には遠隔攻撃可能なハイブリッド戦士。一匹で三役こなす万能スライムが総勢四十。通は現れるであろうレベル2ダンジョンを単身で潜れたら潜りたいなと叶わぬ夢を抱いた。


「では最後の実験テストです。天音さん準備は良いですか?」

【もちろんですよ!】


 通が天音に頼んだことは回避行動を認可したスライムBに対して通常の霊魔弾スピリットショットを掃射することだった。合図と共に最終実験がスタートする。


【!?】


 天音はスライムの俊敏さに瞠目どうもくした。回避が成功することで地面や壁、天井にも突き刺さり、石材を削る数多の魔弾。逃すまいと攻撃の手を緩めずに生成した第二波の霊魔弾をスライムBに集中砲火で叩き込むが――――二分後。


【もういいですか?】


 最初は意気込んでいた天音は、一つもかすりもしない自分の腕の未熟さに嫌気がさして攻撃を中断した。


【これでも銃の腕前は勤務する署の中でも上のほうで、先輩には筋がいいって褒められていたのに、ちょっと凹んでしまいます】


 意気消沈している天音に通は思ったことをそのまま口にした。


「そんなに根を詰めなくても大丈夫です。召喚したスライムに勝てるビジョンが俺自身も浮かばないので」


 明るいダンジョン内部で通と天音は互いに顔を見合わせて同調後に天音のボーナスゲームを再開。スライム実験と合わせて合計二時間ほど付き合い、通達は来た場所に設置したダンジョン沼へ戻り地上に引き返した。

 ダンジョン沼を通って戻ってきた自室のデジタル時計は二十三時を過ぎていたが部屋に変化はなく、通の母親は明日早出出勤のため、二十二時ごろにはぐっすりと熟睡している。そのせいか照明は付いているが家の中はひっそりと静まりかえっていた。

 ダンジョンが消滅するまでのあいだ沼を放っておくことはいくら何でもまずい。もし高校に行っている間に母に見つかればいらぬ心配をかけてしまう。それを望まない通は一言キーワードを呟く。


「閉じろ」


 通が命じると黒き沼は液状から固定化して変質。完全に行き来不能になった凝固した沼は役目を終え、通の部屋から完全に姿を消した。

 言いたいことがありそうな天音巡査だったが、戦闘実験の最中に己の思わぬ本性を知ることになり、沼について言及する気力が湧いてこなかった。


【読書好きの私に争いは性に合わないと思っていましたが…………少し、夢中になってしまいました】

「禁止されている殺害まがいのことをしているんだから当然と言えば当然でしょう。一方的なワンサイドゲームなら尚更です。ダンジョン内部の悪意あるモンスターを殺して批判されることはないですし、これは確実に流行します」

【モンスターハンティングと称してダンジョンを買収した人達によるツアーも開催されそうですね。ゴブリンハンターの称号を得た私もハマってしまったんですから、需要はかなりあると推測できます。通君のおっしゃる通り流行るでしょうね】


 二人そろってダンジョンを体験し、危機感を感じない余裕を持った討伐を繰り返したことによる結論。楽勝ムードで進行できることを証明すれば、誰もが気軽にダンジョンに入出できるだろう。


「その前にダンジョン関連の法整備で大激論が繰り返されて話が進まないのは勘弁してほしいところです」

【ですね。すんなり法案が通ることはないと思います。ですが、リムジンでの話を聞く限り鳳月総帥が裏で糸を引いていそうですね】

「例の政府主導のダンジョン資源開発機構発足でしたっけ? あの話と繋がっているなら可能性もゼロじゃないはず」


 若干だが希望がある。早期に清書された法案が議決して通れば、とんとん拍子に事が運ぶだろう。

 近頃、多発する自然災害。魔法を獲得できた者の分母が大きくなるほど災害対策へ貢献できる。エネルギー問題然り、食料自給率さえも、あらゆる分野の悩みが一斉に解消できる夢のようなビッグチャンスが到来する。

 これを俗に言う醜い派閥争いで無駄な時間を浪費するのであれば、正直国家公務員を辞職してほしいくらいだと考える通。


【こればかりは考えても仕方ないですね。われわれ国民は指をくわえて行く末を見守るとしましょう】


 現役を引退した大御所の指示を仰ぎ動く政治家は数多くいる。利権絡みでいがみ合う派閥の長達が妥協点を定めて一時停戦し、それによって良い方向に流れが傾き、国益が企業を通じて国民に返還されれば暫くのあいだ有権者の支持を得られて現政権は安泰だろう。


――――ガチャ!


 体を伸ばしドアを器用に閉めて部屋の中にスルスルと入室するプル。ベッドに腰を下ろしていた通に駆け寄り、膝の上に飛び乗った。


「おお。どうしたんだプル…………私も連れていってほしかった? ああゴメンな」


 膝の上で飛び跳ね抗議するプル。あるはずの物理的衝撃が想像以上に少ないことに驚きながらも次は一緒に行くことを約束すると、通の膝上からベッドの枕元に移動した。


「自分そろそろ寝ますけど天音さんはどうします?」


 霊体になった天音には肉体的疲労感はないので睡眠も必要としない。夜の時間は暇を持て余すので確認のために尋ねた。


【そうですね。せっかく霊体になったことですし、人に知覚されないことを最大限に生かして付近のパトロールにでも行ってきますよ】


 深夜二十三時過ぎだというのに周辺の治安を維持しようと自ら進んで哨戒をするなんて、死んでも警察官の鑑だなと思う通。


「くれぐれも俺とプルの一キロ圏内から離れないでください」

【了解です通大佐!】


 意味を知りながらビシッと最敬礼した真面目な天音に、普段のギャップを感じて苦笑しつつ、通とプルは霊体の特性を利用して戸締りした窓から外に出た天音を見送った。 


「さて寝るか」


 用を足してベッドに横になった通は眼を閉じて横になった。

 明日は学校の登校日。教室で質問攻めにされるのは間違いない。

 すこし憂鬱になっているとひたいにひんやりとした感触がした。


 数秒後、眠りに落ちた通の横にいたプルに集うトークンスライム五匹。その五匹がプルに溶け込むように吸収され情報統合されること一分弱。

 元居る場所に吐き出され、プルの知識を得たトークンスライム達は、主に迷惑をかけないよう各々が家具に溶け込む置物に変化。命令を忠実に実行した従者より下の位のしもべ達に満足したプルは次の行動に出た。


『従者スライムプルが主の過剰スタックしている魔素を微量の神力に変換します』


 眠りに落ちている通に、秘密技能以上の機密を含むシークレットスキルの上であるトップシークレットスキル神力(・・)がシステムメッセージをつうじて主であるとおるに伝わることはない。プル独断で始まった行為がのちに通にとってかけがえのない財産になろうとしていることに、本人は知る由もない。

19話まで1日1話ずつ掲載します。

空き時間にコツコツと書いていくスタイルの亀歩みですが、生暖かい目で見守ってくれたら幸いです。

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