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スライムサモナー  作者: おひるねずみ
プロローグ ダンジョン沼のプログレス
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第十話 鳳月グループ総帥 鳳月雅人②

 中々プロローグが終わらない。作者自身も分かっているのですが如何にも出来ず、長々と続いてしまいます。

(なるほど。識別能力は飾りで本命【秘密技能:超直感】の力で自分を真に有益な存在として見ているのか)


 天鐘は独り言ちり、必要と断言する鳳月の話を聞く。


「天鐘君に是が非でもやってもらいたいことがある。それはダンジョン内で今後、獲得することができると予測されている資源の確保だ」


 資源の確保と聞けば興味を抱くと思っていた鳳月は、天鐘のポーカーフェイスの表情に少し不安の色が滲む。


「予測されている?」

「そうだ。昨日から出現したダンジョン沼から生還した者たちがモンスターが時々落とす『ビー玉』サイズの水晶が研究機関に持ち込まれて調べた結果。未知なる物質で構成されていると判明したそうだ」

「その未知なる物質がどのような資源になると?」

「それはこれからの研究成果で明らかになるだろう」


 期待を膨らます鳳月に天鐘は冷淡と事実確認をする。


「つまり、ビー玉の名称はまだ現時点では不明。活用法も判明していない、ということですか」

「そうなるな」


 鳳月の言質を取り天鐘は己の中でほくそ笑んだ。名称と共に活用法まで全て分かっている。どの国も掴んでいない、確実に国益につながる情報を眼前の大物に喋り、それを機に起こるであろう日本が抱える大問題解決の借りを作るのにはうってつけの相手。100%あの事業にも一枚噛んでいるに違いないと天鐘は鳳月に秘密を打ち明ける目星をつけた。


「鳳月さん。自分、ビー玉の名称と利用方法を、とある事情(・・)で知っているんですが」

「それは本当か! 天鐘君!!」


 エサは今が旬、鮮度抜群の生資源情報。逃がさないように反射的に天鐘の肩を力強くつかむ鳳月総帥。


「えっとですね。ビー玉の名称は『魔魂水晶(ソウルクォーツ)』といい、魔力と魂の欠片、粒子を含んだ水晶でダンジョンモンスターが落とすポピュラーなアイテムの一つです。大きさは今はビー玉サイズですが、モンスターの強さによって大きさの等級も質も変わっていきます」

「ほう」


 それよりも続きの活用方法を早く教えてくれと鳳月は天鐘に催促した。

 

「利用するには一度マイナス三十度以下で凍結させてから、一気に千度以上の高温の火力で熱して個体から液体に変質させる必要がありますが、ごく少量でも今の資源エネルギーに大革命が起きるでしょう。更に驚くことに二酸化炭素が排出されることがなく世界に非常に優しいエコエネルギーになります」

「天鐘君。非常に魅力的な話を私にしてくれるが…………スカウトの件は承諾したと受け取っても構わないかな?」

「はい」

「たいへん素晴らしい! が、そうなると別の方面から問題が噴出することになるな」


 エネルギー産業に関わる人の仕事が奪われるので当然、それに対する雇用問題の改善が急務になる。リストラされ職を失った人達の受け皿として、新事業の資源開発機構の立ち上げを前倒しにして急ぐ必要性を天鐘との会話で感じ取った鳳月はスマホで連絡を入れる。


「私だ。鳳月だ」

「これはこれは! 総帥自らお電話とは! いったい何事でございましょう」


 会話の相手は声質からして五、六十代の男性で、ずいぶんと慌てている雰囲気。


「君に昨日はなしていた政府機関主導のダンジョンにおける資源開発機構発足のことなんだが、路線変更だ」

「と、言いますと」

「ある程度の資金ならこちらで都合をつける。だから計画をできる限り早めてくれないか」

「ッ! 見つかったのですね、お眼鏡にかなう人物が! 資源開発機構発足の件、委細承知しました。それである程度の資金――――幾分か期待してもよろしいでしょうか?」

「構わん。その代わり分かっているな?」

「はい。貴方様の力添えで首相に就任できたのですから、全力をもって事に当たる所存です」

「そうか。君の働きぶりに期待している」


 固唾をのんでハラハラと見守る天鐘。完全に学生如きが聞き入っていい会話でない。政府がこれから立ち上げるダンジョン専用の資源機構発足話を、鳳月の秘密の一端をまたしても知ってしまった。


「天鐘君。今の件に関しては秘密厳守を徹底してくれ」


 黙ってうなずくしかない天鐘。まだ国民に認知されていない国家プロジェクト級の話題。それを取り仕切る首相に指示する大権力者である鳳月に、一学生である天鐘が意見を言えるはずがなかった。


「では有意義な取引を終えたことですし、鳳月坊ちゃま。天鐘君の家に向けて出発します」


 老運転手の乾は平然と、何事もなかったようにリムジンを運転し車道に入る。

 数分間、他愛のない世間話をしていると天鐘の自宅である白い屋根が目印の二階建て木造住宅が見えてきた。

 自宅の前はご近所さん達が詰めかけて、マラソンランナーを応援するような一つの集団が道なりに出来上がっていた。


(あそこを通るのか……めっちゃ恥ずかしい…………)


 自宅の前に停車する高級車。乾運転手がドアのロックを解除する前に鳳月から待ったが掛かった。


「天鐘君」

「なんでしょう鳳月さん」

「このまま言わないでおこうと思っていたんだが、ダンジョンに詳しい君にだからか久しぶりに他人に対して興味が湧いた」

「はぁ」


 鳳月は黒いサングラスを胸ポケットに収め、素顔で天鐘と視線を初めて交わした。


「君たち生存者四名に『霊体視認』と『霊体アストラル言語』が確認できた。私は思うに多数の秘密技能を所持する天鐘君が伝授したのではないかと考えている」

「その通りです」


 天鐘の即答に鳳月は目を丸くした。


(この私に物怖じせずに正直に話すとは。それだけ彼に認められた、信用されたとみるべきか)

「それがどうかしたんですか」

「天鐘君…………どうか知っているなら教えてくれないか? 霊は存在するのか? 否か?」


 真剣な面持ちの鳳月の問いに、溜息を吐いて天鐘は答えた。


「残念ですが鳳月さんが考えているような、地球世界で生まれた霊? は視認、確認することはできません。ですがダンジョンで亡くなった霊体なら五分間だけ視認することが可能です」

「そうか…………まあ期待はしてなかったが」


 そこで鳳月は思考を巡らせ、次の一手に出た。


「四人が霊体系技能を所持していたことを勘案すれば……やはり……報告書にあったダンジョン沼の中で出現した新たな沼『神隠しの沼』に引き込まれた柊巡査の話はブラフか」


 この人は決して甘くないと天鐘は痛感した。

 若いながらも日本大企業のトップを走る総帥であり、首相や世界的カジノオーナーである、一日に三十億の収入を上げる人物と関わり合いがある大物。知らぬ存ぜぬで隠し通すのは難しい。


「私に真実を話してくれないか? 決して悪いようにはしない」


 ここではぐらかせば、国を挙げて守ると宣言してくれた鳳月を信用していないことになるが、所詮は口約束だ。

 この案件は無暗に他言していい内容ではないと天鐘は深く考えた。


「すみませんが――」

「私が思うに」


 天鐘の言葉を強引にさえぎり、鳳月は淡々と語りだした。


「PTメンバーだった柊巡査は君たちが善戦するも虚しく、もっとも死亡率が高い原因である小鬼に殺された。そこでとある経緯(・・)を経て四人に霊体系技能が宿り最後の別れを告げたんだろう」

「…………」

「違うか?」

「半分該当しますが、これ以上はたとえ鳳月さんでも、お答えすることはできません」


 自らの予想が半分当たっている。

 超直感で予感を感じた精度はほぼ十割を誇る。それが半分のみ。言い知れぬ感覚が鳳月に降りてきた。

 十中八九、誰も予期することができないクラスの非現実が絡んでいると鳳月は認識を改める。 


「わかった。その件に関しては天鐘君が話したくなった時に事実を打ち明けてくれればそれでいい。こちらから無理に問いただすことはない。それで構わないかな」

「そうしていただけると非常に助かります」


 満足が行く交渉に天鐘の肩の荷が下りた気がした。その時だった。


――――ドンドン!


 外からリムジンのドアウィンドウを強打する振動が車内に響いた。


「鳳月坊ちゃま。どうやらタイムリミットのようです」

「時間か」


 鳳月は乾運転手に指示してドアロックを解除し、天鐘はシートベルトを外してリムジン左側のドアを開け下車した。

 今までリムジンの防音によって阻まれていた、ご近所さん達の歓声に思わず腰が引け気味になる。

 体を捉まれ「ケガはないか」「ダンジョンはどうだった?」「魔法を授かったのか?」と質問攻めの最中に、天鐘の次に下車したサングラスをかけ直した鳳月が割って入る。


「皆さん、天鐘君はダンジョン攻略で疲労がピークに達しています。少しは彼の気持ちをんであげませんか? 親子水入らずを邪魔してはバツが悪いでしょう?」


 梅雨が明けて火照った体、ダンジョン熱気を冷ますように冷静な判断思考に戻る近隣住民達。また後日、話を聞かせてくれと他所に散らばっていく。

 やがて母と子を遮る者がいなくなり天鐘は、肩に触れる長さのふんわりミディアムヘアーを風で揺らしながら佇んでいる母親とご対面した。


「とおる。連絡が取れないから母さん随分と心配したのよ」

「ごめん母さん。ダンジョン内だと電波が遮断されて通話できなかったんだ」

「それで、そちらの方は?」


 天鐘の後ろに立つ偉丈夫の鳳月は懐から颯爽と名刺を取り出し「こういう者です」と天鐘母に手渡した。


「鳳月グループ。総取締役、鳳月雅人…………えっ! これってご本人様!?」


 横にいる息子が「そうだよ」と気軽に返すと「ふぅ」と額に手を当てて、天鐘母はその場に崩れ落ちた。


   ♤   ♢   ♡   ♧


 介抱を息子の天鐘に任せて鳳月を乗せたリムジンは首都高速を走行していた。


「霊体関係の話は追及しなくても良かったのですか鳳月坊ちゃま」

「ああ。今のところはあれで良いだろう。それ以上聞くのは野暮というものだ」


 バックミラーに映る鳳月の表情は明るい。運命の男と巡り合った果てにスカウトの成功。資源に関する極めて稀な、製造情報の提供を受けたためだろう。

 天鐘家からリムジンを発進させた瞬間にスマホで各地の権力者達にダンジョン産ビー玉の正体を打ち明け、世界的権威が集まる研究所や大手製造メーカー、『ダンジョン沼の秘密』を運営する知人もやる気で活気が満ち満ちている。


「さて、この情報の肝に気付いた者は世界に何人いるのだろうな乾」

「はて? 私目にはわかりかねます鳳月坊ちゃま」


 面白半分に尋ねる鳳月。返ってくる答えがあらかた分かっていると気持ちがいいものだ。


「やはり私の、超直感に狂いはなかった。天鐘君はダンジョン関連にて頭角を現すことになる」

「理由をお聞きしても」


 帰ってくる乾の問いかけが非常に気持ちいい鳳月。彼はしたり顔で運転している乾に語る。


「天鐘君の凄いところは三点ある。まず一つが遠隔魔法系の総数は統計で一割しか満たないレア職で、その中の希少職「サモナー」であること。二つ目に秘密技能を何種類も所持していること。最後の三つ目が私も驚いたことだが……聞きたいか乾?」

「是非とも」


 いい気分に浸る鳳月は自分のことのように話す。


「三つ目は現存するダンジョンでの成長レベル制限が15までのはずなのだが、どういうわけか天鐘君は15を突破しているんだ」

「それは凄い。それで鳳月坊ちゃま。天鐘君のレベルは?」

「聞いて驚け乾。天鐘君のレベルは16。初めてダンジョンに飲み込まれたにもかかわらずだ! 彼はたった五時間足らずの時間で一年以上ダンジョンで鍛錬している国軍より上位に位置する実力者ということになり、何らかの手段で獲得経験値上限の枷が外れている状態と読み解ける」


 興奮する主人の心情が己のごとく伝わってくる。車内のエアコンが利いているのに胸の奥が熱い。

 枯れ果てた童心が戻ってくるような不思議で気持ちの良い感覚を、乾運転手は感じ取っていた。


「私はサモナーを授かった人物を二人認知しているが天鐘君の件で条件が判明した気がする」

「条件ですか?」

「ああ。それは祖先が政をつかさどる御子をしていたという一点に尽きる。現に天鐘君の家系図を市役所で入手して遡ったところ三、四百年前に天鐘寺と神社が付近に存在していることを突き止めた。天鐘君を合わせた三人とも祖先は住職をしていて地域の一柱として江戸時代に都を守護していた記述も残存している。そして天鐘君の家系の記述は更に細かく記載されていた。そこには天鐘の天は天の川のことを指し、鐘は織姫と彦星の会える瞬間、時を告げる鐘を意味するのだそうだ。かなりロマンティスト向けの内容ではないだろうか」


 極めて稀有けうな習得条件。ロマンティックな話もあわせて乾運転手は空想する。


「素敵な苗字の由来ですが、サモナーの職を授かるにはちょいと厳しい指定条件ですな。いったい後の世界にサモナーは全体の何パーセントになるのか? その存在価値はお金では決して測れないでしょう」

「それを理解しているからこそ、初手で法外な報酬を提示する手は有効な手段となり得る。相手が社会経験が乏しい学生なら尚更なおさらだ。先ほど提示した十倍でも十分なお釣りがくるくらいだと私は考えているよ」


 目ざとく腹黒い。だからこそ初代鳳月グループ総帥である祖父に溺愛され、二代目の現役バリバリの父親から渋々譲り渡された次代総帥の座。

 現主人。三十路の三代目総帥の実力は本物で、父親が十年の歳月で成し遂げた業績を僅か二年で上回る有能さ。初代総帥が息子にさっさと引退して孫へ席を譲れと恫喝した現場が今でも鮮明に蘇る。


「鳳月坊ちゃま。天鐘君をこちら側に取り込めたのは本当に僥倖ぎょうこうでございますな」

「ああ! この調子ならこれから変わりゆく世界を纏める組織『百人委員会』の頂点に立つ十二星座の末席が私にも回ってくるかもしれない。今後は更に気を引き締めて精進することとしよう――――俺の後を、ついてきてくれるか乾?」


 乾運転手は間を置くことなく、前方の車間距離を把握しながら前を見据えて答える。


「私も初代総帥に命じられて付き添うのではなく、退職するまで自らの意志で鳳月坊ちゃまのお供をさせていただきます。ですから、何も迷うことはありません。鳳月坊ちゃまが持つ先天性の直感を頼りに突き進んでください。必ず、従業員一丸となって後に続きますので」


 幼少時から知り合い、二十年以上の長い付き合いによって育まれた信頼に置ける人の、心強い言葉に目頭を熱くした鳳月は「少し仮眠を取る」といい、サングラス越しにゆっくりと眼を閉ざした。

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