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吾輩は猫だから人類を支配している  作者: おーやま辰哉
7/13

-7削り節- おいまて魚屋、アンタが語るのかよ?!

本日は夜にも投稿いたします。

 それは昨年の梅雨の時期に起きた火災だった。

 近所でも家族思いと評判の旦那と美人な奥さん、小学生になったばかりの一人娘の3人家族が住んでいたんだ。

 火事の原因は放火でな、雨が降ってるというのに火の勢いは増すばかりで手が付けられ無いほど(ひど)かった。

 事件当時、旦那は仕事に行っていて、家に居たのは奥さんと学校から早く帰って来た娘だけ。

 火事に気付いて直ぐに逃げたから2人に怪我は無かったんだが、何もかも家の中に置いて来ちまったんだ。

 商店街からも火の手が見えたから、俺は嫁に店任せて見に行ったんだよ。

 自慢じゃないが野次馬根性は誰にも負けねぇ。

 現場につくと笹野(ササノ)巡査(じゅんさ)が声を張り上げていた。


「離れてください! 破片が飛んで来るかもしれないから離れて!」


 笹野巡査は赴任したての新米警察官だったが、当時から片桐(カタギリ)巡査部長と良いコンビだった。

 手際も良いし、指示も的確。真面目な警察官が来たもんだと商店街では噂になってた。

 その笹野巡査の後ろで奥さんと娘さんは抱き合って泣いてたのさ。


「ママぁ! ねこ(すけ)が……ねこ助が燃えちゃうよぉ!」


「ぬいぐるみならまた買ってあげる……買ってあげるからっ……」


 娘さんはまだ小学一年生だ。住む家や何もかもが燃えてんのは分かるけど、自分の大切なもんが頭から離れなかったんだろうな。

 母親は娘を優しく抱きしめてやる事しか出来ないし、見てらんなかったよ。


「片桐先輩……。自分、ねこ助探してきます」


「何馬鹿な事を言ってんだ! あの火、見えてんだろ!」


 予想外だったよ。

 笹野巡査は優しい奴だったが、そんな事を言い出す風には見えなかったからだ。


「恐らく子供部屋に当たる2階の部屋からはまだ火の手が上がっていません。隣の家から飛び移れる距離ですから火が回る前に回収可能な筈です」


「ドラマの見過ぎなんじゃねぇかお前は! 1円にもならねぇぬいぐるみに命張る気か? いいか、俺らの仕事は怪我人が出ない様に此処で人々を守る事だ」


 片桐巡査部長の言葉は正しい。

 勝手な行動をすれば消防士の邪魔にもなる、片桐巡査が止めるのは当然だ。

 それにぬいぐるみを救助したって褒められもしない。


「そうですね……。確かに僕の仕事は人々を守る事です……」


 笹野巡査は拳を握りしめていた。

 でも、そう呟いた声に諦めの色なんて無かった。


「……ならば! あの子の心も母親の心を守るのも僕の仕事です、1円にだって変えられないモノがそこにはあるんですよッ!」


 英雄思考っていうのかなぁ? 笹野巡査の行いは褒められたものじゃないだろうが、本気で人の為に何かをなそうとした人間の眼は強い。実際に見た俺が言うんだ、間違いないね。

 笹野巡査に想いをぶつけられた片桐巡査部長はそれ以上止めなかった。

 きっと責任を取る覚悟が出来たんだろうよ。っつーか片桐の野郎も熱くなってたぞ絶対。

 だから笹野巡査に近くにあったバケツの水をぶっ掛けたんだ。火の中入る時は水被るのがお約束だからな。

 まぁ、代わりに消防士が止めに入って大変だったんだぞ? 野次馬はみんな笹野巡査の応援に回って、消防士は鬼の形相(ぎょうそう)。母親と娘はそれ見て泣くのも忘れて困惑よ。


「片桐ィィ! テメェの部下だろうが、なに発破(はっぱ)掛けてんだボケがぁッ!」


「どいてくださいよ! 僕がネコ助を助けるんだッ!」


「ぬいぐるみですから! ぬいぐるみなんですからやめてください?!」


 そんな時だよ。

 アイツが……らいおんが現場に姿を現したのは。

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