第42話:先制攻撃
ついに140億DPがたまった。
これで戦力的には問題ない。
これでたとえ帝国解放戦線を大量投入してきても戦えるぞ。
俺はDPをどんどんオリハルコンゴーレムに替えていく。
次に攻め込む街は一体どこにするべきか。
うーん。
そんなことを考えた時、突然。
「ピーピーピー」
マスタールーム内にアラームが響き渡る。
嘘だろ……。
「なんですかこれは!?」
仕事の対価として渡した漫画をニヤニヤしながら読んでいたレイラもこれには勢いよく飛び起きる。
「侵入者だ。ダンジョン内に侵入者が入るとアラームが鳴るようになってる」
「え……!」
レイラが深刻そうな表情になる。
「慌てるな。すぐにモニターをつける。それにまだ敵の強さだって分かっていないんだ。レイラが最近やってくれてるダンジョンの拡張のおかげですぐにはダンジョンコアにまで到達しないしな」
俺はレイラを落ち着かせつつ、敵の強さを測るために、ミスリル加工ストーンゴーレム1体をとりあえず送って置く。
これでやられるなら大したことが無かったということで一安心だ。
だがもしすぐにやられることがあれば……。
「ついた!」
モニターが付くと、俺とレイラはすぐにモニターを覗く。
ダンジョンコアが無くなれば命を失う俺はもちろん、最初はいやいや部下になったのに今では現代娯楽の虜になってしまったレイラも必死だ。
最初は紆余曲折あった俺たちも、今では思いは一つ。
絶対にダンジョンコアは防衛する!
まあレイラが必死になってくれた経緯に関しては、少し思うところはあるが。
侵入者は5人か?
よし、そこの通路を右に曲がればミスリル加工ストーンゴーレムが待っている。
まずはお手並み拝見ってところだ。
「ま、マズいです……!」
映像を見ていたレイラが突然大きな声を上げる。
「なんだ、どうした?」
「これは要注意人物のレイリーン・エル・ザナクロン。聖八柱と呼ばれる帝国の最高位貴族にして帝国解放戦線の4代目代表を務める、私が前に危険だと言った人物です!」
レイリーン・エル・ザナクロン?
あ……!
一騎当千とか言ってた化け物か!
それが本当だとするとミスリル加工ストーンゴーレム1匹じゃとても足りそうにない。
「他にも元帝国最強の冒険者や、騎士王という異名を持つ構成員もいますよ……!」
化け物は1匹じゃないってか?
ふざけやがって……。
ミスリル加工ストーンゴーレムと侵入者たちが交戦する。
侵入者の姿を捉えたミスリル加工ストーンゴーレムが拳を振りかぶって殴りかかろうとすると……。
先頭の大剣を持った大男が一閃。
何が起こったかしばらく理解できんかったが、ミスリル加工ストーンゴーレムが、まるで豆腐を切るように両断されていたのを見て、俺は気が付いた。
これが帝国解放戦線で最も強い男の実力なのだと。
「ま、マズいですよ……。このままじゃ数時間後にはこのダンジョンは……」
「分かってる!」
俺はいら立ちを含んだ声で一蹴する。
くそ、ヤバいヤバい。
オリハルコン―レムは100体あるが、こんな化け物相手にオリハルコンゴーレムで何とかなるだろうか……?
取り敢えず今は、いくら死んでも被害のあまりないミニアイアンゴーレムを大量に送り込んで、時間を稼いでいるが、あの殲滅スピードだと間違いなくあと1時間で手持ちのミニアイアンゴーレムが尽きる。
何故ならDPが足りても俺の製作スピードが追いつかないからだ。
俺が1秒に1体作るのに対して、やつらは1秒に3体ぐらいを屠っていく。
差は圧倒的だ。
数時間前までは余裕だったのに今は立場が逆転している……!
追いつめられる。
ここまで成長したのに、今一番俺は命の危険を感じている。
残された時間はあとわずか。
生き残るために俺は必死に起死回生の策を考え始めたのだった。




