第33話:帝国解放戦線
帝国解放戦線の連中との戦闘を終え、死体を森の中に投げ捨て終わると、俺はすぐに帰還した。
これから戦争を始めるというのだからのんびりしている時間はない。
まずは帝国解放戦線についてレイラから聞き出そう。
「おい、レイラ、いい加減に正気に戻れ」
俺は拷問を始めてからずっと上の空と言った様子のレイラを叩く。
「はっ……。す、すいません」
「いいから早く帝国解放戦線について教えてくれ」
貴族なら国の情報については詳しいはず。
レイラならこの組織について何か知っていてもおかしくない。
「帝国解放戦線ですか? それなら少しは知っていてますよ。……弟が所属していたので」
なるほど。
貴族も長男とかなら大切にされるだろうが、三男、四男となってくると、家から出なくてはならないのかもしれない。
少なくとも長男ではなかったはずだ。
まあそんなことはどうでもいい。
「この組織は武芸に秀でた貴族が中心となって組織された帝国の秘密組織です。構成員には腕の立つ冒険者がほとんどです」
冒険者もか。
まあ実力者は少しでも国で囲い込みたいということだろう。
身分などは関係なく。
「そしてこの組織は基本的には普段はダンジョンの討伐が主ですが、戦争にも駆り出されますし、国内のごたごたでも動きます。つまり何でも屋です」
へー、国が持つ超精鋭部隊って感じね。
まあなんとなくは分かった。
やはり戦争をしかけるために国が偵察として送ったのは間違いなさそうだ。
「なるほど、ありがとう。あと二つ聞かせてくれ。構成員は全部でだいたいどれぐらいなんだ? そして最も腕の立つ奴の実力は?」
「一つ目の答えは、ざっと300人ほどですね。これは2年前の話なので今はもっと多いはずです。二つ目の答えについては、帝国解放戦線.No.001第五位階戦士レイリーン・エル・ザナクロン。通称『閃光王』と呼ばれる男がいて、その実力は、比喩ではなく一騎当千。彼は常に最前線で敵を閃光の速さで切り殺し、戦場に一本の道を作ると言われています」
は?
比喩ではなく一騎当千はやばいだろ……。
そして他にもそいつには及ばぬものの、それに近い力を持っている者が数名。
今日の連中ぐらいの実力者がゴロゴロ……。
勝てるのか……?
いやいや、落ち着け。
再び400万以上のDPがたまっているんだ。
オリハルコンゴーレムがまた10体作れる。
それにまだ開戦までは時間があるはずだ。
DPはさらに増える。
とにかく戦力差は心配していても仕方がない。
まずは戦略を考えよう。
「なぁ、レイラ。トリニの街近辺の地形とか知ってたら大雑把でいいから地図に書いてもらえないか?」
そういって俺はA4のコピー用紙とボールペンを手渡した。
「ここらの地形ですか? 分かりました」」
そういってレイラはすらすらと神に地図を描いていく。
なるほど。
帝都はトリニの街から見て西にあるのか。
俺のダンジョンはトリニの街から見て東にあるから帝都は真逆だな。
そしてトリニの街の西側には標高の低い山が立ちふさがるようにそびえたっている。
帝都からトリニの街に来るにはこの山を登らなきゃいけないわけか。
「ふふ、今回の戦略を決めたぞ。今回はこの山に陣取る。野戦だ!」




