第27話:苦労の果てに
レイラがモニターをつける。
するとモニターからは罵声の嵐が飛び出してきた。
うん、ほんと人間って酷いね。
自分の不幸をレイラのせいにするなんて。
まあそうなるように仕組んだ俺が一番最低何だけどね。
がっつりモニターの音声は聞こえるが全く聞こえてないフリをして、彼女の声に耳を澄ませる。
さぁ、はたして反応は……。
「え……。嘘。なんで……。みんなそんなことを……!?」
うんうん、ショックで茫然としているね。
よしよし。
「ど、どうしたんだ!?」
俺は純粋にレイラの様子に困惑しているような様子を装ってレイラに話しかける。
「う、うるさい……!」
そう怒鳴りつけると俺を押して跳ねのけようとする。
だが契約内容の『俺の不利益になる行動を禁ずる』が働いて見えない何かに阻まれる。
よしよし、かなり精神的に追い詰められてる状況だ。
この機を逃さず一気に説得だ。
「これは……酷いな……。ずっとこんな風に思われてたのか……」
俺は笑いをこらえて悲しげな声音で演技をする。
「そんなはずは……!」
レイラは強がっているが、実際は俯いて涙を流している。
うんうん、ちょっとだけ罪悪感がわいてくるけどやめないよ。
こんなことでやめるぐらいならこの世界で人を大量に殺したりなんてできないだろうからね。
俺は真剣な表情を繕って……。
「なぁ、俺もここまでだとは思わなかったが貴族の女性への世間の風当たりは厳しいと聞いた。お前にこれまで居場所はあったのか……?」
「それは当然……」
レイラは「あった」と続けたかったのだろう。
だが、今回の事で身の回りの人間に対して疑心暗鬼になってしまった。
今まで優しくしてくれていた家臣、父親、どれも嘘だったのかもしれないと思っているのだろう。
「無かっただろう。そしてこれからも無い。政略結婚の道具に使われてより一層辛い日々が待ち受けているだろう。だが俺は絶対にそんなことはしない」
「うるさい、そんなことは……」
レイラは激情に任せて怒鳴りつけようとする。
だが俺はそれ以上の大きな声で……。
「選べ!」
と一言。
彼女はビクッと驚いたようにこちらを見る。
俺はこの機を逃さない。
「俺は悪だという先入観に捕らわれて死ぬか、俺に協力して未来を掴むか!」
俺は単純な2択を突きつける。
レイラは数秒悩む素振りを見せる。
その果てに出した答えは……。
「ちょっと……考えさせて……」
おお!
いままであんなに頑なに俺を嫌ってたのに考えさせてというのは大きな進歩だ。
だがダメだ。
ここで考える時間を与えたら冷静になってしまう。
今は精神的に弱っている状態だから勢いに任せた俺の究極の2択に勢いに乗せられて答えてしまった。
だからここはまだ精神的に弱っている今決着をつけなきゃいけないんだ。
「ダメだ! いつまでも選択を先延ばしにして何になる! この選択、悩むことに意味はない!」
なんか色々臭いセリフだが、もう勢いでなんとかしよう。
うん。
彼女は再び俯く。
「…………いいでしょう。さっきのことで、今までの私の価値観は崩れました。私は悪魔であるあなたに魂を売ってでも生き延びることで、彼らへの復讐とします」
おおー、うんうん、よかったよかった。
協力してくれるんなら悪魔呼ばわりされようと構わないよ。
こうして俺は、数時間の苦労の果てに、レイラを部下とすることに成功したのである。




