第23話:虐殺
2話目は10時ごろに。
『エレベーターストーンゴーレム! 起動!』
俺は新たなる罠を起動する。
突然現れた石壁に足を取られた騎士たちが起き上がり慌てて休憩所に入ろうと体を起こしたのと同時に、また眼前の床が飛び出るようにせり上がり、分厚い石壁が休憩所への道を塞ぐ。
すると石壁の表面が突然パリン、と割れ壁の中に隠しておいた100体のミニアイアンゴーレムがあふれ出てくる。
「く、クソッ! こんな罠まで!」
しばらくすると石壁はなくなり元の床に戻った。
エレベーターが下がっていくかのように。
よし、これで完璧に分断に成功。
先に休憩所に入った普通の騎士連中はこの休憩所に封じ込めてDPのも供給源になってもらおう。
ずっと餌としてこっそり食料を与え続けていたらいつかは怪しむかもしれないが、その問題はいずれ何とかしよう。
最悪死んだって変わりは効くんだ。
今はこの厄介な騎士団長と近衛騎士を始末するんだ。
そしてこの女の子は奴隷にしよう。
いや、別にやましい目的で使う訳じゃない。
もちろん見た目は中々にタイプだったが、本当に違う。
おそらくこの防衛戦が終わったら、DPの供給源も大量に手に入れたので侵略戦争を始めることになるだろう。
今までずっとダンジョンを運営しながら人々を殺戮してきたが、そもそも邪神様の目的はこの世界の人類を一匹残らず駆逐して、この世界の神に反逆すること。
だったらダンジョンを飛び出して世界の国々を滅ばさなくてはならない。
そうしてこれから俺の行動のスケールはどんどん大きくなっていくわけだ。
となると俺1人では魔物を率いるのは大変だろう。
忠実に俺の命令に従ってくれる上に、自分で思考してくれる部下が必要だ。
クリエイトゴーレムで作ったゴーレムは、人殺せと命令すれば言われた通り見たすべての人間を殺すだろう。
だがゴーレムは命令したことしかできない。
殺せと言われれば、雑魚冒険者だろうと勇者だろうと作戦もなくただ殺そうとするだろう。
それではダメだ。
俺が求めるは殺せと言えば、自分で殺し方の作戦を考えてくれる部下。
ならば命令で自由を縛れて、なおかつ元人間である奴隷が一番いいのだ。
まあ実際は10万DPで買える隷属の首輪を使えば誰でも奴隷化できるので、目の前の彼女にこだわる必要性はない。
というよりもっと優秀な騎士団長とかを奴隷にした方がいいだろう。
だがむさくるしい男など100害あって10利ぐらいしかないからいやだ。
こういったところは自分の欲が入っているのは否定できないが、そこは許してほしい。
あと、それ以外にも話し相手は欲しいというのもある。
邪神様は一応話し相手ではあるが、実際にいるのは冥界なんて言うよく分からない場所。
そばにいるわけじゃあないのでなんだか会話をしているという気がしない。
俺は地球にいたころはボッチという訳じゃないが、人付き合いは面倒だと思うような人間でだった。
だが、この世界に来て一週間以上。
人間とこれだけ話さない日が続くと、流石に少しは寂しいものだ。
ということで女の子には悪いが、奴隷にさせてもらう。
待遇はよくするつもりだ。
無理やり従わせるんだから、細かいところで優しくしていかないと、全く仲良くなれない。
優しく接して、すこしづつでも打ち解けるようにしていきたい。
そしていずれは……ムフフ。
い、いやいや、別にやましいことは望んでいない。
望んでいないんだからね!
さて、そんな妄想を頭の中で繰り広げているうちに戦闘が始まった。
いや、戦闘とは言えないだろう。
眼前には数に物を言わせたミニアイアンゴレームがやりたい放題と言った様子で近衛兵を嬲っていた。
騎士団長もミスリル加工ストーンゴーレムで手一杯で、前からも後ろからもやってくるミニアイアンゴーレムをさばけない。
これはもう……虐殺だ。
「おい! 休憩所から出てきてこいつらを討伐しろ!」
切羽詰まった騎士団長が休憩所の中で青ざめた表情でこの惨劇を眺める騎士たちを怒鳴りつける。
だがこの状況で騎士団長たちを助けようとするものなど皆無だった。
『ミニアイアンゴーレムとミスリル加工ストーンゴーレム! 真ん中の女は殺すな』
俺は命令を出す。
そしてほどなくして虐殺は終わった。
残っていたのはミニアイアンゴーレムの大群と、ミスリル加工ストーンゴーレム。
そして真ん中で守られていた貴族の女の子ただ1人であった。




