第20話:騎士団
ようやくヒロインが登場しました。
実は元々は冒険者軍団侵入時に登場させるつもりだったけど、作者がヒロインは貴族がいいなぁ、とツイッターで回って来たある絵師の画像を見て思ってしまったので気まぐれでこんなに登場が遅れました。
侵入者の姿がマスタールームのモニターを見つめる俺の眼に映る。
フルプレートアーマーを着た騎士がしゃがしゃと音を立てダンジョンの前に次々並ぶ。
その数ざっと見ただけでも300は超えている。
冒険者の時とは桁が違うな。
だが問題はない。
こっちも冒険者から予定通りの量のDPを搾取したおかげで前回とは桁が違う量のミニアイアンゴーレムや罠を用意できている。
この世界の騎士団のレベルがどれぐらいか分かっていないから勝利を確信することはできないが、勝算は十二分にある。
すると、綺麗に整列した騎士たちの後ろの方から1人の貴族らしき女性が出てくる。
年は15、6くらいだろうか。
ほっそりとした体に大きすぎず控えめすぎずの胸。
身長は女性にしては高く、どこか気品の高さを感じる。
長い銀髪をたなびかせて歩く彼女は非常に俺好みだ。
だが、まぁ目の保養には非常にありがたいのだが、正直言って彼女が戦えるとは思えない。
何故なら腕は細く、いかにも温室育ちな感じだし、なにより腰にレイピアらしき武器を下げているが、下げたレイピアが足に当たったりしていかにも武器を携帯した経験が無さそうな歩き方なのだ。
何故そんな彼女がダンジョンなんかに来るのだ……?
『お前の思っていることは大体わかるぞ』
急に頭の中に邪神様の声が響く。
「うおっ!」
最近話しかけてこなかったから邪神様の事を忘れていた。
『何故あんないかにも戦い慣れしていないような女がここに来るんだ、と思っているんだろ?』
すげぇ。
彼女を見つめていただけでそんなことまで分かるなんて。
神様の第六感みたいなものだろうか。
『それはな、この世界の貴族はダンジョンを討伐するのが使命だからだ』
そうなのか。
「ですがそれとこれとがどう関係あるんです?」
『まあちゃんと話すからそう慌てるな。いいか、この世界はいつの時代もダンジョンに平和を脅かされている。ダンジョンは力をつけると魔物をダンジョンの外に送り出して地上を侵略しだすからだ。そのためこの世界ではそんなダンジョンを討伐できる力を持ったものが貴族となる』
なるほど。
つまりダンジョンを討伐できる人間は英雄となり、貴族に列せられるのか。
それで貴族の使命はダンジョン討伐と。
『だがこの世界ではそれと同時に男女差別がひどくてな。貴族の女は政略結婚の道具としか使われていないのだ。だから基本的にこの世界に戦える貴族の女はいない。だが女も一応貴族だからな。偉くはある。だからこうしてダンジョン討伐の指揮を取るのさ。指揮を執ると言っても本当の指揮官の作戦を聞いてそれをそのまま命令するだけだがな」
なるほど、ダンジョン討伐はこの世界では重要なことだから貴族家の人間をおかざりとしてでも総大将に立てて大々的に討伐しようってことか。
可哀そうだな。
そして彼女は全員の前でなにやら兵士たちを鼓舞しつつダンジョン侵入の前の口上的なものを述べた。
「それでは、突撃しなさい!」
彼女の言葉と同時に騎士たちがダンジョン内へ入って来た。
しっかり隊列を組んで通路に入っていく。
「ところで邪神様、この世界の騎士団の強さってどれぐらいなんですか?」
『安心しろ、基本の騎士の強さはこの前の冒険者よりちょっと強く、連携も高い程度だ。騎士団長はちょっと強いが、お前の準備したあのミスリル加工ストーンゴーレムをぶつければ問題ない。それにいざとなればお前にはミスリル加工ストーンゴーレムより強いゴーレムがあるしな』
そういって邪神様は嬉しそうに黒い笑いをこぼした。
さて、それじゃあ邪神様に勝てると言われて一安心したところで、でも油断せずに迎え撃ちますか。




