第19話:えさやり
冒険者たちがやってきて2日が経った。
休憩所内の雰囲気は非常に悪く、昨日からずっと『一か八か外のミニアイアンゴーレムを倒して脱出を狙う』強硬論と『食料を大切にしてミニアイアンゴーレムが動くのを待つ』慎重論に分かれていた。
外にいるミニアイアンゴーレムは四方にそれぞれ30体を超える量を配置してあった。
少しづつ俺が作成して送っているから現在は50匹を軽く越しているだろう。
それに彼らの頭の中には小棘球ストーンゴーレムの悪夢がトラウマとなって彼らの決心を揺らがせているだろう。
俺も正直無理にここから脱出しようとしても冒険者に未来は無いと確信している。
冒険者たちが死んでは俺も彼らもどちらにとっても害しかない。
まあ慎重論をとったとしても彼らの未来など全くないが。
とはいえ100%が無いのがこの世界。
脱出できる未来は0.1%ぐらいはあるかもしれない。
時間が経ち、食料が減るにつれて強硬論が取られる可能性が高まっていく。
もう少し待つか。
俺は黙々と1人悲しくミニアイアンゴーレムを作り、この日は終わった。
そして翌日、休憩所の中では……。
「おい、このクソ人形共永遠に動かねぇぞ! このままここにいても埒が明かねぇ。餓死するだけだ! 戦うしかねぇだろ!」
ガタイがよく、いかにも重戦士といった印象を受ける男が立ちあがり、他の冒険者に語り掛ける。
「そうだそうだ!」
この男の仲間と思われる者たちも立ち上がっていきり立つ。
「それはそうだが……」
うーん、困ったな。
だんだん冒険者たちが乗り気になり始めた。
残る……手段は……。
俺は冒険者たちの持っている食料を適当にDPで購入していく。
全部で200DPぐらいなので、大した出費ではない。
その購入したものを休憩所の冒険者たちのカバンの中に転移させる。
後数秒は待ってくれるといいが……。
「分かった。じゃあ行こう!」
慎重論のグループのリーダーらしき男がついに折れる。
クソ、ダメか。
ここでこの冒険者が死んだら獲得できるDPが……。
「だが飯を食ってからにしよう……」
「……うーん、た、確かにそれもそうだな。腹が減っては戦は出来ぬってやつか」
おお!?
なんか全員座り込んでカバンをあさり始めたぞ!
まさかのどんでん返し。
なんとか助かったか。
後はカバンの中に入っている食料を見て気が変わってくれるかどうか……。
「あれ? なんか食料が思ったより多く入ってたぞ!」
「俺も……」
次々と食料が多く入っている事に気が付く冒険者たち。
よしよし、食料があるんだからもう少し待つよね。
わざわざ死に急ぐことはないよ。
「うーん、やっぱりもう少し待とうぜ……。一か八かに賭けるのは食料が無くなってからにしよう」
「それも……そうだな……」
こうして俺は冒険者の命を守ったのである。
さて、とりあえず騎士団が来るまではこいつらに定期的にえさをやり続けないとな。
別にこのダンジョンでの生活は暇だしえさやりは大変ではないのでいいが。
さて、俺もさっさと騎士団の襲来に備えて準備を進めないとな……。
DPはまだかなり余っている。
こうして俺は次の日も、また次の日もひたすらミニアイアンゴーレムを作り続け……。
ついにその日はやってきた。




