第0話:プロローグ
次回作の書き溜めがまだできていないので息抜きと繋ぎを兼ねて見切り発車作品を投稿します。
内容はかなりテンプレ的なダンジョン運営系の話です。
初日のみ3話投稿で、後は不定期です。
短期連載を予定していますが、人気が少しでも出れば長期連載にするかもしれません。
今日は8時、9時、10時ごろに1話づつ投稿します。
※見切り発車なので速攻エタる可能性が高いです。ご了承お願いします。
ここは冥界。
辺りはかなり暗く、静寂に満ちていて、物音と言えば時折吹く生暖かい不気味な風の風切り音くらいだ。
そして灰色の雲ばかりの空の遥か彼方には雲間から爛々と輝く赤き月が覗いている。
そんなつまらない場所に住んでいるのは邪神という、天界から追放された元神である。
彼らは天界の掟を破り、他の神々の逆鱗に触れてこの何もない地に封印されたのである。
そんな監獄の様になこの地に、今また1人の神が姿を現した。
「おーい、ちょっとおもしろいことをしないか?」
その声に、他の周囲にいた邪神は覇気の無い目でそいつを見つめる。
そして周囲の死神のうち1人がその者に話しかける。
「俺は神だよ。天界を追放されたわけじゃない。自らこっそりこの地に降りてきたんだ。ある物を持ってね」
神を名乗る者は言う。
「ある物だと?」
話を聞いていた邪神は訝し気な表情で尋ねる。
どうせくだらないことだとは分かっていたしこの神を自称する奴の話を真剣に聞いていたわけではなく、話半分どころか話1割くらいしか聞いていなかった。
退屈なこの場所でほんの少しでも面白い話を聞ければいいと思っていたのだ。
だが、この自称神の持ってるものを見た時、その表情は一瞬で変わることになる。
「これだよ」
自称神は懐から何かを取り出す。
「これは……。何かの魔法陣か? それにスキル宝玉が2つも……。後は通信の鏡か」
自称神が持ってきたものを喜色の含んだ声音で物色を始める邪神。
「なんだなんだ?」
その姿を見た他の3人の邪神も何事かと野次馬のノリでやって来た。
「しかし一体これをどうしろと言うんだ?」
最初に自称神と話した邪神は尋ねる。
すると自称神は心底楽しそうな表情で話し始めた。
「その魔法陣は異世界召喚の魔法陣で、そのスキル宝玉は何のスキルか分からないけど多分よさげなスキルだよ。あんまり天界の宝物庫をあさってるとバレそうで怖かったから適当に持ってきちゃったけど。だからさ、これらを使ってあの神々の守護する人間界を荒らしちゃおうよ。君たちも君たちを追放した神が憎いだろう?」
自称神たちの話を聞いた邪神たちは最初は驚きの表情を浮かべていたが、少しづつその表情は凶悪な笑顔に変わっていった。
彼らも追放された当初は怒り狂って憎しみの心を抱いていたが、何年もここに閉じ込められるうちにその怒りの炎も消えてしまった。
しかしこの自称神の話を聞いて、怒りの炎がメラメラと再び燃え始めたのだ。
その様子に満足な自称神をニコリと笑って言った。
「それじゃああまりここに長居していたら怪しまれちゃうから俺は行くよ。後は君たちで何とかしてくれ」
その言葉に、邪神は言う。
「最後に聞かせてくれ。何故俺たちにこんなことをしたんだ?」
その言葉に対して、自称神はこう言った。
「簡単だよ。俺がこの無限の生と変わらぬ日常に退屈だったからさ」
ここは地球。
しん、と静まり返った住宅街。
真冬の18時ごろだというのに、沢山の街灯が並んでいるせいで暗さを感じさせない。
そんな場所を1人の少年が歩いていた。
少年の名前は黒井 心。
都内でもそこそこ偏差値の高い高校の1年生だ。
テストの学年順位も高く、過去4回のテストで2桁以下を取ったことが無いというエリートぶり。
その上運動神経もいい方だ。
スポーツは基本的に何でも人並み以上にこなせる。
顔もいい。
整っている顔のパーツに細身で筋肉質な体つき。
おまけに長身。
天は二物も三物もこの少年に与えた。
だが完璧な人間などこの世にはいない。
この少年にも欠点はあった。
それは性格が非常に悪いのだ。
いや、性格が悪いというか狂人としての一面をのぞかせているとでもいうべきだろうか。
とにかく非常に自己中心的で、他人の不幸を望んでいる。
そして今、少年は退屈していた。
この法律の整った平和な地球では、少年の歪んだ心を満たすことはできない。
「はぁ、退屈だ。もっと他人の不幸を見たいなぁ」
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