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僕とハニーの愛の争奪戦争

作者: 怪ジーン

「みつる、みつる! とうとう明日だな!」


 身長190cmは越えているだろう同い年位の男が僕の名前を呼ぶ。

明日? 明日は、確か大晦日だけど、何かあったっけ? ああ、そうか。笑ってはいけない25時があるな。


 いやいや、わざわざこんな所に言いに来る筈がない。

大体、この人誰だ?


「明日? 明日何かあったっけ? えーっと……」

「何!? まさか親友の名前を忘れたのか? おいおい勘弁してくれよな、ベイベー。この練鳥(ねっとり)サマを忘れるとはな」


 親友? 僕の? こんな人が? 大丈夫か、僕。

大体この人、頭に猫耳生えてるし。

しかも、着ているブレザーが小さ過ぎて短ランになってるし。


「えーっと、その練鳥(ねっとり)さん、明日って大晦日以外に何かあったかな? もしかして黒白歌合戦?」

「はっはー! 何、改まっているんだいブラザー。いつも通りハニーって呼んでくれよ?」

「呼ばねーよ!!」


 呼びたくねーし、呼んだこともねーよ!

いや、本当に誰だこの人?

困った子猫ちゃんだな、やれやれって顔して両肩をすぼめているけど、米国の方ですか? 黒髪、黒目なんですけど。

大体、人の事をベイベーだの、ブラザーだの、みつるだの……あ、最後のはいいのか。

 

「そ、それで、大晦日に一体何が?」

「Oh! 忘レテマシータ。大晦日ハ学園デ行ワレル『充争奪戦決勝』デース」


 なんで、片言? いや、それよりも僕を争奪? しかも、決勝? いやいや、予選やったの? 大体、それ参加者いるの? って、決勝まであるのだから居たのか……いや、誰よ? 参加者!


「へー」

「おっと、そんなに気になるのかい? まぁ、当然だ、ね!」


 最後に練鳥(ねっとり)ウインクが僕に襲いかかってくる。

避けろ、避けるんだ、充! 食らったら最後だぞ!

咄嗟に上体を反らし、回避に成功する。


「詳しい事は当日ライソで教えてやるよ。じゃあな!」


 練鳥(ねっとり)が、部屋から出ていく。

……ちょっと、待って! ライソで送るって、どうして僕のライソを……


 机の上のスマホが震えだし、僕に着信を伝えてくる。

まさか、と思いつつも恐る恐るスマホを見るとライソに一通の通知が……


ハニー>じゃあ、当日楽しみにしていてくれ!


 登録されてるー! しかも、ハニーで。思わずスマホを叩きつけそうになる。

いつの間に……いや、もしかして本当に親友なのか?

 自分の記憶に不安になりつつも、当日を待つしかない。いったい誰がでるのだろうか?


◇◇◇


 大晦日当日の夕方。

僕の隣のテレビでは笑ってはいけない25時が始まっている。

毎年恒例の効果音と共に尻を叩かれる人たち。

未だに練鳥(ねっとり)から連絡はない。

もう夕方だし、終わったのかなと、安堵した途端にスマホが震えだし、ライソの通知が来る。


ハニー>おっはー。もうすぐ始まるぜ、ここで出場者の発表だ!


 おっはーじゃねーよ。もう、夕方だよ。

出場者がわかることよりも、まだ始まっていない事に驚きを隠せない。


 年、越しちゃうぞ。


ハニー>まずは、ベイベーの幼なじみの(そら)ちゃんだな。同じクラスの。


 僕の幼なじみ……あ、写真がある。

とても目鼻立ちはハッキリしているのに童顔だな。

中学生に見えるや。小動物系の可愛い子だ。


ハニー>続いては、我等がアンチリア学園の生徒会長かマドンナの悦橋先輩だ。


 なんだよ、生徒会長かマドンナって!

どっちかにしようよ。いや、そこは兼任しようよ! って、また写真。

おおっ! これは美人だ! 腰まである黒髪の眼鏡美人。知的な雰囲気もあるし、ザ・生徒会長って感じがする。


ハニー>そして、我等がアンチリア学園の女王様。真昼先生だ!


 は? うちの学校いつから王政に変わった? というより、先生出てるって教師公認なのかよ!? 僕の争奪戦。

写真、写真。おぉー、スタイルいいし、足長ぇ。

白衣を来ているってことは、保健の先生か?


ハニー>ラストは、俺の大本命! 珠ちゃんだ!


 あれ? 名前だけ? あ、写真来た来た。……おおおっ! 美少女だ! 金髪美少女だ! 外国の人か? 青い目をし、て、いる、し…………あ、この子、男だ──男の娘か。喉仏がある。


 一体このメンバーで何が行われるのやら。


◇◇◇


 あれ? 連絡してこなくなった。

外は暗く、テレビは笑ってはいけないから、驚いてはいけないに変わっている。


ハニー>さぁ、そろそろ準備はいいかい? 始めるぜ!


 驚いたよ! 今からかよ! 確実に恒例の効果音と共に「充、アウト~」って言われてるよ。

大体、準備もくそもないんだけど。

しかし、僕はここに来て一つ疑問が浮かぶ。


ハニー>決勝はラブレター対決だ! 充への愛を書いてもらうぜ!


 ラブレター……恥ずかしい。

めっちゃ恥ずかしいんだけど! 愛って~~!

だけど、それ以上に気になるのがハニー……じゃなかった、練鳥(ねっとり)だ。

ライソしながら、司会をしてないか、こいつ。


ハニー>司会なんてしてないぜ! まず書き終えたのは生徒会長かマドンナの悦橋先輩だ。


 なんで、返事してんだよ! エスパーか?

あ、画像がご丁寧に添付されてきた。どれどれ……


「充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。充くん愛してます。文字数」


 怖えぇぇ! コピペか!? しかもなんだよ、最後の『文字数』って……あっ、気づいてしまった。

一、二、三……百四十文字。ただの、つぶやきじゃねーか!


ハニー>続いては、幼なじみの(そら)ちゃんだ。


「二〇一九年一月一日、二人は付き合い始める。二〇一九年一月三日、初キス。二〇一九年一月四日、プロポーズする。二〇一九年一月五日、婚約指輪を購入の為にマグロ漁船に乗る。二〇二〇年一月一日、日本に生還。二〇二〇年一月二日、再びマグロ漁船に乗る。二〇二〇年……」


 予定が細けぇ! そして、プロポーズまでが早ぇよ! 約一年間マグロ漁船乗って、休み一日も無え!

しかも、生還って! 具体的過ぎて怖いよ。


ハニー>おっと、次は同時に書き終えたみたいだ。まずは、俺の大本命! 珠ちゃんだ!


「あ、あの……どうして、僕がここにいるのか……友達に『出てみたら?』って勝手に応募されて……と、取り敢えず頑張ります」


 他薦かよ! 断ろうよ、そこは! 頑張らなくていいよ!

でもさ、さっき送られてきた写真、凄くカメラ目線だよね?

意外とノリノリだよね!?


ハニー>ラストは、真昼先生だ! えっ、いやだから、それは……


 なんで、ライソ上で向こうでの会話を送ってくるんだよ。


ハニー>え? 一八歳未満閲覧禁止? いや、だからそこをなんとか? え? 取り敢えず送り付けとけばいいって?


 だから、向こうでの会話をライソで送ってくるなよ。あ、画像が来た。大丈夫かな?


「充くんをピーして、ピーすることで、ピー、ピー言わせて、ピーをピーに挿したい。ピーもして、ピー、ピー言わせて、ピーをピーーーーー」


 うぉい! とんでもないもの送って来たよ。

十八歳未満閲覧禁止ばっかりだよ!

だいたい、僕、十七なんだけど。


 一人除いて、僕への愛が怖いよ。

スマホがライソの通知を知らせてくる。


ハニー>やったぜ、ハニー! 一番と三番にポイントが入ったぞ。


 ハニーは、お前じゃないのかよ!? いや、それでも困るけど。

大体一番と三番って、誰だよ!? というか、あのラブレターにポイント入った事を考えた方が怖いよ!


 そして、僕はとうとう途中で気づいた事実を口にする。


「僕の争奪戦に、僕以外の誰が審査してるんだ!」


ハニー>は? カイジパイセンに決まってるだろ? 今年四十三歳の子供三人いる会社員の。


 知らねーよ! パイセンって、OBにも程があるわ! しかも僕と全く関係ない人だー! あと、会話するなよ! どっかで見てるのか!?


◇◇◇


ハニー>さぁ、残りは一番と三番の同点決勝だ。これで決着だ。心の準備もバッチリだ!


 だから誰だよ、一番と三番って。そして、心の準備するのは、お前じゃなくて僕だ。

テレビには笑ってはいけない二十五時のクライマックスの大爆発が起きている。


 あーあ、年、越しちゃったよ。


ハニー>ラストは、エピソード対決だ。どっちからいくのか? おおーっと、(そら)ちゃんだ! 流石、幼なじみ枠。エピソード沢山ありそうだ!


 一番と三番のうち、一人は幼なじみの子らしい。

また送って来てくれるのか? さっきは画像ですんだけど、今度はどうするのだろう? 

スマホの通知がライソだと教えてくれる。


ハニー>(そら)エピソード……幼い頃結婚の約束をしたのです。「大きくなったら、結婚してね」って、そしたらこう言ったんです「あー、面倒だけど考えとくって」、私が。


 逆ーっ! 普通逆でしょ!? 結婚してねって言ったのは僕かい。

しかも、面倒って言ったのに何故参加してるの、この子。


ハニー>続きだぜ。(そら)エピソードⅡ……だから決めたんです。私からプロポーズしようって。婚約指輪を購入するためにマグロ漁船に乗ろうって。


 マグロ漁船乗るのお前かーい! どれだけ僕の事好きなの? 

いや、それよりも幼い頃の約束から、マグロ漁船乗ろうって決意する間に何があった?

それを話そうよ。


ハニー>続いて、珠ちゃんだ! くそぉ! 羨ましいぜ、この色男!


 色男って、男は珠ちゃんの方だ!


ハニー>珠エピソード……とても日射しの強い夏の日、僕は彼より一つ下でしたが、約束したんです。「結婚しよう」って。それを聞いた時、僕の胸がキュッって縮むような感覚は初めてで動悸はするし、眩暈もするし、吐き気もするし、頭痛もした。その時気づいたんだこれが“恋”だって。


 恋じゃないね。熱中症だね。男の子に結婚しようだなんて、多分僕も熱中症だったんだね。


◇◇◇


 笑ってはいけない二十五時も終わり、テレビには年末年始の深夜番組をやっている。

くだらない内容で、頭に入ってこない。

僕はスマホとにらめっこしていた。


 スマホのバイブの音と共にライソの通知が来る。

僕はライソの画面を開いた。


ハニー>決まったぜ! ふわぁ~、おめでとう。優勝は、三番だ!


 欠伸するなぁー! あと、三番ってどっちだ?


ハニー>あ、ああ。すまん。三番は幼なじみの昊ちゃんだ! これでみつるは、(そら)ちゃんの物だ。


 画像だ。画像には、涙を浮かべる(そら)ちゃんが。

そして僕は誰も居ない部屋の中で一人溜まっていたものを吐き出す様に叫んだ。


「誰だよ、(そら)ちゃんて!? 僕に幼なじみなんかいねーよ! 大体学校も入学して一日しか行ってねーよ! 一年以上入院してんだよ、こっちは!!」


 ほんと、誰なんだよコイツら……


◇◇◇


 翌日、夜更かししてしまい、昼前に起きた僕は、点滴台を持ちながら部屋を出ると、長い廊下の先に見覚えのある顔の女の子が。


 (そら)ちゃんだ! 昨日、僕を巡って争っていた(そら)ちゃんがいる。しかも、こっちに向かってくる。そして、正面に立ち病室に入っていった……隣の。


 隣のネームプレートを見る。

“利亜 充”。そして、

ああ、そうか部屋を間違えたのか。

中から「充くん、私勝ったよ」という声が聞こえる。

悲しくなんてないやい。


 ん? 部屋を間違えただけなら……



 あの練鳥(ねっとり)って誰だよーーーー!


参加作家

ねっとり様、腹ペコ侍様、エツハシフラク様、北方真昼様、アンチリア・充様(順不同)


主催者

天羽紅羽様

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