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サラフィー様の手の中で

オークキング

作者: Lance

 小競り合いを続ける闇の者どものために光の者どもの侵攻を食い止める盾とも槍ともなってどれぐらい時が過ぎただろうか。

 ヴァンパイアロードはそれ以前に今の自分と同じ位置に就いていた。

 背後では魔族が、ダークエルフ族が、のうのうと小競り合いを続けている。

 だが、ヴァンパイアロードは、甘んじて盾とも槍ともなった。

 その態度は同じ闇とはいえど種族の違う者同士としての壁を乗り越えた。

 ヴァンパイアロードとは盟友になった。

 彼に力を貸し、光の者どもへの尖兵ともなった。

 だが、ヴァンパイアロードは討たれた。

 彼にしては愚策だった。光の者どもの動きを察し、ヴァンパイアとしての宿敵となり得る精鋭が揃った別動隊を送り込んで来たそれを、迎え入れ、門を閉じたのだ。

 外では我らオークの戦士達が、城内ではヴァンパイアの戦士達が尽く散った。

 ヴァンパイアロードも自ら迎え入れた相手によって逆に討たれた。光の者どもを人間達を甘く見ていたのだろう。城を包んでいた闇の雲が晴れた時に我らはヴァンパイア達の死を悟った。

 そして今度は我らオークが光の者どもの矢面と立つ番になった。

 非力な人間どもは数で圧倒し、そのうちに魔物どもも彼奴等に力を貸すようになった。

 もはや、支えきれない。

 だが、頼る者もいない。

 そんな絶望的な戦を幾度も制してきた。

 オークとしての武人としての誇りが我らの兵を民を奮起させた。

 だが、我が盟友に訪れたように、ようやく我らにも滅びの時がやってきた。

 光の者どもが侵攻して来る。

 これが最後の戦となろう。死に行く者には名誉ある死を!

 群雄割拠に負け落人だったダークエルフの傭兵団との縁を切り、我らオークだけが勢揃いし迎え撃った。

 オークの将達が勇ましい名乗りを上げ散って行く。

 兵達も斃れ、負けは決まった。

 我は覚悟を決めた。

 覚悟を決めはしたが、ただでは逝かぬつもりだ。

 長年側にあった斬馬刀を手にし、キングだけに許された朱塗りの甲冑を身につける。

 戦場の音が声が木霊する。今こそ、我もその一部となろう。

 駆けた。我に気付いた将兵達が尽き従う。

 斬馬刀が次々光の者どもを弾き飛ばす。

 そう、我が目指すのは敵の首領の首のみだった。

 駆けながら、得物を振るいながら、感じたのだった。

 光の者どもは脆く、覚悟を決めた我は強靭だ、と。

 朱色の血を幾つも浴びた。だが、我が脚は止まらない。

 敵の将兵のど真ん中を突き進み、見えた、あの鎧は近衛だ。

 彼奴等を蹴散らせば、大将の首はすぐそこだ。

「蹴散らした敵が兵を整え背後から食らい付いて来ていますが、キングよ、心配無用! そのまま行かれよ!」

「おう、頼んだぞ! 退け退け退け! 我はオークが総大将、オークキングぞ!」

 近衛隊の向こうに剣を抜いた荘厳な外套を纏った大将が見えた。

「死に土産をいただきに来た!」

 その時だった。躍りかかった我と付き従う精鋭の前に突如として数人の影が現れ行く手を遮った。

 鉄仮面を被った謎の一団だ。

 その中の頭目と思われる者が見事な剣を抜いた。

 それを目にした途端、胸が熱くなり、嬉しくなった。

 これが我が生涯の最後に相応しい敵だろう。

「我はオークが首領、オークキングなり! いざ参る!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『指輪物語』以来、オークには愚鈍とか品性下劣といったイメージが付き纏いがちですが、さすがキングともなれば一味違うかっこよさですね。やはりご自身が本当に好きというか、いいと思える内容なればこ…
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