中編
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公爵令嬢から忠告をうけてから数日が立ちましたがなにごともなく、平和な日常を過ごしていました。
ただ少し困ったことに目を離した隙に身の回りの物がなくなるようになりました。
移動教室の間にペンやインクなど授業で使用する物がなくなるという些細なことだったのですが、今までこんなことがなかったので不思議です。
「また物がなくなったんですか?」
「誰かに盗まれているんじゃないか?」
あまりに物がなくなるのでクラスメイトの方々が心配してくださいましたが、私の身の回りの物を盗んで得する人がいるとも思えません。
なぜなら盗まれた物は学園で指定されている物ばかりなので特別に高価な物ではないからです。
この学園では学業において平民と貴族の間で格差がうまれないようにと制服や備品などは指定のものが決まっています。
なのできっと私が自分でなくしているのだと思いました。
それからさらに数日が過ぎたある日、席に着くと机の中に手紙が入っていました。
『今まで消えた物を返してほしければ今日の授業が終わったあと、一人で学園の端にある空き教室に来なさい』
正直驚きました。この手紙の差出人は私がなくしたものを持っているということです。
なぜすぐに渡してくださらないのか少し疑問に思いましたが、私は放課後手紙の場所に向かいました。
するとそこには例の公爵令嬢がいました。
「よく逃げ出さずに来たわね!そこだけは誉めて差し上げてもよろしくてよ。ここ数日、物がなくなるというのはどうだったかしら?平民にはあの程度の物とはいえ困ったでしょう」
なぜ彼女がここにいるのでしょう?もしかして手紙の差出人はこちらの公爵令嬢だったのでしょうか?
「えっと、確かに授業中は困りましたが…」
「えぇそうでしょう。王子に近づくからこういう目に会いますのよ」
そう言って扇子を広げて笑いました。
そのときはじめて私は自分の物が盗まれていたと気がつきました。
「まぁこんな他人が使っていた物は私には必要ないから一応返して差し上げますわ」
そういうと可愛らしい刺繍がされた袋を私に向かって投げました。
ですが急なことだったので反応できず、袋は私の手をすり抜け床に落ちました。
落ちた瞬間、何かが割れたような音がして袋から黒い染みが広がりました。
しゃがんで中身を確認すると、どうやら中に入っていたインク瓶にヒビが入ったようです。そして中には私がここ数日なくしたと思っていた備品も一緒に入っていました。
「あ、あなたがちゃんと受け取らないのが悪いんですのよ!私は悪くありませんわ!」
公爵令嬢がなぜかすごく焦っていますが、袋を落としたのは私が受け止めれなかったからなので気にしなくてもいいですし、むしろ可愛らしい袋を汚してしまったこちらが悪い気がします。
「とにかく平民風情が王子に近づくからこんな目に会いますのよ!これに懲りたらもう王子には近づかないことね!まぁどのみち王子に付きまとうだなんてことはできなくなるでしょうけど」
「どういうことですか?」
私は汚してしまった袋をどうしようかと考えながら尋ねました。
「今度学園の交流パーティーがあることはあなたでもご存じでしょう?」
この学園には入学してしばらくした時期にクラス交流のパーティーが行われます。
貴族が多いこの学園では家同士の交流をする社交の場でもあり、大人も数多く出席します。また平民出身の学生も日頃では体験できない貴族のパーティーの雰囲気を楽しめるとしてこの国では有名なパーティーです。
「有名ですし存じております」
「今度行われるそのパーティーで王子の婚約者が発表されるという噂ですのよ。まぁ貴族でもないあなたが選ばれることは絶対にないでしょうけどね」
確かに隣国の人間である私が選ばれることはまずありえません。
王子はほんとうに優しい方なので少し悲しいですが、私も王族である以上結婚は王である父が相手を決めるでしょう。
「王子には私のような公爵家の娘こそ相応しいの。わかったらいい加減王子に近づくのは諦めるのね」
それだけ言うと公爵令嬢は出ていかれました。
私も王子の婚約に関しては思うところがありましたが、ひとまずインクで汚れた床をそのままにしておくわけにはいかないので清掃員を呼びに行くため教室を出ました。
ただその後ろ姿を見ている人物がいたことには気がつきませんでした。
このご令嬢をざまぁできるんだろうか…。




