9 ニャンコと一転と憂鬱と
途中から人称変わります。
上手く切り替えが出来なくてすみません。
2016.12.5加筆修正しました。内容は変わりません。
「やり過ぎだ」
シーニアに注意を受けるも我関せずなシャルト。
シャルトは結界を展開して突入しているため怪我は無い。エレも抱き上げられていた為もちろん怪我は無い。
犯人達はシーニアとディルムンによって確保された。犯人の移送のため隊員を呼びにディルムンが騎士団に向かいシーニアとシャルトは見張りの為に現地に残った。
日も暮れて周りは暗い。
森の中は月明かりも差し込まないため更に闇が深い。
冬も終わりを告げ春めいて木々に若葉が芽吹き草花が蕾を付け始めた頃だがまだまだ夜の寒さは身に染みる。隊員が来るまでは時間がかかりそうな為、火を起こし暖を取りながら待つ事にした。
「エレ怪我はないですか?」
『ニャウ』
エレが、大丈夫だとばかりに返事をすればシャルトは目を細めこちらに笑みをかける。
震えたままシャルトにくっついていたエレも流石に落ち着いてきた。
エレもちょっと恥ずかしいのかシャルトの腕の中から摺り抜ければ今度はシーニアに抱き上げられた。
「心配したよ。エレに怪我が無くて良かった」
エレは抱きしめられて恥ずかしいのに抜け出せないのはシーニアの猫好きによる猫の扱いの上手さなのだろうか。
エレと戯れるシーニアを見てシャルトが、釣れ無いですね。先程は私の胸の中へ飛び込んで来てくれたのに。と拗ねた風に言うと反発するシーニア。
「俺が拾って看病したの。名前も俺が付けたし」
譲る気は無い。とエレを確保したまま言い張った。
( 私エレじゃないし、本当は猫でもないし、誰の物でもないわよ!)
私はニャゥニャゥ文句を言い、シーニアの頬をテシテシ前脚で叩くが伝わらないのが歯痒い。
「エレが不満を言ってますよ?貴方では嫌みたいですね」
( シャルトさん勝手に私のアテレコしないで下さい )
猫の私でウニャゥニャゥ反論しても無意味なんですが、文句は言っておきます。伝わらないけど。
「それにしても貴女はどうやってまた獣化したんですか?」
『ニヤァ……』
( うん。また伝わらない日々が始まるのね )
項垂れ、耳が下がるのを見てシーニアが私を降ろした。
「大丈夫。また元に戻れるよ」
シーニアは私を撫で落ち着つかせる。
( この手、暖かくて安心する )
私が座って撫でられ目を細めているとシャルトにまた抱えられた。
シーニアが文句を言うがシャルトは御構い無しに私に話す。
「私が貴女を元に戻しますから。安心して下さいね?」
シャルトの妖艶な顔立ちの微笑は破壊力があります。私が思わず顔を反らすと、何か不安でも?と心配される。
私は気恥ずかしく居心地が悪くてモゾモゾ動いていると人が来るのが聞こえた。ピクリと耳を向けるとディルムンが仲間の騎士を連れて来た様だ。
シーニアは後始末のため残り、私はシャルトに抱えられ帰路に着く。宿舎に着く頃には、私は疲れて猫のまま眠りについていた。
やっと長い1日が終わる。
**********
目を覚ますと私はセレンに預けられた様だ。
朝起きるとセレンがご飯を持って来てくれていた。
朝食を済ませ会議室に連れて行かれると隊長達が話し合いをしていた。
獣化解除について、解決するまで猫のままの方が監視しやすいのでは?ともあり議論している。
「檻にでも入れて置けば面倒が減る」
バーマンは憮然と腕を組みセレンに抱えられた私を見降ろしている。
シーニアが私を庇う様に身を前に進めた。
「俺が面倒を見る!」
「猫とはいえ女性を檻に入れて囲うの!?私が面倒見ます!」
セレンが驚愕し血相を変えた。
「逆に間諜に仕立てて怪しい所に潜入させろ」
「面倒起すなら始末するべきだ。怪しい者を処断するのが我々の仕事だ」
とドウェルとディルムンは厳しい事を言っている。
ブランブルが早期解決のため、私の情報が必要だから直ぐに獣化解除した方が良いと言う意見に皆が落ち着いた。
経緯を見守っていた私にとっては心臓に悪い会話が続き人間不信になりそうだった。
( いっそ猫のままの方がいいかも…… )
つい、そう思ってしまう。
( って!ちょっと待って!デジャブ!?この展開二度目!私の羞恥心を分かって!!!誰か! )
解除の行程を思い出したセレンが男性陣を室外に連れ出してくれました。流石素敵女子!憧れます!
( うわーん!でも一人残ってる!シャルトは解除するから外せないー!!公開処刑再びだぁぁ!!)
前回と同じ準備をし、セレンは前もって私にマントを掛けてくれた。
シャルトも問題無いですよ。とそのまま解除の作業を続ける。
( 最初からこうだったらマシだったのに… )
私一人(匹?)ニャゥニャゥごちる。
シャルトにピアスを外され私の周りに魔石を置かれる。リボンで結界が貼られシャルトから私に魔力が注がれた。
私は座って術を待つと自分の身体が内側から膨れる様な、突っ張りながら広がっていく様な、妙な感覚に支配されていく。
私はクラリと目眩がするとそのままパタリと自分が倒れたのが分かった。身体に力が入らず床の上に横になる。
床の冷たさが人の肌に戻った事を実感させてくれた。
意識が戻り目を開けると視界にはシャルトが私を覗き込んでいた。
横たえた私をシャルトが膝上に抱え、大丈夫ですか?と声をかける。
慌ててマントの所在を確認するとちゃんと包まっているのが分かり私はホッとした。
私の安堵にシャルトはクスリと笑うと、後は任せますね。とセレンに私を託し部屋を出た。
*
着替えを済ませると皆が揃って待っていた。
( 蛇に睨まれたカエルってこんな気分かしら? )
冷や汗をかきながら部屋の中へ進んだ。
シーニアとシャルトに、大丈夫?と交互に心配されたが、他からの視線に晒され気が気では無い。
ブランブルをが口を切る。
「覚えている事を話せるか?」
私は覚えている事を話した。
猫の時の記憶しか無い。と。
獣化の解除をするシャルトを見たのが最後で、気が付いたら、まだ猫の姿でよく分からない小屋の中にいたが隠れた。
大柄な男が、いない!だとか、探せ!とか騒いでいるのを猫のままの姿で物陰に隠れて見てたら名前を呼ばれ飛び出した。と私はブランブルに伝えた。
私には記憶喪失の間の人間エレの記憶が無いのだ。
私は前に人に戻ったが記憶喪失だった事を知った。
意識が戻った時には猫のままで、私も訳が分からないと伝えた。
実際、夢うつつで記憶が微妙なのは間違い無い訳だし。と心の中で自己弁護する。
他に思い出した事は?と、ドウェルに聞かれる。特には………?と言うも、更に詰め寄られ、
再びドウェルに、他に思い出した事は?と今度は双眸を鋭く細め凄味を利かせ低い声で静かに聞かれた。
記憶喪失時の私と記憶を取り戻した私の微妙な違いに気が付いた5番隊隊長ドウェル。
誤魔化せないか。と、心の中で諦めた。
「…………………………あります」
強面の騎士の凄味には勝てません。
「私の名前は、遠野リラと言います」
私の素性を話した。
2016.12.5改稿
人称変更加筆修正
記憶喪失から戻り人称が変わるのが上手く出来なくて何度も試してみましたが……精進してきます……。
2017.3.8.本文にタイトル入っていた為削除しました。