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ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
番外編
82/85

ニャンコと一年と《リラ視点とシーニア視点》

ご読了ありがとうございます(*^_^*)

チマチマとその後とスピンオフを追加する予定です。

ブクマ、評価、とても嬉しいです。励みになります(*^▽^*)


樹々の葉は落ち、吐く息が白い。

この世界に来て、初めての冬。

仕事着の上に防寒着を羽織り、襟元を寄せた。


「はーっ。肌寒くなって来た……」


寒さに目が覚め、早起きして朝食を済ませた。

見慣れた食堂を出て、ふと思い、足を止めた。


私は、本館と反対に視線を向け足を運んだ。



訓練所に向かう。


訓練所の外れの水場。

その近くの片隅の繁み。

常緑樹に囲まれた一角。



ーー黒猫の落ちてた場所。



その場所をただ見つめ、立ち尽くした。


私はここに落ちていた。とシーニアに教えて貰った。

(私が落ちた場所……か)



猫の日々に悩んだり、人に戻れなくて苦しんだり。

一年と言う期間が、短かったのか、長かったのか分からないけど、色々な事を思い返していた。

猫での生活、誘拐されたり、拉致られたり、王宮行って陛下にあったり。レンブラントが転生者だったり、魔術習ったり……。

一番慣れなかったのは……対人面?

ドレスなんて着た事ないし、ダンスなんて、高校で習った社交ダンスくらいだし、異文化理解も大変だった。


ここに来てからの自分の歩みを振り返り、少し肩を落とし、目を瞑り溜め息をついた。


(濃厚な一年だったわ…)


ジャリッ……。


背後で聞こえた足音に振り向けば、シーニアが立っていた。


「シーニア……」

「おはよ。リラ」

穏やかに笑みをたたえ、優しい瞳を細めたシーニアに、今の私には気まずい気分になった。


シーニアに告白され、一旦は断ったがアプローチは止まらず私には一杯一杯だった。甘やかすシーニアに私は逆に居たたまれなくなっていた。

何も返す物を持たない私は、気持ちを受けきれなかった。

だが、そんな私にシーニアは気にも留めず、いつもと変わらず同じだ。

臆病な自分に、変わらず声をかけくれる事に感謝しつつ、困惑が消えないのも確かだった。


「寒いね。こんな早い時間に珍しいね」

「寒くて早起きしたの」

「リラはこんな所でどうしたの?」

「えっと……」


言い淀む私に、シーニアは困ったような表情で笑う。

「リラをここで見つけて、一年になるね」

「……うん」

「猫のエレだった頃が懐かしい」

「うっ……なんだか恥ずかしい……」

「えー。可愛かったよ?」

私を揶揄うようにクスクス笑うシーニアをジロリと半目で見るも、笑いを止めないシーニア。


「……あれから、一年だね。リラは慣れた?」

「う……ん。少しづつかな?まだ一年だし」

浮かない顔の私にシーニアも少し顔を曇らせた。


黒猫を拾ったその場所を二人で眺め、その間を北風が肌を撫で、身を竦ませた。

その様を横目で見ていたシーニアにクスクスと笑われた私は、笑われた意味が分からず首を傾げた。

「猫と同じで寒がりだね」

「猫は関係ないです」


筆腐る私にシーニアの笑いは止まらず、釣られて私も苦笑いで返した。


「……シーニア。私を助けてくれてありがとう、ね」


シーニアに正面から向き、礼を伝えた。

自分から目を見つめ、気持ちを伝えるのは慣れないし、緊張する。でも、私を助けてくれたシーニアに心からの感謝を伝えた。


「ああ。リラを助けられて良かった」

柔和に笑みを浮かべるシーニアと交じり合う視線に色々な感情がよぎる。それは感謝と罪悪感と色々混じり、上手く笑えたか分からなかった。


「えっと、あと……ごめんね?」

気まずい私にシーニアはいつもと変わらず、リラが幸せなら、それでいいよ。と笑った。



顔を見合わせたまま、笑い合っていると、また背後から足音が聞こえた。



「…………リラ」


振り向けば、訓練所から出てきたディルムンが立っていた。


「「ディルムン…」」


日の出前から訓練所で訓練してから書類仕事をしているディルムン。

寒空の下、シャツ一枚だけで、身体を上気させるディルムンは汗を流し、不機嫌に立っていた。


「仕事に遅れるなよ」

「……はい」



私とシーニアは顔を見合わせ、肩を竦ませ苦笑いをした。


「「仕事に行きますか」」





***************



冬が始まり、吐く息の白さが濃くなった今日この頃。


いつもと同じに、訓練をし、食事を済ませ、仕事場に向かう途中、リラを見かけた。


訓練所の方に向かうリラが気になり、跡をつけた。

リラが立ち止まった場所は……。


ーー黒猫を拾った場所。



リラは物憂げに、その場を見つめ、肩を落としていた。

その姿に、過ぎ去った昔の思い出が重なり、胸が痛んだ。

その過去に引きずられ、リラを護りたいと思った気持ちがまだ揺れていた。


(振られたのに未練がましいか……)


気持ちを振り払う様に頭を振り、リラに近づいた。



「シーニア……」

「おはよ。リラ」

足音で気がついたリラが、驚いた表情で振り向いた。

いや、驚いたより、困惑だろうか。


振り、振られた関係の俺とリラ。

気まずくて当然か……。

それでも、リラから距離を置く事を、俺には考えられなかった。



「寒いね。こんな早い時間に珍しいね」

「寒くて早起きしたの」

「リラはこんな所でどうしたの?」

「えっと……」


言い辛そうなリラを見ると、やっぱりか、と苦笑いになる。

「リラをここで見つけて、一年になるね」

「……うん」

「猫のエレだった頃が懐かしい」

「うっ……なんだか恥ずかしい……」

「えー。可愛かったよ?」

猫のエレだったリラを思い出すと、感慨深くなり笑いが込み上げてくる。リラには睨まれてしまうが。


「……あれから、一年だね。リラは慣れた?」

「う……ん。少しづつかな?まだ一年だし」

あれから一年。

リラにとって、怒涛の一年だっただろう。

突如異世界へ来て環境の変化に戸惑い、猫生活に、誘拐、拉致、と目紛しい日々だったろう。

確かに一目惚れ。だが、日々の中で頑張るリラに、さらに惹かれたのも事実。困惑を浮かべるリラを助けたかった。



二人で立ち尽くし、黒猫を拾ったその場所を眺めていたら、風に吹かれたリラが寒さに身を竦ませた。

身を竦ませるリラは、猫の時の様に身を丸ませエレを思い返し笑ってしまった。リラには怪訝に首を傾げられた。

「猫と同じで寒がりだね」

「猫は関係ないです」


猫と比べられ不機嫌になったリラだが、俺が笑っていると一緒に笑った。


「……シーニア。私を助けてくれてありがとう、ね」


リラから正面から、礼を言われた。

リラは目を合わせるのが苦手だ。それなのに、自分から目を見つめ、気持ちを伝えてくれた。

表情から、慣れなくて緊張しているのが伝わった。


「ああ。リラを助けられて良かった」

リラの気持ちが嬉しくて微笑み、交差する視線に感情がさらに揺れた。

リラの瞳も震えているのが見て取れた。


「えっと、あと……ごめんね?」


その先の気持ちは、聞かない方がいいのも分かっている。だから思い返し、言える事はこれしかなかった。


「リラが幸せなら、それでいいよ」



その言葉を言う前に、背後から嫌な気配が立ち込め、刺さる様な視線を感じた。

振り向かずとも分かる冷たい気配。




「…………リラ」


リラと後ろを振り向けば、訓練所から出てきたディルムンが立っていた。


「「ディルムン…」」


隊長クラスは時間外で鍛錬しなければ、時間がない。日の出前から、訓練所に篭るのはお互い知っているが。

更衣室に向かうのに、わざわざ遠回りして、こっちに来なくてもいいんじゃないか?と思ったが、不機嫌なディルムンには、触らぬ神に何とやら、だ。

呆れ顔で見つめたが一瞥され、ディルムンの視線の先はリラだけだ。


「仕事に遅れるなよ」

「……はい」



ディルムンからの牽制の威嚇に肩を竦ませ、俺は苦笑いしか出来なかった。



「「仕事に行きますか」」




寒空を見上げ溜め息をつく。




失恋に北風が身にしみた。







きちんとリラとシーニアの関係にケジメを付けたくて書いたけど、リラとシーニアの気持ちを引き出せきれてないですね(;´д`)

表現力を勉強し直さないと難しいですね……(-_-;)


2017.4.7誤字修正

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