33 ニャンコと短剣と
レンブラントとの出会いは私の中で色々な影響を与えた。
私はそれを忘れず前を向いて進む決意を固めた。
レンブラントと別れの挨拶を済ませ帰ろうとすると陛下に呼ばれた。
一介の平民がこんな頻繁に王宮に来て、しかも陛下に会うなんて恐れ多い事なのだが。
ディルムンと合流して陛下の元へ向かう。
着いた先は、前にも訪れた温室のテラスだった。
ガラス張りの温室。高い天井から光りが差し、暖かく周りを包む。
席に座り畏る。
視界にディルムンが居る。
それだけでやっぱり安心する。その安心感にホッとするのは好きだからか。いや、好きだから安心するのか……。
陛下はおもむろに口を開くと、知識について話して来た。
「レンブラント王子が交換留学生、と言う物を言いだしてな。それについて聞きたい」
知っているか?と聞かれ、知っている事を話した。陛下は私がレンブラントと繋がっているかと聞かれ、話しの中で知識を話した。と言えばなんと無く納得した様子だった。
後は、簡単に出来る改革を聞かれ、教会で勉強を教える位でしょうか?と進言した。
陛下は暫く考えた後、一人頷き、私に視線を向けた。陛下と視線を合わすのは不敬か?と内心慌てた。
「また改めて詳しく聞く。今日はもう時間が無い」
陛下が席を立つのを私も立ち上がり見送ると陛下が近寄ってきた。
ディルムンより背は低いがそれでも上背があり、見上げていると顔を近づけられた。私は驚いて動けずにいると陛下は耳打ちした。
「短剣を聞け」
小声で囁くと顔を離しニヤリと陛下は人の悪そうな笑いを残し退室して行った。
私が呆気に取られているとディルムンが私の様子を伺う様に近づいて来た。
「兄上は何を言った?」
ディルムンの質問に、渡りに船とばかりに私は聞きたかった短剣の謎を聞いた。
「短剣を聞け、と言われました」
私はディルムンを見上げるとディルムンは無表情のまま視線を逸らせた。
誰か人に聞こうと思っていて忘れていて聞けなかった短剣の謎。
ディルムンの微妙な眉寄せは不機嫌より、困惑だと読み取れる。小首を傾げ見つめれば、ディルムンは無表情のまま抑揚無く呟く様に言った。
「短剣は本来夫が妻に渡すものだ」
「!!?」
唖然、呆然、呆気に取られてた私はディルムンを見上げたまま呆けて口をパカッと開け、かなり間抜け顔をしているだろう。
驚いたままで言葉にならず目を見開きパクパクと口を開閉しているとディルムンは言葉を続けた。
「未婚者が渡すのは、命を捧げる証だ」
「………………」
茫然自失になった私の前でディルムンはゆっくりと跪いた。私の手を取ると、手の甲にディルムンが額を付けた。
「俺が護る」
額を離し、見上げたディルムンの瞳が熱く鋭く私に向けられた。視線に息が止まりそうな程の熱を感じる。私は高鳴る鼓動に思考は奪われディルムンに繋がれた手から熱が染み込んだ。
大きな手に包み込まれ心が暖かな温もりに包まれるのが分かった。
「……なぜ?」
「俺が護りたいだけだ。お前に俺の気持ちを押し付けるつもりは無い。……だから気にするな」
「……自分勝手に命を捧げて、押し付けるつもりも無い。とは良く言ったもんだわ」
私は呆れて、眉を寄せてふと小さく笑った。
気にするわよ……。と不満を訴える様に見つめれば、繋がれた手が強く握られる。ディルムンの鼓動が伝わり、交わる視線に熱が篭る。視線を逸らさぬまま私を見つめた。
「リラを護る。だから安心して過ごせばいい」
ディルムンのその真剣な視線を私は逸らす事が出来ずにいた。
身分、立場、色々な事が脳裏に浮かびディルムンからの気持ちに躊躇した。
「……私を?でも………私は……」
言い澱むも、
命を懸けて護ると言う重み。
ーー人の本気。
それを受け取る事がどれ程の覚悟かを今初めて知った。
ーー自分の気持ち。
それをさらけ出す事がどれ程の勇気を必要とするか初めて気が付かされた。
それを、言葉を、軽んじてはいけないと、自身に言い聞かせ踏み止まると私は覚悟を決めた。
隠していた気持ち。
ーー後悔しない様に。
私からディルムンの目を逸らさず見つめた。
「…………護って貰えますか?」
「ああ」
ディルムンは手の甲に唇を落とした。
「生涯、護る」
跪いていたディルムンが立ち上がり私を見つめた。
斜陽の差し込む温室で二人の影は一つに重なった。
完。
一応、これで完結となります。
稚拙な文章にお付き合い頂き感謝致します。
ご読了ありがとうございましたm(_ _)m
人の本気。
シーニアもシャルトも本気なんだけど、口にし過ぎて軽い扱いになってしまっている二人に合掌( ̄人 ̄)
まだ回収仕切れてない所は番外編で、と思ってます。
カールやセレンやブランブルの小話ですが(^^; 後はトリュー、かな。後はディジェム陛下の子供の頃とか…。
なんとかここまで書ききれて良かったε-(´∀`; )
ブクマと評価が励みになりました。ありがとうございました(*TωT*)




