31.5 ニャンコと不穏な背後と《レンブラント視点》
「あー。ソレ、俺狙い。俺が国外に出たからな。釣られたみたいだな」
レンブラントは事も無気に言う。
フォルニアスとの国境の不穏な動きにブランブルがレンブラントに探りを入れると、あっさりと返された。
「多分、5年前の取り零しだな。王位継承権三位なんて価値もないんだかなぁ」
レンブラントはヤレヤレと気怠げに椅子に凭れた。
三位なら充分重大な地位だろ。とツッコミたいブランブルも王子相手では腹に飲み込んだ。
騎士団にちょくちょく来るレンブラントの背後を、コソコソ探る気配に忠告すれば、一悶着しそうな気配にブランブルはげんなりした。
「今なら炙り出せそうだから、釣ろうかと思うんだ」
迷惑かけるな!とレンブラントに破顔され、流石のブランブルも唖然とした。
再びレンブラントに振り回されるのが決定し、ブランブルは溜め息と共に瞑目した。
*
レンブラントの提案に話し合いは困窮を極めた。
ーー湖まで外遊し、対象者を引きずり出す。
「リラを囮になんて正気か」
「もちろん護るさ。自信ないの?」
飄々とした顔で語るレンブラントをディルムンは威嚇する様に低い声で唸る。
ーーリラも一緒で。
それがレンブラントからの提案だった。
「お前は何を考えてる」
「護るだけではリラの為にならない」
レンブラントと一緒にリラも囮となり騒動に巻き込む。
それは危険を伴うが、リラに価値観の違いを如実に体験させる為だとレンブラントは言う。
王子の俺と一緒ならリラも纏めて護れる、と。
荒治療にも程がある。獅子の仔落としをリラでするなどあり得ない、とディルムンは反論した。
「リラはこの世界をまだ理解しきれていない。安全じゃ無いこの世界への危機感を持ち合わせていない」
「だからと言って囮など極論だと思うが?」
「だから万全を期すんだろ?」
「話しにならんな」
「このままじゃリラは成長しない。荒治療だが彼女の為だ。それにリラは魔術を使える」
「万が一はどうする」
「リラは魔術師だ。信頼してやらないのか?」
表情を変えず冷静に語るレンブラント。納得できないディルムンは眉を上げ眼光鋭く睨む。
「それは詭弁だ。巻き込むなど、……お前はリラの事が好きでは無かったのか」
「好きだからこそだよ」
ディルムンの気迫に押される事無く、レンブラントから立ち上がる貫禄の気配。20才とは思えない雰囲気を纏うのは、やはり王族としての意識からか。
力強い瞳でディルムンを睨み決意を伝えた。
「護りきれなければ、リラを連れて行く」
レンブラントとディルムンの視線が鋭く交わるとお互いの気迫がぶつかり合う。
それはまだ始まらない騒動の幕開けとなった。
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レンブラントはリラを連れ外遊に出る決意をした。
確かに、万が一にはリラを危険に晒す。
だが、この世界では当たり前の危険だ。
日本の様に、夜な夜な一人で歩く事など出来ない危険な世界。
知らさず、知る事も無く、護るのみでは成長しない。
リラは力を持っていても使わない。
本当の危険に使えなければ自身さえも護れない。
危機の際に身体を動かすのも難しくなる。
危険も恐怖も場数が必要だ。
ーー万全に部隊を配置し敵を陽動し、逆に捕らえる。
レンブラントは決意を新たに固めた。




