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ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第二部
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25 ニャンコと晴れと味と


私の推測をレンブラントは深妙な面持ちで聞いていた。


「だとすると、リラはどうしたい?」


「……したい、よりも私の存在が文化侵略しないかが不安だったの。それによって影響が出て、何が起こるか分からないし。レンブラントはあっちの世界の文明を持ち込むつもりある?」

「有益な物は使うよ?国益を守るのが仕事だからね」

至極当たり前だと、レンブラントから言われ少しショックを受けた私は考え込んだ。


「じゃあ、武器とかは?」


レンブラントはピクリと片眉を上げ一瞬目を細めた。


銃には火薬が必要。火薬の知識も危険だけど、火薬を使用しなくても魔石を代用すれば出来る気がする。

理論の流出が怖い。

代わりを考えれば転用されるから。


「レンブラントは、それを作る?」


それをどう思う?

それを利用する?


「レンブラントは記憶や知識があるんだよね?それを使うつもりはあるの?火薬や鉄砲や大砲とか。武器の知識を拡める?」

「うーん。王子としては兵器開発は国の国力向上の為に力を入れ、安定するべきだと思っているよ。武力強化による抑止力が一番解りやすいだろうからね。ただ、情報は漏れる物だとも思っている」


威力ある武器は被害も拡大する。


「実際は悩み所でね。頭を悩ませてるんだ」

「……良かった。悩んでくれて。一国が知識を得て脅威になるのを私は良いと思えないの……」


でも対抗手段が無ければ自衛も出来無い。

鶏が先か卵が先か。

でも転生者が少なくても居るなら、“いつか” は来るだろう。

ブランブルが前に言っていた。


『早いか遅いか。今か後か』




「少なくとも、この世界では転生者が関わりを持ちながら発展したって事だろ?なら、リラは文化侵略にならないんじゃないか?文化を残したヤツも元は同じ世界からだし」

「転生者と転移者は違う気がすると思うけど……」

「気にしないでいいんじゃないか?今までにも転生者が文化侵略してるなら、今更。だろ?」


リラなら危ない物は広めないだろ?としたり顔で言うレンブラント。


「も、もちろんよ……」

「なら、もう少し気楽でいいんじゃない?リラは堅く考え過ぎだよ?」



私という異質な者が、この世界にいて良いのかが不安だった。自分の存在が影響するなら山奥にでも篭り隠居生活も考えていた。


転生をして前世を思い出す割合はかなり低いとは思う。それでも少なからず影響を受け文明発展に貢献している。

この世界はそうやって発展して来たみたいなら…………。

(なら、私の存在も影響は無いと思ってもいいのだろうか?)



「この世界に居るって事が、この世界に受け入れられたって事じゃね?」


自問自答していると、呆気らかんと笑うレンブラント。



(………受け入れられたから、この世界に居る?)




レンブラントの言葉は私の心に響き、驚愕で目を見開き見つめた。



私が居たら、では無く。

居られるから居る。

私とは逆の発想。


私にはそんな自分の都合のいいように考えられなかった。

迷惑かけていないか。

迷惑じゃないか。

その基準しかなかった。



私はレンブラントを苦笑いで見つめ、なんだか少し心の澱が晴れた気がした。


「リラの悩みは晴れた?」

「……うん。ありがとう。レンブラントのお陰でなんだか気持ちが楽になった」


(ああ、彼の明るさに凄く救われた。流石に騎士団の皆には話せない内容だし。レンブラントなら話せる……)


心から穏やかに笑い、レンブラントに感謝を込めて見つめた。


私はこの巡り合わせに感謝をした。




レンブラントは挙動不振の様に手をバタつかせ、文化侵略なんて気にしてたら何もできねーじゃん!!と慌てている。


「カレー食いてー!味噌ー!醤油ー!!文化侵略ウエルカム!!!」

日本食バッチコイ!侵略来いやーー!!だよ!リラ!!と破顔している。


「もー!文化侵略でいいから、なんか無い?日本食!?」

味に飢えたレンブラントが駄々をこねる様子を見て思わずクスクスと笑ってしまう。


「あー笑ったな。不敬罪で捕まえるぞー」

「失礼いたしましたレンブラント王子」


戯けて返して、クスクスと二人で笑い合い、私は日本食では無いけど……と口籠もりながらレンブラントに向いた。


「……えっと、………食べ慣れた味なら?」

「ええ??文化侵略って言ってながらリラ何作ってるの!??」

何?何?とレンブラントに責められ吃りながら答えた。



「……マヨネーズ」


「……マヨネーズ可!」



レンブラントがグッと拳を握り締め満足気な顔をしている。

「可。じゃないし!って、可って何!?」

「作って」

「はい???」



レンブラントは立ち上がり部屋のドアを開けた。

「「「「!!」」」」


ドアの外で待っていた他の面々が驚いているのも構わずにレンブラントは進む。


「リラに作って貰いた味がある。食堂に案内して貰いたい」

「レンブラント王子!?」

レンブラントの無茶振りにブランブルの眉間の皺が深くなった気がする。


「何があったのですか?」

側近が私を怪訝に一瞥し、レンブラントに耳打ちをする。レンブラントは側近を手で払う様な仕草で身を離した。


「リラと食事の話しになり、味の話しになっただけだ。食べたい味をリラが作れるから作って貰いたいだけだが?」


文句あんのか?と人相の悪い顔で側近を睨むレンブラントに負けずと不満有り有りの顔で見返す側近さん。


「あー、お二方。案内するのでよろしいかな?」

幾分疲れた声のブランブルに申し訳無く思いながら食堂に向かった。





時間は昼近く、食堂は混み始めていたが、隣国王子の襲来に食堂は慌てふためきバタバタと騒然となった。


食堂の一角に席を設け私は料理長にマヨネーズを作る為、一式を借りた。


マヨネーズなら火は使わない。

調理場にお邪魔しなくても大丈夫だ。

テーブルで作るのもどうかと思ったが、レンブラントが作る所も見たいと希望し、観ている所で作る事になった。


卵黄と塩、酢を混ぜて油を少しづつ入れてグルグル回していく。


「かき混ぜるの大変そうだな?俺がやっていい?」

私が答える前にレンブラントは貸せとばかりにボウルとホイッパーに手をかけ持っていく。


「す、すみません。ありがとうございます」

周りに側近や人が大勢居る中でタメ口は無理だ。不敬罪になりそうで敬語で話すとレンブラントに不満気に見られた。

グルグル回すボウルの中に油を少量づつ入れてマヨネーズを作った。


「結構簡単なんだなー」

「必要なのは腕力です」


そう答えた私にレンブラントはクスクス笑い、リラの細い腕じゃ時間がかかるな。と私の腕をプニプニしている。ペチリと手を叩き、セクハラで訴えますよ。と言えば、俺王子だし。と戯けて悪怯れない。


作ったマヨネーズを小皿に分け、何度か味見してからレンブラントに渡した。


パクリと一口含み、暫し瞑目するレンブラント。



「……………………マヨネーズだぁああ!!」



周りの側近や警護、ブランブルが驚いてレンブラントを見つめている。ディルムンは相変わらず無表情だった。……いや、呆れ顔?だった??


「味見だけじゃなく、なんか付けて食べたい!」


騒ぐレンブラントに側近が、毒味役が居ないので……と諌めているが、大丈夫だ!とレンブラントは譲らない。


譲らないレンブラントにディルムンが申し出た。

「自分が配膳すればご納得貰えますかな?」

側近にそう言うと、王弟であるディルムンに否を唱える訳にもいかず側近も不承不承に承諾した。


ディルムンはパンとサラダをフライを持って来るとレンブラントに渡した。それらにマヨを付けて食べていく。


「ーーーーーーーーぅま!」


マヨパン、マヨサラダ、マヨオニオンフライを次々に口にするレンブラント。


「お褒めに預かり光栄です」

目を見開いて感想を述べるレンブラントに笑みで返した。

皆が居る前で、懐かしい味。だとは言えないもどかしさをレンブラントから感じる。

困った様な笑い顔で見合い、肩を竦めた。


「お気に召して頂けたならレシピをお渡しいたしますが?」

「勿論!」


レンブラントの即答に私はクスリと笑う。

マヨネーズを堪能し終わるまでレンブラントは食堂から離れなかった。





「来た甲斐があったなーー」


マヨネーズの余韻に浸るレンブラントは宙を見つめ呟く。


応接室に戻りお茶でひと時まったりするレンブラント。私は人に囲まれ息が抜けないので作り笑いで誤魔化した。



(マヨラーがまた一人増えた………………)





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