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ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第二部
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21 ニャンコと石碑とこぼれ話と


私の意識が戻り、視界に入る景色は見覚えある療養室の部屋だった。


「目が覚めたか?」


「ディルムンさん?」


声に気が付き視線を動かすと傍らにいたのはディルムンだった。不機嫌に眉間を寄せ私を見つめる瞳は鈍く光り思わず掛布を両手で引き上げ顔を隠した。


「……倒れた事を覚えているか?」

ディルムンの眼光はそのままに聞かれ私は掛布の隙間からチラリと目をやり首を振ると溜め息をつかれた。


「リラが目を瞑り考え始めたら倒れた。覚えてないんだな?」

「う、ん。呪いの術式を頭の中で探してて…………記憶………が……、」


私は掛布の隙間から目を泳がせ気不味く答えていると、脳裏に舞った記憶に私の意識が飛びかけた。


「リラ!?」

「あ、ゴメンなさい。大丈夫です。ちょっと思い出してただけで……」


心配気にディルムンに顔を覗かれて私は慌てて手を振り大丈夫だと答えた。ディルムンは信用出来ないと視線を向け私はまた掛布に顔を隠した。



ディルムンはリラが倒れた瞬間を思い出し眉間の皺を深めた。

リラは何かを思い出す様に目を瞑り、様子を見ていれば突然ゆらりと揺れ、崩れる様に意識を失った。崩れる瞬間リラを抱き抱え意識の無い顔を見れば顔色が悪い。リラの頬を撫でるも意識は戻りそうもなくリラを横抱きに抱き上げ医務室に運んのだ。



「何か解ったのか?」

「呪い術式は見つからなくて……ただ」


私はもぞもぞと上半身を起き上がらせ、ディルムンは視線を向け様子を伺いながら話を聞いている。

私は思い出す様に目を覆う様に手を当て俯き記憶を探った


「ただ…………何か、見えて…………」


私は、見えた断片を口にして呟き、これ以上思い出せない。と溜め息をつくとディルムンに、無理をさせた。と低い声で呟かれた。


「ディルムンさんのせいじゃ無いです。不用意に試した私が悪いので……」

心配かけてすみません。と頭を下げて謝るもディルムンの機嫌は悪いままで眉間に皺を寄せて不機嫌そのものだ。私は、ごめんなさい。次回から気を付けます。と頭を下げて謝罪した。

それを見ていたディルムンは顔を横に向け溜め息を吐いて呟いた。


「無理はするな」





ディルムンは先程の話を纏めリラに聞いた。


「魔方陣、見知らぬ人、リアン、本棚、海と石碑と言っていたが覚えているか?」

「なんとなくですが……リアンの記憶……ですかね……」

「話した中で分かる事は海と石碑くらいだな。魔方陣は専門家で無ければ分からないからな」

「そうですね……」

「海ならシーニアが詳しい」

「シーニアが?」

「シーニアは海岸線を含むタルバイ領地の息子だ。海に関するなら何か知っているだろう」





私はシーニアに話を聞くべく、食堂で夕飯を食べながらシーニアを待った。程なくシーニアが食堂に現れ私は話しかけた。

向かいに座るシーニアに視線を向け質問をした。

「リラから俺の事聞くなんて珍しいね?」

「シーニアは海の近くに住んでたの?」

「うん、海と川のある領地だからね」

「それで魚獲れるんだね」


シーニアとの川沿いの遠乗りを思い出した私は仄かに頬に朱が差し込み視線が揺れた。それに釣られ、草原での告白も脳裏に浮かび、シーニアに目を細め意味ありげに微笑されて更に私の頬に朱が染まった気がした。

シーニアはその瞳に艶を含め、リラは何を聞きたかったの?と声にまで色気を乗せて聞かれる。

私は狼狽して吃った声でシーニアを直視出来なくて視線を彷徨わせていた。


「……海、と、……石碑の、事を、」

「……石碑?」


シーニアは色気そのままに首を傾げ見る様に私は目のやり場に困り顔をそらした。シーニアはそれを楽しげに、ふと笑いながら頬を緩めた。


「ごめんごめん。リラの反応が可愛くて。ついね?」

いつもの雰囲気に戻ったシーニアに私の頬の赤みは戻らず恨めしい目で見れば、シーニアは済まなそうに眉を下げた。



「石碑か。どんな所にあるか分かる?」

「海の近くで、崖の上の遺跡みたいな所にあって、草の中に埋もれていたの」


シーニアは思案気に眉を顰めると首を傾げ悩んだ。遺跡はこの国にいくつかあるが絞れなければ分からない。


「うちの領土に一つと、他の領土にあるけど、その石碑に何か目印しになるものある?」



私は微かに覚えている石碑の形と文字を書いた紙をシーニアに渡した。


「これは………この文字は」

「こんな感じの文字が書かれた石碑を探しているの」

シーニアは渡した紙に目を落とし呟くと私に視線を戻した。



「……たぶん、隣の領土のだ」

「……………!!」

驚愕の表情でシーニアに視線を向けた私をシーニアと声もなく見つめ合った。



私はシーニアから石碑の話しを聞いた。


その昔船団で財を成した偉人の石碑だと。

帆船を作り今の船の原型を作ったらしい。石碑はその彼が置いたが誰も読めず今に至り解読されてはいないらしい。




「謎の文字で研究者が調べたけど解読出来ず放置されてると聞いたよ」

「シーニアはこの文字見た事あるの!?」

私の剣幕にシーニアは幾分引き気味になっているが、ああ。と答え頷いた。

「俺は跡取りの嫡男じゃ無いけど、知識は叩き込まれたからね。近隣の領地とも交流あるし」


ふと、シーニアは思い出しリラに顔を向けた。



「研究者の資料なら宮廷魔術師が知っているんじゃないかな?」




********************

◉こぼれ話 ニャンとも慣れる


「はーっ。一息ついたー」

「お疲れね。リラ」

「あ、セレンも休憩?」

「ええ」


山盛りの書類を捌き、肩凝り解しに休憩室で一息ついているとセレンも休憩にやってきた。


「疲れてるみたいねー」

「数字見るのが疲れました」

「うふふ。番犬が後ろで控えてたら肩も凝るわよねー」

「え?番犬……ディルムンさん、ですか?」

「そうそう。リラってディルムンの事怖くないの?」

セレンにお茶を渡し、私がソファーに座るのを見計らって質問が来た。前にもシーニアに似た質問をされたが私は、うーん。とひと悩みしてから答えた。


「まぁ、最初は怖かったですよ。始末しろ!って言われたり。私が猫の時、散々威嚇されて殺気に晒されて怖い思いをしましたからねー。氷の様な凍てつく視線に晒されて強くなりました」

へらりと笑い肩を竦めお茶を飲んだ。

セレンは眉を下げこちらを伺いながら悪戯っ子の様に目を細めた。


「あのディルムンに慣れるなんて、中々無いわよ〜?」

うふふ?と意味ありげに笑われ、探られる居心地の悪さに飲んでいたカップの縁から眉を寄せながら半目で見上げた。


「私が慣れているのは、身近にそう言う人が居たからですよ?」

「えー!?そんな人が居たの???」


セレンの驚きに、多分セレンの推測のソレは違うと思う。と口を挟みたかったが面倒なので飲み込み説明をした。


「祖母の家の近所に、見かけの怖い人が居たんです。猟師をやってる厳ついおじさんが猪狩って持っきたり、強面のおじさんときのこや山菜取りに行ったり。怖い顔で野菜持ってくる農家のおじさんとか。強面で厳つくても優しい人が周りに居たからですよ。怖い顔でも慣れれば普通だし。眉間の皺が通常装備だから、慣れましたよ」


祖母の家は田舎にあり、猟銃持っているおじさんや、山を管理するおじさん、農家のおじさんなど、おじさん率が高い田舎だ。気難しいおじさん相手をしていたからだと伝えれば、セレンが、成る程ねー。と納得していた。

祖母の家に預けられていた話しもセレンに話せば顔を曇らせた。気遣われるのが申し訳なくて手を振り平気だと伝える。


「気にしないでください。……それはそれで今に活きてますから」

お愛想笑いじゃなく、本心からふわりと笑えばセレンも安心した様に微笑した。





「いつまでサボってる。追加が来たぞ」


不意に応接室の度合いが開くとディルムンが入ったきた。

終わらなければ残業だ。とディルムンからの容赦無い宣言に私はガックリと肩を落とした。


「セレンまたね」

私は残業決定に肩を落とし項垂れながら部屋へ足を運んだ。





トボトボと部屋に戻るリラを見送るディルムンにセレンが近寄るとポツリと囁く。


「良かったわねー。怖くないって」


うふふ。と笑いながら去るセレンをディルムンは苦虫を噛み潰したような顔で見送った。









セレンは情報通な設定だったんだけど…。

シャルトに貸しを作る程のやり手だったんだけど、それにまつわるエピソードをカットしたので活かせないままで不完全燃焼(^^;)

どうしても話が続かず止む無くプロット変更した結果の削除でボツになりました(ー ー;)無念。


2017.4.8誤字修正

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