表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第二部
64/85

20 ニャンコと帰還と呪いと


相変わらず仕事は毎日あり、溜まる書類は山となる。


いつもと変わらず計算をして書類を片付ける。

いつもと変わらず。

私の毎日。





あの日、王宮より騎士団に戻ればブランブル他隊長達に出迎えられた。


気まずいままの沈黙にラグドが私の前に来た。

バツの悪い顔で伏せ目がちで謝罪するラグドを私も目を合わせず俯きながら頭を下げて謝罪した。


「…………自分の不用意な発言で迷惑をかけた。すまなかった」

「…いえ。……私もすみませんでした」



「リラが悪いわけじゃない」

疲労の浮かぶ顔でシーニアが私に近づいたが、いつもと違う雰囲気に私は眉を寄せた。シーニアは沈痛な面持ちで私を見つめた。

「リラのせいじゃないから、無事で良かった…………」

「シーニア…………」


二の句の告げられない雰囲気に周りも息を潜めた。バツの悪い同士では話が進まないとブランブルが進めた。


「嬢ちゃんも宰相に目を付けられるとは災難だったな」

「……はあ。騎士団出たら捕まりました……」

「猫がバレてるのか?」

「魔力持ちの猫は居ないので魔術師にバレた様です」

そうか。とブランブルは呟き顰め面で溜め息をついた。

「猫も禁止だなぁ」

はぁ。と私は落胆の溜め息をついた。



**********



ブランブルはディルムンから一連の報告を受けた。


将軍からトリューに情報が行くのは想定済みだが陛下にまで伝わるのは想定外だった。

前の将軍はリアンの魔術知識を利用するために集めさせていた。それは王にも秘密裏にしていた。

王が前宰相派と見られていたからだ。

だが今、前宰相も居なくなり現宰相がトリューなのが頭痛の種となっている。


ブランブルはこれならリラの情報を王に公開して保身しておけばまだトリューが干渉せず、ましだったのでは無いかと思い悩んだ。が今更なのだ。

次の一手を考えなければならない。




「ブランブル団長。一つお聞きしても?」


ディルムンはいつもと変わらない表情だが醸し出す雰囲気は何故か剣呑さを含んでいる。ブランブルが訝しげに質問を促すとディルムンは重々しく口を開いた。


「団長は何故そこまでリラを?」


ブランブルはディルムンの意図を勘付き溜め息をついた。



「俺はリラにやって貰わなければならない事情がある。俺は、リアンに関わっている。…………これ以上は、話せないように、なっている」


ブランブルは意味ありげに区切り区切り言葉を切った。


“話せない ”それは本意ではない事を示し、“ なっている ” これも本人の意思以外を指す。ディルムンはブランブルを見定める様に視線を向け推測を口にする。


「まるで、呪い、の様ですね」


ブランブルの細められた眼光に推測の確証を得たディルムンは納得の溜め息をつき幾分か肩を落とし、ブランブルは眉間の皺を深めた。

ディルムンは無表情に戻ると呟いた。


「リラに聞いてみます」






ブランブルは一人になると机の引き出しから布に包まれ厳重に封がされた包みを取り出した。


ふうぅ。と深い溜め息を吐き包みに手を置いた。


ーーリアンの呪い。



ブランブルはリアンから呪いを受けた。

将軍より密命でリアンの遺品捜査をするもリアンの呪いでリアンに関する事を話せなくなった。



獣化術はリアンの魔力を基準に術式が組まれ、その術式はリアンしか発動しない。リラはリアンから魔力を渡されている為に使えるが他の人は使えないのだ。

霊獣召喚術の記載、転移術式、転移術の出口の術式が書かれたこの本は大半が暗号化され専門家に見せたくても呪いで難しい。呪いを解除しない限り話す事も見せる事も出来ないのだ。他にも制約がかかっているブランブルは本に手を置き顔を顰めた。



ブランブルが捜査でリアンの隠れ家からこの本を発見した時は階段を踏み抜き落ちた先でだ。自分一人で発見した為に呪いは自分一人だけが受けた。


人に話せない呪いは、話せば本が消える。

自分以外が本に触れればやはり本が消える。

面倒くさい呪いをリアンもかけたモノだとブランブルは溜め息をついた。


転移術、獣化術の解決の糸口がここにあるのに紐解けなかったがやっと解放される。


ブランブルは再び溜め息を吐くと安堵に瞑目した。



**********



ディルムンからブランブルの呪いの話を聞いて私は首を傾げた。

「リアンから知識は受けたのですがリアンの個人的な記憶は見た事が無いんですよね……」


私が首を傾げ見上げればディルムンの眉間が曇るのが分かる。微妙な違いだが仕事で一緒にいれば判別出来るくらいにはなった。機嫌が判別出来ないと仕事で何かあった時に冷気を浴びるので私には重要事項だ。機嫌の悪い時は絶対に近づかない。


「呪いの術式が記憶にあれば解除出来るのかなぁ?」

私は、ふと思い瞑目すると、脳裏に舞うリボン。


だが舞うだけで術式を特定出来ない事に私は更に集中すると何かが横切る様な気がした。


集中を切らさない様にリボンの渦に沈むと、微かに見えたのは………



………光る魔方陣……………


…………見知らぬ人達………


机に…向かう、リアン?……


……本棚?


様々な景色と光景が断片的に流れ、写真が舞っていく様に散っていく。



その中に見えたのは、海………と…………


……………石碑?…………



石碑には………………



薄れる意識に、見えた……石碑…………………………



闇に沈む意識の中、



微かに見えた…………






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ