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ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第二部
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18 ニャンコと陛下と合議と


憮然とするシャルトと眉間の皺が三割増しのディルムンがソファーに腰掛けた。




私は落ち着きを取り戻した二人に籠の中から対面した。

だが、私は合わせる顔が無く身を縮ませていた。


籠の結界を解いたシャルトに籠から抱きかかえて出されソファーの上に置かれた。

『ニャァー……』

(ごめん………)


二人に見つめられ項垂れながらニャァと謝罪する。

シャルトは、心配しましたよ?と私の頬を撫で、ディルムンは険しい顔のままだ。


「ふむ。説明が欲しい所なのだがな?」

陛下が痺れを切らし口を開くとトリュー、シャルト、ディルムンが振り向いた。


「陛下、暫しお待ちを。リラさん取り敢えず人に戻りませんか?」

トリューが陛下に一礼して話を区切ると私に話し掛けた。それを陛下は怪訝に眺めている。

側から見れば宰相が猫に話しかける図など異様にしか映らない。

そのまま陛下に変人認定されてしまえ!と心の中で毒付く私を他所にトリューは話を続ける。


「ここは私の執務室ですが隣に私室があり着替えも用意してありますよ」


トリューは飄々と隣の私室を手で示す。

私は困りシャルトとディルムンを見上げているとシャルトが諦めた様に私に話し掛けた。


「リラ仕方ありませんよ。まず人に戻り話をしませんか?」

私は、ニャァ。と力無く鳴き頷くとシャルトは私を隣室に運んだ。


隣室で私が人に戻ると様子を伺っていたであろう侍女達が部屋の外から声を掛けてくると部屋に入ってきた。

軽く湯浴みをされ着替えを済ませ身支度をさせられた。




その間、トリューは楽しげに話しを進めていた。


「陛下の謀りのお陰で私も行動がしやすくなりましてね。今迄は中立の為、将軍とは一線を置いておりましたがこれで色々知り得る事が出来ました。この度色々と新しい真実に出会いましてね?陛下にも是非知って貰うべきかと思いまして」


トリューのその発言にシャルトは眉間に皺を寄せディルムンは舌打ちをした。

トリューの話を陛下は気怠げに返している。

「確かに、中立のメイフェイア公爵が、宰相か将軍どちらにも組する事が出来ないからな」


「陛下も今迄は前宰相寄りと見られ、将軍から情報が上がっていないかと思いますが?」

「そうだな。将軍に諌められはするが情報は限られていたな」

陛下は表情を崩すこと無くトリューに視線を向けた。


「その限られていた情報を陛下にお伝えしようかと思いましてね」

「それが、先程の猫に関係が?」

陛下は双眸を細め、やっと話の合点がいったとばかりに息を吐いた。


トリューの話をシャルト、ディルムンは愁眉を寄せながら聞きリラの戻りを待った。




その暫し沈黙の間に私は侍女に連れられ執務室に戻された。


四人の視線に晒され萎縮しているとシャルトが私の手を取り誘導してくれた。


陛下は訝しみ眉間に皺を寄せているのをトリューは気にせず私を紹介した。


「彼女はリラ・トゥーノ。大魔術師リアン・シュベーフェルの残した獣化術の成功者であり、先ほどの黒猫です」


トリューの説明に更に眉を寄せた陛下は周りを見回すとディルムンに視線を定めた。

「お前は知っていたのか?」

「……………知っていた」

低く絞る様にディルムンは答えると視線を逸らした。


ソファーに座ると右側にシャルト左側にディルムンが座った。


「最初から詳しく話せ」

トリューは将軍からもたらされた情報を陛下へと話した。


彼女は獣化術を使え、猫になれる。

獣化術は生物転移術に必要な術であり、それが出来る彼女は他国に渡らない様に保護するべきだ。

そして彼女はニホンという島国から来た。と。


「それは凄い事実だな……」


聞き終えた陛下は眉間の皺はまだそのままだ。

陛下はトリューを凄む様に目を細めた。


「だがお前が言いたい事は他にあるのだろう?トリュー。我をダシにしたな?」


トリューはしたり顔で笑うとシャルトとディルムンを一瞥した。

「まだ私にも伝わらない事実がある様です」

トリューは意味ありげに目を細め陛下に視線を向けた。


「ディルムン、彼女はどうやってその島国から来た?その島国に何故リアンの獣化術が伝わった?」

そもそも、その島国は何処にある?と陛下から一番聞かれたく無い質問にディルムンは険しい顔になった。


「我にも話せないのか?」

陛下からの厳しい問い掛けにディルムンは口を一文字に結んでいた。

シャルトも気不味く俯いている。

ならば。と陛下は私に向けた。


「リラに命ず。全てを話せ」


全身から血の気が引き息を吸うのも苦しい程の威圧と緊張と動揺に翻弄され私は蒼白となる。


震える手を握り締め掠れる声を絞り出した。



リアンの獣化後の転移失敗、異世界転移、私の世界。

それらが陛下とトリューの知る事となった。




トリューは想像以上の真実に絶句していた。

陛下は私を見つめていたがディルムンに向き直した。

「なぜ我に話さなかった?」

「彼女が望まなかった」

ディルムンは陛下に視線に見据える様に向けた。



私は文化侵略を理由に情報公開を避けてきた。

陛下に伝われば知識をどう使われるか分からない。

私にはこの状況にどうするか考える余裕も無かった。


陛下は私に向き質問をする。

「リラ。お前はなぜ話さない?さすればお前は国賓級の扱いとなるやもしれぬのだぞ?」

「……望んでおりません」

震える手を更に握り震えを抑えた。


私はトリューにも話した文化侵略の影響を陛下にも話す。

私の知識は私の国で通用するもの。異世界の急激な知識は毒にしかならないと訴えた。


陛下にまで知識が行けば世界に与える影響は劇的になる。その影響は想像出来ない。


「知識が毒にしかならない以上話せないのです」

「それを判断するのは我の仕事だ。お前が判断する立場では無いであろう?」

陛下に一笑に付され聞き届けては貰えそうも無い。



「兄上。宜しいか?」

ディルムンが口を挟み陛下は怪訝な視線を向けた。

「リラの事は任せて貰えないか?」

「お前にか?」

「ああ」

「何故だ?」

陛下はディルムンを伺う様に顔を向けると背凭れから身体を離し身を乗り出した。


ディルムンは一呼吸すると陛下を見た。

「……リラには俺の短剣を渡した」


「はっ!?はあ?」

何とも間の抜けた声で驚く陛下に私も驚いた。

陛下は背凭れに背を預け驚きを隠せずにいた。


状況が分からず私がきょとんとすればシャルトが呆れ顔をしている。

「それは彼女には異国文化です。因習が違い短剣の意味も分かりませんよ」

溜め息混じりに吐き捨てる様に言い放つシャルトは不機嫌だ。


私は視線が彷徨い落ち着かずにいた。

「……短剣って?」

私は小声でディルムンに聞くも、ディルムンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、……護身用だ。と誤魔化す様に言った。


一連を見ていた陛下はニヤリと笑うとディルムンに、成る程な。と呟くとトリュー向いた。


「今の所はディルムンに任せる。いいな?」

トリューは表情の読めない微笑で一礼をした。








トリューが変に動き回り予想外です。オジサンに話を回され持って行かれるとは思わなかった。


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