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ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第二部
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17 ニャンコと流離いと監禁と


私はラグドの言葉に動揺しあの場を離れた。



ラグドの言葉に図星を突かれ、何より自分の居場所の不確かさに苛まれ私は猫となり街に出た。


シーニアに告白され、シャルトに想いを告げられ、どちらにも良い顔していると思われても仕方ない。


優柔不断な自分。

今は考えていられない。と逃げた卑怯な自分。

ただ一人。

何も無い自分。


それを自覚する為ピアスも外し、身一つで飛び出していた。


私はこの世界で生きるにはどうすればいいか。

何も無い、何も持たない自分は?


『ニャーーーーン』

(はぁーーーー…)



(再就職先探すかなぁ………)


いつまでも騎士団に間借りしている訳にはいか無いのは分かっている。皆の好意に甘えたままでズルズルと居候するのも気が引ける。


項垂れ尻尾を垂れ下げて思案に暮れていた為、周りの気配の変化に気が付くのが遅れた。


周りを見回せば黒いマントの男達に囲まれているうえに結界を張られたらしく逃げれない。


『フシャーーーー!!!!』

(何者よーーーー!!!!)


威嚇するも何か術を発動させたらしく目の前で閃光が走り目を奪われた私はそこで記憶が途切れた……。



**********



気が付けば見た事のある天蓋付きベッドの上に私は猫の姿のまま寝かされていた。



部屋を見回し様子を伺うも外に出れそうに無い。


『フーーーーッ!!』

(もーーーーっ!!)



ウロウロと檻の熊よろしく、部屋を回っていると部屋のドアが開いた。


「起きられましたか?リラさん」


目の前には紳士然としたナイスミドルなおじ様が立っている。

フーーッ。と低く息を吐き見据える相手は微動だにしない。




ドアの前には佇むトリュー・メイフェイア公爵がくつりと笑っていた。


「お食事はいかがですか?」

優雅に上品に如何なる時にも沈着冷静。

貴族の中の貴族のトリュー公爵。


その彼をもってしても、今は表情を崩し笑いを噛み殺しているのが見て取れる。トリューの目尻の皺が加齢皺では無く、笑い皺に線を引いているのをギロリと睨んで不満を表すが、トリューの含み笑いを助長させるだけだった。



「……人に戻りませんか?」


『フシャーーーーーーーーーーーーーー!!』

( 誰がーーーーーーーーーーーーーーっ!!)



毛を逆立て爪を立て牙を剥いて威嚇するもトリューはくつくつと笑い意にも介さない。

フイッとそっぽを向きツーン!とトリューを無視する。


見回せば黒マントが後ろに控え逃げ出せる隙は無さそうだ。



トリューはあの手この手と私を引き入れようと油口の口巧者の口説の甘言を並び立て、私はウンザリして聞き流していた。


寝るが勝ち。とばかりに私はトリューを無視して寝台の下に潜ると身体を丸め眠りについた。





猫生活も数日が過ぎた。


私とトリューの根比べになっているが、気にしたら負けだと思い、猫生活に甘んじていた。

隙を見て脱走を企てたが黒マントに阻まれ部屋に逆戻りとなった。


だがある日トリューに連れられて馬車で何処かへ連れられた。

猫の私は結界つきの籠に閉じ込められ運ばれる様は、ジジか!とツッコミたい状況だ。



着いた先は、王宮だった。


揺れる籠の中からでは状況も分らず気が付けば一度来た事のある豪奢な部屋に入っていた。シャルトとの庭園散策中にトリューに呼ばれ質疑された部屋だ。




そこへ来たのは豪華な衣装を着た人物。

歳は五十前後か貫禄と威厳を醸し出し、正に威風堂々だ。


「トリュー待たせたな。要件は何だ?」

「いえ、お目通り叶い感謝致します。少々込み入った話となります。陛下をお呼びたてしました事を謝罪致します。申し訳御座いません」

「わざわざ我を呼ぶのだ。余程の事であろうな?」

「御意にございます。でなくば畏れ多くも陛下をお呼びするなど出来ませぬ」


トリューが敬う相手などそうは居ない。しかも陛下と呼んだ。

国王か!?と思うと共にディルムンの兄弟だと思い私はしげしげと国王を眺めた。


渋くて柔和なディルムン?そんな雰囲気でありながら髪の色も違い、なんだか似ているとは思えなかった。


(こんなにジロジロ見れるのは猫だからよね。人だったら不敬罪で捕まるわね〜)


やる事も無く檻の中で不貞腐っていると陛下と目があった。


「トリュー、何故猫を?」

訝しむ陛下にトリューは暫し待つ様に陛下に言った。


「陛下も中々の役者振りで、このトリュー心眼の磨き治しを精進しなければと改めた所です」

「改まった物言いは要らん」


陛下はメンドくさいとばかりに顰め面になる。


(うん。その顔ディルムンに似てるわ)


顰め面の陛下は、改まった気配が無くなり雰囲気が変わった。

作り顔は胡散臭くてディルムンに似てない事に気が付き納得している私をトリューは面白そうに眺めていた。


「よく上手に私を謀りましたね?」

「敵を騙すには、まず味方から。と言うからな」

「成る程。流石陛下ですな」

陛下は騙されていた割には楽しげなトリューを面白そうに見つめた。


「ははは。渾身の演技も国王の仕事のうちだからな」

陛下は和やかにトリューに笑みを浮かべるも目が笑って無い。


私は化け狐と大狸の化し合いを半目で眺めていた。



そこへメイドが来訪者を告げた。


「陛下。役者が揃いました」


トリューは不敵で胡散臭い笑みを浮かべた。




***********




リラが行方不明になって数日。


殺伐とした騎士団の会議室。


リラを捜索するも杳として行方が知れ無い。

警備兵が巡回するもリラは見つから無い。

リラが本当に街の中に居るのかも分からないのだ。


「リラは……戻ってくるかな…………」

シーニアは瞑目し、祈る様に手を組み項垂れた。


「リラは人に迷惑をかけるくらいなら死を選ぶと言っていたからな」

自己責任だとリラは言っていた。とディルムンはラグドを一瞥し聞かせる様に言葉にした。


ラグドは長い溜め息を吐くと深く項垂れた。




シャルトは前にリラが攫われた際、彼女の強い魔力を探索する術式を研究していた。それの研究を再開した。


そんな研究室に篭るシャルトに手紙が届けられた。


[王宮にて待つ]


ただそれだけの手紙。

だが、手紙の最後に押された印。


それは、猫の肉球だった。



シャルトは手紙を握り締め、リラの捜索に奔走している騎士団に向かう。

ブランブルに手紙を見せシャルトは王宮に向かう。ブランブルは捜索の後始末にシーニアとラグドに任しディルムンをシャルトに同行させた。


二人は馬車で王宮に向かい差出人のトリューの元へ急いだ。





「父上!どう言うつもりです!」

「トリュー!リラを何処にした!」


トリューの宰相執務室にシャルトとディルムンは飛び込む様に押入った。

ドアの前で待ち構えていたトリューはシャルトとディルムンの二人から開口一番怒号に晒された。



「まあ、二人共落ち着け」

諌める言葉を発する人物に気がつき二人が顔を向けた。


「陛下!?」

「兄上!」


「これで役者が揃いましたね」

トリューは楽しげに目を細めた。





トリューが変に動いて予想外(^_^;

オッサン動かすつもりなかったのに(*_*)


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