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ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第二部
56/85

12 ニャンコと舞踏会と出会いと


このところ、騎士団は慌ただしい。



国中が王女クラーレット様の婚約に湧いている。


ディジェム・レド・イシェルワ国王には三人の子供がいる。

王太子の王子21歳。

第一王女クラーレット19歳。

第二王女シャスティーン17歳。


この度、フォルニアスと国交復活に向け、クラーレット王女がフォルニアスに嫁ぐ事が決まった。


クラーレット様は隣国フォルニアス国の第一王子と婚約する事となり、それに伴いフォルニアス国王名代として、第三王子が書状を持ってくるそうだ。

大国であるフォルニアス相手の準備に近衛騎士団、騎士団、魔術師団共々警備に奔走し、ハチの巣を突いた様な騒ぎになっている。



婚姻で国家間の力関係や取引きをするのは現代人には理解ができない。

王太后もレイニアン国の王女で王族同士の結婚は大変なようだ。




国境警備、街道警備、街警備に様々総動員で警備計画を立てブランブルが書類に埋まっているのを見かけた。





私の日々は相変わらず、計算とシャルトとの魔術練習に追われる毎日だ。



季節も初夏に向い過ごしやすい毎日で山々が風に吹かれている。


………山々よ。風に吹き飛ばされてしまえーー!



「…………無駄口叩かず計算しろ」


ディルムンが呆れている。

珍しいものが見れた気分だ。


「………喋ってました?」

「ダダ漏れだ………」


羞恥に机に突っ伏したが、早くやれ。とディルムンは容赦無い。


私は書類の山々を前に溜め息をついた。





婚約に向け順調に準備は進みフォルニアス第三王子が到着し、無事フォルニアス国の第一王子とクラーレット様の婚約は滞り無く済んだそうだ。




「ちょっと!?シャルト??どう言う事!!?」


ただ今私はシャルトに拉致られて別邸に向かっている。


「すみません。事前に言うとブランブル団長に阻止されますので当日ですみません」

「すみません二回言っても許せません!帰ります!無理です!困ります!」

「リラしか居ないのです」

馬車の中で押し問答するも無情にも到着すると侍女達に捕まり部屋に連行された。



婚約後はお披露目の舞踏会があるそうで、シャルトのパートナーを当日押し付けられた。

断るも拉致られ、ただ今丸洗いされています。


他人に身体を洗われるなんてあり得ないーー!

何度目かだけど慣れないのよーーーーー!!



疲労困憊でも次は着替え。

赤紫のベアトップドレスでシルクをベースにビーズ、ビジュー、スパンコール、パール、あらゆる装飾品が豪華に彩られ刺繍されている。

しかもコルセットガチガチで締められた。パニエも着けロングドレスで動きにくい。

髪も結い上げられベアトップだから首周りと背中の露出が恥ずかしい。髪飾りはドレスと同じデザインの装飾で飾られ、首には花をモチーフにした紅玉の首飾りと耳飾りのセット。

化粧もバッチリ。

流石プロですね。

別人ですよ。きっとこれ私じゃ無いわ……。

詐欺に近いメイクをして貰い少し気持ちが………絆されませーん!


「シャルト!私行かないわよ!舞踏会なんて!」

そんな簡単に絆されるません!


「すみませんリラ。貴女しか居ないのです」

手を握られ妖艶な雰囲気を漂わせ憂う瞳に懇願される。私を助けると思って。と愁眉を曇らせ迫られる。


「作法もルールも分かりません。失礼になります!」

「大丈夫です。私は嫡男では無いので表立って動きません。4男の扱いは軽いのですよ」

だから安心して?と言われても無理です。


私は手を引かれ腰に手を回され抱き締められて耳に囁かれる。触れられビクリとするも逃げられ無い。


「もう、貴女しか居ないのです」


何度も言われる、貴女しか。

シャルトの気持ちを信じきれていない私は疑ってしまう。


「それにしても、今日のリラは美しい。艶めいている姿を他に見せたく無いですね」

私の顎を掬い上げ視線を合わせられた。


「たおやかな身のこなしに優美な面持ちに少し幼さが入り混じり、それでいて知的な瞳が私を離さ無い」

甘い賛辞に身悶えしそうになった所で行く時間らしく私は手を繋がれ引かれれば諦めてなすがままとなった。


道中馬車の中でも囁かれ羞恥は限界突破しそうで私の顔は茹でられ状態だ。

始まる前からこんな状態では保ちません。


それも会場に着いたら搔き消える緊張感に涙が出そうだ。



馬車を降りてからの人々の視線の凄さに針のむしろを体感する。余りの怖さにシャルトの組んだ腕に縋ってしまった。

人の目がこんなに痛く刺さる事など初めてだ。

私の震える手をシャルトは撫でると優しく私を見つめた。


「まずは挨拶に行かせてくださいね」

肩を落とし私に謝ると人混みの中に進んだ。


進んだ先には、パパがいた。

私のパパじゃない。当然だが。

シャルトパパだ。


「おや?シャルト、リラさんと一緒ですか」

「こんばんは父上」

「やあ、リラさん。シャルトと一緒とは嬉しいですね」

「……宰相様には、その節はお世話になりました」

嫌味の様に棒読みの台詞で、作り笑いの満面の笑みで返せば、トリューにくつくつ笑われる。シャルトそっくりで見てて腹が立つ。

その隣でやっぱりシャルトに似た人が驚いている。


「ああ、嫡男のティリーだ。ティリーこの女性はシャルトの恋人のリラさんだ」

「違います!!パートナーにって拉致られだだけです!!」


トリューの紹介に私は全力否定するもシャルトに腕で囲われ、私の気持ちはいつ伝わるのでしょうか?と迫られ身を縮めて困っているとティリーが、シャルトその辺で止しなさい。と止めてくれた。

ティリーに、ありがとうございます。とお礼を言うと苦笑いをされた。



会場には沢山の人がいるが、やはり視線がチラチラ……いや、ギラギラと刺す視線が……特に女性の目が怖い。


「リラ離れないで下さいね?何されるか分かりませんよ?」

私は首をコクコク頷きシャルトの腕に掴まった。

目立たぬ様に壁際に来たがやはり視線が痛い。


「婚約発表を王がなさりクラーレット様が挨拶をして隣国の王子も演説します。それが終わったら演奏が始まりダンスになります」

一曲踊りませんか?と誘われるもお断りします。

シャルトは、残念。と笑っている。

私は、ここに来ただけで精一杯です。と答えると、すみません。とシャルトは肩を落としていた。



「これはシャルト様お久しぶりです」

「これはナブラウ・ドラシェ侯爵、ご無沙汰をしております」

「お珍しいですね。最近はお見掛けしませんでしたのに」

そう言うと私を一瞥する紳士。


「想い人を口説くのに夢中でして」

「ほう。それはそれは」

二人は楽しそうな目で見ていますが、私は知りません。と目を逸らした。


「ご紹介に預かっても宜しいですかな?」

「まだ口説けておりませんのでまた後日に。口説けた暁には」

妖艶に笑うシャルトに穏やかに笑う紳士。

狐と狸の化かし合いを冷やかに見学していると、王様がお出ましになった。



「本日は我が娘クラーレットの婚約を皆の前で報告する。隣国フォルニアスとの絆をより堅固なものとし、両国共に栄光と発展を遂げていきたい。皆もこの婚約を祝福し両国の未来を祝おう。クラーレット、両国の為に頼んだぞ」

「本日の婚約を持ってフォルニアスに嫁ぐ事となりました。両国の架け橋になれるよう努力する所存です」


若干19歳がシッカリ挨拶しているのに感心する。私23歳初舞踏会でビビってます。


「この婚約で両国に安寧たる礎にならん事を願います」


隣国王子は挨拶が短い。

校長先生の朝礼みたいだと長くて貧血になるからね。短いのは助かります。


前に王族が並び王が、婚約を祝して宴を!と言うと演奏が始まった。


周りは背が高く、王様達は良く見えなかったけどノルマ達成よね?


「シャルト、もう帰ってよい?演説までって言ってたよね?」

「リラ、ドレスの貴女をもう少し堪能させて貰えませんか?」

せめて一曲?シャルトから嘆願されるも、ダンスは無理です。

スッパリ言い切るとシャルトは、では…。と私を中庭のテラスに連れ出した。

石畳が続きその先に庭園がある。



「ここで一曲宜しいですか?」

誰もいないテラスでシャルトは一礼して手を差し出す。会場内から漏れ聞こえる曲がテラスにも流れてくる。

肩を落とし、仕方ない。と手を取るとシャルトに抱き込まれ密着され息を飲む。

手を取り腰に手回され腕に抱き込まれシャルトの息遣いを耳元で感じて視線が泳ぐ。


「リラ顔を上げて?私を見つめて?でないと、耳にキスしますよ?」

「ええぇ!?」

驚いて見上げれぱ蕩けそうな程熱く熱を帯びた瞳で妖艶に微笑むシャルトに視線だけで真っ白になる。

目を逸らせたらキスしますよ?と言われ逸らしたくても逸らせ無い。

シャルトの熱に充てられ思考が溶けてゆく様な感覚になる。

ダンスが終わるも私の顔の熱は収まらずシャルトからクスッと笑われ頬と耳を更に赤らめままま顔を逸らした。


「飲み物をお持ちします」

シャルトはそう言うと会場内に向かった。


顔が、見れなかった……。



私はテラスにある席に腰掛け空を見上げた。

夜の帳が下り月が輝く。

夜風が火照った頬を撫で気持ち良かった。


見上げる月に庭園から花が香る。

花の香りに祖母と故郷を思い出し口ずさむのはやっぱり、ふるさと。



♩♩♩♪〜♩♩♪♫♩〜♩♩♩ー♩ー♪♩♩♩♩ー…



鼻歌交じりで口ずさむ。



祖母がよく歌っていた昔懐かしのメロディー。

口ずさみながら庭の草むしりをしたり、花に水やりをしたのを思い出す。


泣かずに口ずさめる様になったのはいつの頃だろう………。

懐かしさに口ずさみ泣いていたのは………




(………………?)



人の気配で振り向けば背後に赤い髪の美丈夫が立っていた。


ただ、尋常じゃ無い雰囲気を感じ私は椅子から腰を上げ逃げ足を運びかけた、その時


「……君が、歌ったの?」


歌?あの鼻歌交じりをこの赤髪の男に聞かれていたのかと、私は恥ずかしくて赤面するも眼前の男はじりじり詰め寄る。

私は会場内に逃げ込もうとソロリソロリと足を運んでいると急に距離を詰められ腕を掴まれた。

悲鳴を上げるその前に男は言った。


「ふるさとだよね?」

「!!?」


驚愕し目を見開いて見つめ合っていた。

震える声で私は、貴方は誰?と絞り出した。その時……



「何をされているのですか!!?」

私の背後から現れ、私と男の間に割って入ってた人物は……




「ディルムンさん?」

「リラ!?」


ディルムンの声は珍しく動揺している。

「リラ何故ここに?」

「シャルトに拉致られて……」

困り顔で答えればディルムンは、策士め!と唸った。


「ディルムン殿下は彼女をご存知で?」

目の前の男から剣呑な雰囲気を感じディルムンが私を背中に庇った。

その大きな背中はあの時と同じで胸に迫った。


「レンブラント王子は何故彼女に?」

ディルムンは厳しい声色で詰問した。

王子?短い演説の?と私はディルムンの背中から覗き見た。

王子と呼ばれた男はディルムンを一瞥すると私と目が合った。



「貴女は、誰だ?」




◉ティリー・メイフェイア

トリューの息子で、メイフェイア家嫡男。

宰相補佐官になりトリューの後を継ぐ予定。

シャルトの兄。

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