11 ニャンコと居場所と迎えと
プロットの変更で書き直ししながらの投稿の為、話数が少ないです。
元々プロットがブレブレの話しがフニャフニャにならない様に頑張ります(^_^;)
翌朝、侍女に起こされ着替えさせられた。
ウエストをリボンで締める藤色のキャミソールドレスでビジューや刺繍が入ったプリンセスラインの裾は捌きにくくて歩きにくい。
疲れた顔で朝食に向かえばトリューに、浮かない顔ですね?よく眠れませんでしたか?と聞かれる。
「気疲れですから帰れば治ります」
嫌味を言うもトリューは穏やかに笑い躱す。
食後にまた部屋に案内をされお茶にされる。
私はまた質疑の応酬の開始かと気落ちした。
「貴女にとって騎士団とはなんですか?」
今までとは趣旨の違う質問に意味が分からず首を傾げればトリューは不敵な笑みを浮かべた。
「騎士団では貴女を護りきれていません。違いますか?」
「……何を言いたいのか分かりませんが、私は騎士団に居させて貰っているのです。私の仕事場でもありますから」
トリューが何を言いたいのか分からないが騎士団にしか居場所の無い私には騎士団は砦の様なもの。
触られたく無い話題だ。
「私が貴女を護ります」
「仰っている意味が分かりませんが?」
私は剣呑な目でトリューを見つめた。
「貴女が刃を向けられたのは我がメイフェイア家と関わり有りと見られ狙われました。もう、貴女は無関係には見られ無い立場になっています。分かりやすく申し上げれば、貴女に何かあればメイフェイア家が動くと見られているのですよ?」
初めて知る事実に驚き私は言葉を無くした。
「騎士団ではなくメイフェイア家が貴女を護り、私が貴女の後見人になります」
よく考えて頂けませんか?とトリューは言い残し席を立った。
一人残され茫然としていた。
与えられた部屋に戻り考えあぐねて気落ちしていた。
自分の居場所を無くしてしまいそうな恐怖感に身を竦めてしまう。
やっと騎士団での生活になれ顔見知りができ、仕事も順調に慣れてきたのに。ディルムンにも頼りにしていると言われ、やっと居場所が出来た様な安心感を感じていたが。再び独りになる孤独感に押し潰されそうな感覚に襲われソファーにうずくまり身を縮めた。
昨日の会話は前振りでしか無かったのだ。
本命は、これだ…………。
トリューは本当に私の後見人になるつもりなのだろうか?
公爵の権威がどれ程か分からないがこのまま話が進み騎士団と離れたら、誰も私の事など…………。
膝を抱え顔を埋め涙を堪えた。
*
昼食は食欲が無いと断り部屋にこもっていた。
まんじりともせず寝台に横になり虚ろに天蓋を眺めた。
私が騎士団に居ればメイフェイア家絡みで何かあると騎士団も巻き込まれる。
ディルムンが毒を受けた様に……。
脳裏に毒で苦しむ姿を浮かべ目を固く瞑る。
血の海が路地に広がり横たわる死体。
噎せ返る血の匂いを思い出し身を縮める。
騎士団に居れば巻き込む。
獣化術についても、どれ程貴重なのか見当もつかないが狙われるのは確実か。
思考の渦に飲み込まれ時間だけが過ぎてゆく。
窓際のカウチに腰掛け外を眺めると外は日が傾き夕暮れが迫り空に色が付き始めた。
………………覚悟を決めなければ。
怪我人が増え最悪誰かが命を落とす。
溜め息を付き自分の決意に眉間を寄せ項垂れているとドアの外が騒がしいのに気が付いた。
ーーバタン!!
ドアが勢い良く開け放たれた。
そこに立つ人物は……
「ディルムンさん!?」
何故?と思うもディルムンはズカズカと近づくと私の前に立っている。
「……帰るぞ」
ディルムンは座っていた私の手を取り引き上げた。
……でも。と言い淀む私にディルムンは視線を細めた。
「ここに残りたいのか?」
首を振るが今の私にはディルムンの顔が見れ無い。
「私が居れば……騎士団を、巻き込みます……だから」
「リラの気持ちはどうしたい?残るか帰るか」
ディルムンの容赦無いハッキリした口調に先程決めた決意が揺れる。
「私が居て……誰か怪我を負うのはイヤです。ディルムンさんも毒を受けて…
「残りたいか?帰りたいか?」
私の言葉を遮りディルムンは再度聞いた。
「リラの気持ちを答えろ」
ディルムンの言葉が私に刺さる。
俯いたまま絞り出す様に、私は答えた。
「…………帰り、たい」
ディルムンは深く息を吐き私の肩を抱き寄せた。
抱き寄せられた安心感で私はディルムンの胸元に額を寄せた。私の肩に置かれた手の温もりに視界が揺れるのが分かった。
「……連れて帰る。リラには俺の短剣を渡してある。それで充分だろ?」
「本気で?」
「でなければ渡さない」
「畏まりました。数々のご無礼、失礼致しました」
トリューは胸に手を当てディルムンに恭しく儀礼的な挨拶をした。
ディルムンは私の手を握り引くとドアへ向かった。私は無言で手を引かれディルムンを後ろから見上げた。
上背の高いディルムン背中。鍛えられた躯体で大きな手に引かれながら見慣れ無い制服に視線を向けた。
今のディルムンはいつもの濃紺の隊服とは違い、白い制服に金糸の肩章に金モールが施された襟や袖。
公爵は爵位のトップで、宰相なトリュー。
いくら騎士団とはいえ、簡単に接見出来る相手だとは思えない。たぶん正装して公爵邸へ迎えに来てくれた事に私は胸が詰まった。
ディルムンと馬車に乗り込み私はトリュー公爵の屋敷を後にする。
騎士団以外で夜を明かす事は初めての事。
解放された事に私は深く息を吐いた。
「……大丈夫か?」
「………迎えに来て頂きありがとうございました」
向かいに座るディルムンに身体を向けお礼を言う。
ディルムンは腕を組み前を見たままだ。
「………ご迷惑をお掛けしました」
項垂れるように頭を下げ顔を上げるとディルムンは私に向いていた。
「迷惑ではない。だから迎えに来た」
ディルムンの飾らない朴訥な言葉は私に素直に染み込む。
迷惑ではない。その言葉が私の心を溶かす様に温めた。ディルムンに見つめられ安堵から肩の力が抜けクタリと背凭れに身を預けた。
「どうした?」
「疲れました………」
「そうか。着くまで休め」
ディルムンはそう言うと隊服の上着を脱ぎ、夜風で冷える。と私に渡すとまた腕を組み前を向き目を瞑った。
私は渡された上着を羽織ると服に残る暖かさに温められた。温められた安心感、私はその理由に気が付かない様に蓋をした。
馬車に揺られ時折ディルムンを目端に捉え先程の事を思い起こすと、私の脳裏を様々掠めていた。
( ディルムンとトリューが短剣どうのって言ってたけど…何の事だろ?それに………トリューがディルムンに敬語?儀礼的にしていたのは……?)
答えの出ない疑問を思い浮かべても始まらないと私は疲れた精神の休息に目を閉じた。
馬車が騎士団本館玄関に着くとブランブルが出迎えてくれた。
「無事お姫様奪還か」
ディルムンは無言でブランブルを一瞥しブランブルはニヤリと笑っている。
「ご迷惑をお掛けしました。お手数おかけしてすみませんでした」
私は頭を下げるとブランブルは、頼れと言ったろ?と私の頭を撫でる。
「こう言う時は、ただいまでいいんだよ」
ブランブルの大らかな言動が私が騎士団に帰ってきた事を感じさせてくれた。
「まず休め。話は明日だ」
ブランブルに見送られ宿舎までディルムンが送ってくれた。
私は借りた上着をディルムンに渡し、ありがとうございました。と視線を向けると、ディルムンは、ふと口元を緩め、ゆっくり休めよ。と言うと帰って行った。
私は部屋に入り何時もの見慣れた景色に視界が揺れた。
ーー帰ってこれた。
たった一晩離れただけ。
それがどんなに不安に駆られたか分からない。
此処は私にとって大切な拠り所。
その想いのまま寝台に横になり安堵から眠りに付いた。




