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ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第二部
52/85

9 ニャンコと訓練と


今日の私は一日休み。


私は身軽な服を選び、ブラウスに乗馬用パンツ、ショートジレにジャケットを羽織った。髪は結い上げ纏め身支度を済ませる。手早く朝食を終わらせ騎士団の正門に向かう。



「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

「おはようございます。こちらこそ、協力出来る事があるのは嬉しい限りです」

迎えに来てくれたシャルトにお辞儀をして挨拶をすると馬車に乗った。



ーー私は魔術の習得を本格的に始めた。




「これから魔術師団に向かいますが、一応このローブを着てください。身分証代わりです」


濃紺のフード付きのケープで腰丈で背中に銀糸の刺繍が入っている。ローブを羽織り馬車を降りた。


魔術師団に着くと装飾の施された通路を通り部屋に案内された。

ドアを叩きシャルトと入室すると人がいた。


「おはようございます。彼女がリラです。魔術を教えますので訓練所借りますよ」

「申請はしてあるな?」

「勿論」

頷いた相手はシャルトから私に視線を移し、私は慌ててお辞儀をして挨拶をする。


「リラ・トゥーノです。今日はお世話になります」

「私は魔術師団第1部隊隊長ネベロ・フィルンと申します。お見知り置きを」

「では、リラ行きますよ」

「お前はせっかちだなぁ……」


隊長の呆れ顔には気にも留めず、シャルトはリラの手を取りドアに向かった。挨拶を交わすと用事は済んだとばかりにシャルトは部屋を後にした。


魔術師団の敷地内にある大きな建物に入ると中は砂地で壁面には様々な文様が描かれている。

シャルトは丈の長いローブを羽織り中程まで進んだ。


「ここで魔力の使い方を教えます。結界が壁面に描かれているので外に影響しません」


なるほど。と高い天井を見上げ納得するとシャルトは私の両手を取った。


「これからリラに私の魔力を流します。感じ取れますか?」


目を瞑り手に意識を集中すると、カールさんに治療して貰った時と同じ様な感覚になった。


「仄かに暖かい感じがします」

「それが魔力になります」


他人の魔力を初めてで感じ取れるのは流石ですね。とシャルトに言われ、私はリアンの記憶の事を話した。


「知識はあるみたいで、術式が書かれたリボンが頭に浮かんでくると術が使えるみたいなんです。だから獣化も…

シャルトは指で私の唇を押さえ言葉を遮った。


シャルトは首を振り人差し指を唇に当てると、ソレは秘密です。と目配せされた。

私は頷くと話を続けた。


「力の使い方が分からなくて……魔力の制御を教えてください」

「リアンの知識が刻まれている訳ですね。術具が必要無いとは凄いですね」


まずは試してみましょう。そう言うとシャルトが私の背後に回り背中から抱きしめた。

私が焦って、シ、シャルト?と声を裏返しているのを聞いたシャルトはクスリと笑う。


「制御補助します。両手を前に出して下さい。手に添えますからこの体勢は我慢して下さいね」


シャルトの腕の中で戸惑いながら両手を前に出すと私を覆う様にシャルトの両腕が出され手の甲に添えられる。


耳元で喋られつい身動ぎしてしまうとシャルトにくつくつ笑われ、それも擽ったくて我慢を強いられた。


「では、何か術式を思い浮かべられますか?」

「え、と。ちょっと待って下さいね」

状況が状況で困惑動揺して思考が纏まらないのを私は目を瞑り無理やり集中する。


思い浮かべるのは、漂うリボン。

暗い中で揺れる光りを辿り赤く光るリボンを手にする。


「ー火炎ー」


その言葉と共に手の前に揺らめく炎が現れた。



手の平に熱を感じ手の甲にシャルトからの魔力も感じる。

「で、出来た……」

「初めてで発動するとは……」

シャルトは感嘆の声で呟く。


「魔力の流れも安定していましたから暴発の危険もありませんね」

私は出来た事に驚き声も無く炎を見つめていた。


「魔力の流れを切れば術が消えます。意識を集中して魔力を止める事が出来ますか?」

言われた通り集中して流れを感じ、手を閉じる様なイメージをすると手に感じていた熱が消えた。


「まずは初めての術式成功おめでとうございます」


成功の余韻に浸るも耳元が擽ったいのが困る。早く離れて欲しいがシャルトは離す気が無い様だ。


「この感覚を忘れない内に何度も発動してみて下さい」


離さないのではなくて指導がまだ続くのね。と納得するも、まだ続くこの体勢が困る。シャルトの息遣いが伝わり集中が切れそうだ。


「……分かりました」


私は呼吸を整え意識を集中し、再び赤く光るリボンを思い浮かべる。魔力の流れを感じる為手に意識するも先程のシャルトの息遣いを思い出してしまい、集中が揺らぐ。


その時、先程とは違う熱さを手の平に感じ溢れる様な勢いを感じた瞬間シャルトに覆い被された。


爆発音が響き、熱は消えた。


シャルトはローブで私を囲い爆発から守ってくれていた。


「防御術が織り込まれたローブですからこの位の爆発は大丈夫ですよ。万が一の時は結界張りますら安心して練習して下さいね」


シャルトは平然としている。

私の集中力が乱れ被害が出る可能性に戦慄して手を握り締めた。

気を引き締め、再び体勢を整え術を発動させる。

先程より少し大きな炎を出し、消す。


何度か繰り返し魔力の流れに慣れて下さい。と言われ集中力が続くまで何度も繰り返した。


流石に息が上がり休憩する事になった。


シャルトはお茶を持って来ますね。と言い残して行った。






ドア近くに設置されているベンチに腰掛けて休んでいると外から声が聞こえた。


「今日貸切だとよ」

「誰が?」

「知らねえ」

「シャルト様だとよ」

「あ?さっきシャルト様食堂に向かってたぜ?」

「あー、なら今空いてんじゃね?」

「マズイだろ」

「ちょっとだよ」


聞こえてきた会話が耳に入り、え?来るの!?と思い困っている所にドアは開かれ闖入者達と目が合ってしまった。


「あ、 ………」


「………………」

「………………」

「………………」



シャルトとは色の違う制服を着た三人。

目を見開いたまま、身動きが取れず冷や汗が背筋を伝った。


闖入者三人にガン見され、一人が近づいた。

「あんた誰だ?」

「……部外者だろ?」

「シャルト様の愛人?」


矢継ぎ早に質問され動転する私に構わず三人は詰め寄ってきた。


「部外者のあんたが貸切とは生意気だなぁ」

「こんなショボいヤツが愛人?無理じゃね?」


三人に笑われ嫌な目付きで見下される。

男三人に囲まれ見下され威圧感を感じたが、何時も騎士団で筋骨隆々な躯体を見慣れている私には眼前はヒョロイ、いや日本人に比べたらいい身体つきだが、見比べる相手が悪いのか迫力に欠ける。

戸惑い困惑していたらドアからシャルトの声が聞こえた。


「リラ、ピアスを取って下さい。片方だけ」


その声に皆が固まる。

私がピアスを取ると三人の顔色が変わった。

私から漏れ出ているらしい魔力の気配に目を見開いている様だ。


「片方で十分ですね」


シャルトは妖艶に冷笑すると三人に向き合った。


「今日は貸切ですがご存知なかった様ですね。お引き取り頂けますか?」


シャルトは私と三人の間に立ち、見えるのはシャルトの背中と青い顔した三人。


シャルトから醸し出される冷気を伴う口調に、失礼致しました。と謝罪すると三人は脱兎の如く去って行った。



「大丈夫でしたか?置いて行かず、連れて行けば良かったですね……」

「大丈夫ですよ?騎士団の皆を見慣れていると怖くなかったですし」


笑っているとシャルトは肩を落とし、お茶にしますか?とバスケットを出した。

ベンチに座りお茶を飲みながら自分の手を見る。


「魔力の気配が少しずつ分かる様になりました」

「今、ピアスを外していますが自分の中での流れを感じますか?」

「はい。流れる量が増えて分かりやすくなりましたが、制御は難しそうですね」

「体感するのも大切です。ですが今はピアスを付けて制御に慣れて下さいね」


日々訓練です。とシャルトに言われ苦笑いをした。



休憩を挟み挟み練習を繰り返す。

魔力の練度を上げ集中するが、制御より集中の方が難しい。



お昼にはシャルトが持って来てくれたバスケットにサンドウィッチが用事されていた。

食事を済ませ再び練習に入る。



「では、次は補助無しでやってみて下さい。暴発しても結界を張りますので安心して試して下さいね」


ずっと補助してたかったのですが。と付け加えられ困惑するも、集中して下さい。と指導を受ける。


集中乱す事言うのシャルトじゃん。とごちりながら両手を前に出し意識し集中する。



先程より練度が必要で倍疲れる様に感じた。


日が傾く前に練習は終わった。

慣れない事に精神的に疲れた。

シャルトはそれを見越して早目に切り上げてくれたようだ。

「思ったより疲れているはずですから、早目に休んで下さいね」

「はい。分かりました。今日は朝からありがとうございました」

来た時と同じに馬車で戻るとシャルトはまた魔術師団に戻っていった。



早目に夕食を済ませ、早々に入浴を済ませ寝台に横になる。




今日の練習を反芻して思い出す。


魔力の流れと集中。

練習の中で…………シャルトの腕の中で。

…………。

うわー………思い返すと恥ずかしい…………。

いや、アレは練習の為、練習の為。


あ、……………私、告白されてたんだよね……………。

魔術を習う事にばかり集中してて忘れていた……。


つくづく、今の自分は恋愛精神に成れないのだと実感した。

確かに、美形に近寄られたら赤面するのは当然だし、接触したらドキドキもする。慣れない以上、意識してしまうのは仕方ないが、感情は別。

恋愛感情を意識していられない程、恋ができる状態でも場合でもないのだと瞑目した。



魔術を習う………それは…………

自分の身は自分で守らないと迷惑かける。

今は瑣末な感情に左右されている場合じゃ無い。


はーーー………。


何だか頭がイッパイだわーー………




微睡みながら考えているとあっと言う間に眠りについた。




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