32.5 ニャンコと付き添いと《シャルト視点》
リラが街に行く様だ。
リラが街に出るのにドウェルが警護を付ける相手を私にする様に “頼んで” いた。ドウェルは不承不承な顔をしていたが今のシャルトは構わない。
散歩に行くリラに同行する。
いまだに手に唇を落とせば赤くなり言葉を紡げば恥じらう初々しい反応に心が踊る。
散歩に街に出た様だが行く先々でリラに似合いそうな物が目に付きつい購入する。
呆れられるがリラに喜んで貰いたくて止められない。こんなに誰かに何かをしたいと思うなど久しく無い事で浮かれる自分に苦笑する。
道すがらの騒動にリラが覗き込み哀しげに顔を曇らせ憂いている。子爵令嬢の稚拙な行動のせいでリラは騎士団に戻る様だ。
恨むらくは、せっかくのリラとの時間に水を差したその子爵令嬢か。
リラと分かれドウェルに警護報告をしていると耳元で魔力が反応した。
リラの急激な魔力変動?そう思い報告するとすぐに宿舎に向かった。
ドウェルはブランブルに報告した。
リラの魔力の気配を探り方向を定める。街を歩いて追尾するが距離を離されるのが分かる。
移動速度を訝しんだ。
( 人の走る速さより早いが馬では街を突っ切れない。やはり獣化術で猫化した様ですね…………)
推理して辿り着く答えは先程の街での事。
リラの進む方向は王城西。
目的地はストラ子爵の別邸だろう。
そう結論付けると一旦騎士団に戻り報告する。
騎士団に戻ると慌ただしい様子に眉を顰めた。
報告にブランブルの所に向かえば慌ただしい理由が分かった。
リラ捜索に指示を始めていた。
シャルトはブランブルを制止し報告をする。
「リラの行方は掴んでいますのでご安心を。捜索は不要です」
そう伝えるとブランブルに睨まれ報告を促された。
「リラは獣化術で猫化して、今は王城西の森に向かっています。事を荒立てるのは得策ではありません。私が動きますので兵は下げて下さい」
リラ相手に無理はしませんよ?と微笑する。
私の薄ら笑いな微笑に目を顰めブランブルは、報告は密に。動ける様にしておく。と言い放つとシャルトは一礼し退室した。
向かうはリラの元だ。
馬に跨りピアスの魔力を確認しながら馬を駆る。
リラの魔力との距離をはかり様子を伺いながら追尾していると如何やらストラ子爵邸に着いた様だ。道に迷うと思ったが無事到着するとはリラには驚かされる。
森の茂みに馬と隠れ魔力の気配を察すると屋敷内にいる様だ。
暫く待っていると屋敷から走り去り道を逃走する黒い毛玉が見えた。懸命に走る後姿に笑うとリラを追った。
馬に跨りリラとの距離を取りつつ歩を進め街へと向かう。街へと付くと騒動のあった近くの詰所に馬を置き、ブランブルへの報告の伝達を頼むと件の家へと向かう。
日は傾き夕暮れとなり帰路につく人々に紛れリラを追う。
リラは目的の家の隣から様子を伺いながら玄関へと降りて扉を掻いている。リラは髪留めを置きすぐに扉から離れてた。
隠れ見ている黒い毛玉に微笑ましくも愛おしくもあり私は双眸を細めて見つめていた。
扉が開かれ髪留めが持ち主に戻った事を見届けたリラは路地に入ろうとしている。
( さて、リラのやりたかった事は終わった様子ですね?)
「リラ、満足しましたか?」
ビクリとして身動き取れずにいるリラを抱き締めると力が強すぎたのか前脚で顔を叩かれてしまいました。力加減が難しい。と思わず眉間に皺がよってしまった。
猫のリラは耳を下げて伏せ目がちに上目遣いでこちらを見つめている。
何時ものリラでソレをされたら理性に自信が持てなくなりそうですね。と思わず頭を過ぎり猫のリラで良かったと苦笑いをした。まずはリラは今私の腕の中に居る。
「無事で良かった」
騎士団に戻ると団長と隊長達に囲まれ固まっているリラは会議机の上に乗せられて項垂れていた。
リラを戻す様にブランブルと話しをしているとリラが鳴き始めた。
セレンが、リラ何か言いたいの?と聞いていると猫脚で身振り手振りを始めた。
セレンやシーニアと会話で頷く猫を眺めるのは何だか不思議な気分になる。
セレンがインクと紙を持って来ると爪にインクを付け、リラは掠れ掠れに文字を書く。
[自分で戻れる]
「リラ術具持って無いですよね?何故出来るのですか?」
リラは術具なしで術を使用している。
簡単な術なら術具無しでも魔力を大量に消費する代わりに出来なくは無い。だが獣化術は難易度の高い術であり術具無しなど考えられない。つい詰め寄りリラに聞くも答えは、ニャー。しか無いのは当たり前だ。
「まずは人に戻るのが先決だ」
ブランブルに言われ部屋に戻り術を解除する様だ。解除を観察したくて詰め寄ったがセレンに睨まれ諦めるしかない。
会議室に戻ったリラは謝罪後ブランブルに詰問され終始項垂れていた。
さて終わったらリラとジックリ話しをしなければいけないですね。
ふふふふふ。楽しみです。




