24 ニャンコと確保と解決と質疑と
「術士現着。詳細は転移陣にて後程報告が来ます」
その報告から数日後、転移陣にて一報が入る。
[解析終了。転移陣の転移先は魔術師団第1部隊隊長キムリ・ナギットの屋敷]
一報を受けたブランブルはシャルトを呼び寄せ程なくして呼ばれたシャルトがブランブルの部屋に入室した
ーーお前の上司のトコに踏み込むんだが一緒に来ちゃあくれねえか?
シャルトは前にブランブルにそう言われメイフェイア公爵専属私設団から魔術師を派遣し、転移陣の解析に行かせた。
そして今回、自身の同行の協力も受けた。中立の公爵の立場を揺るがし難い行動だが今のシャルトには迷いは無かった。
「お前さんのお陰で証拠が取れた。前に言った通り踏み込むが構わねぇな?」
「ええ、構いませんよ。アレの公爵への執着は酷かったのでこちらとしても清々します」
「ふっ。釣書責めか?」
ブランブルがニヤリと意地の悪い笑いをしているのをシャルトは苦々しく睨んだ。
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闇夜に紛れ木の葉籠る集団。
それとは別に夜の底を滑る様に騎馬が疾る。
城下の少し離れにあるキムリ・ナギット伯爵邸。
全ての門に人員を配し正門に立つはブランブル団長とシャルト。
「キムリ・ナギット伯爵の誘拐及び拉致監禁他の容疑にて連行する」
宣言と共に抵抗し剣を抜き歯向かう門番を切り伏せると騎士達を一気に突入させた。
シャルトは屋敷に掛けられた結界を解除し、電撃を放つ。激しい金属と金属がぶつかり合う音。響く足音に逃げ惑う従者やメイド。刃向かう者は斬り捨てられ邸内は鎮圧された。
キムリは地下通路を逃走中に捕縛された。
魔術師団第1部隊隊長キムリ・ナギット確保。
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夜の帳が降り深夜に街道を東に向け疾る一団。
馬車と荷車が多頭引きで闇を駆け抜ける。それを護る様に単騎が囲って馳る。
それを追うは騎馬の集団。迫合い馬上で剣を交える。馬車の中の一人が魔術で攻撃するも騎馬は強力な結界に護られている様で騎馬を止める事は出来ない。
シャルトに馬と騎士に魔法防御結界を張って貰っているのだ。
馬を寄せ剣を撃ち払い叩き落す。斬り結び剣を交える。魔術師の援護に邪魔をされるも護りの数は減り、荷馬車を諦め妨害に使うが騎馬の妨げにはならなかった。並走し御者を制し馬車を止めさせ制圧する。
宰相セルカーク・ガードゥン確保。
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犯人の自供により魔術師団第1部隊隊長キムリの関与が認められた。
物的証拠で転移陣の解析を提示するもキムリは反論するがメイフェイア家専属私設団の魔術師が挙げた証拠に意見も言えず罪状を認めた。捜査協力にメイフェイア公爵のシャルトが付いていれば苦言も邪魔もする事が出来ない。キムリは宰相から助けを出すから動かず屋敷にいる様に指示されていた様だ。宰相に囮にされた事で恨み辛みで全てを吐き罪状軽減を嘆願していた。
芋蔓式に、宰相の関与の証拠と証言が上がる。
リラ誘拐関与だけでは無く、数々の犯罪が明るみになった。
数々の罪状発覚により捕縛に向かうも逃走。セルカークはキムリを屋敷待機と命令して囮にし時間を稼ぎ逃走するも追尾され確保後に処断された。
他にもディルムンから王宮内の新たな情報としてもたらされ事件は一筋縄ではいかない様相となる。
「宰相、皇太后とレイニアンの繋がりが後宮で見つかった……」
ディルムンは疲労の濃い顔で溜め息をつく。
「諜報はドウェルの仕事なのにお前に頼んですまんな」
「……適材適所です」
ディルムンは渋い顔で顔を逸らせた。
宰相から、やっと繋がった後宮への証拠に二人は暫し瞑目した。
手出しの出来ない後宮にやっと断罪の手掛かりが掴めた。
レイニアンから嫁いだ皇太后の傍若無人は誰にも止められない。
二年前に前王崩御から息子である今の国王になってから皇太后の暴挙は加速した。
今回の誘拐は切っ掛けに過ぎず、これを皮切りに宰相から後宮にメスを入れる算段を着けなければならない。
「後、少しだな」
ブランブルは深く息を吐いた。
騎士団で扱いきれない案件となりブランブルはディルムンに一任した。
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宰相セルカーク処断に多くの混乱と不満が持ち上がった。
中立派であるメイフェイア公爵のシャルトが騎士団寄りの対応に対しての不満も一躍かっている。
だが国王は次期宰相にトリュー・メイフェイア公爵を指定した。国王の選定に意を唱える事も出来ず可決された。
日々紛糾し混乱する王宮議会。
事態の終息に将軍ダクティルが辞意を表明した。
混乱の終息と宰相セルカーク処断に対する不満の平定の為の辞意だ。
将軍は後任を近衛騎士団所属のメイフェイア公爵所縁の者、シュフォール・アクバール侯爵を次期将軍に選定し終結を計った。
将軍が後任に公爵所縁の者を選定したのは、騎士団と魔術師団の統合を任せるためだ。
軍事に政治が介入すると前線で指揮が乱れ無駄に兵が犠牲になるだけだ。
それでなくともセルカークの陰謀により騎士団と魔術師団の連携が絶た。皇太后が軍事力低下を狙い師団の分離をセルカークに指示をした事で軍備に支障が出た。そう成らぬ為にも中立派のメイフェイア公爵所縁の者を立てたのだ。
後任をメイフェイア公爵寄りの人物にしたため、政局の偏りに苦言を国王に呈すも意に介さない。要らぬ憶測で公爵を口さがなく言う者も居るが表立って言える訳もなく批判は立ち消えていった。
後に、ディルムンによってもたらされた宰相と後宮の繋がりが誘因となり後宮も揺るがし、皇太后は離宮幽閉の蟄居となり幕を閉じた。
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魔術師団は第1部隊隊長キムリの捕縛により事件終息後、新しい隊長選出に追われていた。
シャルトは隊長昇格を拒否し副隊長続行を表明し新隊長の選出には団長に一任した。
結局、魔術師団第1部隊第1班の班長ネベロ・フィルンを隊長に昇格させ事態は収束した。
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「なぜ隊長に昇格しなかった?」
新任の第1部隊隊長となったネベロはシャルトにに聞いた。
「忙しいと研究に差し触りが出るので昇格は困ります」
「……またそんな理由か。シャルト、君は元々魔力が高いのに何故ここにいる?宮廷魔術師トップにすら成れる実力なのに?」
「宮廷の煩わしい競争に興味はありません。制約の多い宮廷で自由には動けませんからね」
悪怯れるふうもなくシャルトは言うが、宮廷魔術師団は国内上位の魔力を誇るシャルトを宮廷に引き入れたい。今回の人事でどさくさに紛れシャルトを宮廷に移動させようとしていたくらいだ。
「自由に動けないとは、………それは騎士団派遣に関係しているのか?」
「ええ。そうですね。隊長が騎士団に入り浸ったままにはいきませんので副隊長のままが一番都合がいいのです」
しれっと自分都合で人事を振り回しているにも関わらずシャルトは飄々としたものだ。
ネベロも頭が痛いとばかりに眉間に手を当てシャルトに嘆願の視線を投げた。
「研究もいいがこちらの仕事を疎かにするなよ?」
シャルトは、本来の仕事は滞り無く済ませてます。と何処吹く風か牽制にもならずネベロは苦笑いをした。
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捕り物騒動後、メイフェイア領主、つまりは父であるトリュー・メイフェイアから召集が掛かりシャルトは本邸に帰った。
( 私設団私用に苦言でしょうね… )
シャルトはヤレヤレと肩を竦ませ溜め息をついた。
「どうした?今まで公爵を私用するなど無かったのに?」
「やりたい事が出来まして使用致しました」
「ほう。お前には珍しいな?そんなに彼女は興味を引く存在か?」
流石公爵。情報は筒抜けの様だ。
シャルトは核心を突く質問に動揺を押し切れず吃るも平静を装い作り笑いを浮かべる。
「…っ。ええ。この上無く」
「どの様な娘だ?」
「ご存知なのでは?」
「お前程では無いさ」
ゆったりとティーカップを手に取り口に付け微笑するトリューの表情の裏は読めない。手練手管の口巧者に誤魔化しも隠し事などできるはずも無い。
公爵の情報網でリラの事など掴んでいるだろうに。とシャルトは心の中でごちる。
「高い魔力の持ち主で、類稀な知識と教養。感嘆の声しか出せません」
シャルトはリラを思い浮かべ、ふと表情が緩む。
「容姿では無く中身を語るか……。お前がそこまで惚れ込むとは。ふふふ。面白いな」
( シャルトの表情が緩むとは随分だな )
夜の社交を飛び回る様に遊んでいた息子の変貌に興味もあるが微笑ましくもあり父親として感慨深く笑みを浮かべた。
「どんな娘か一度会って話をしてみたいものだな」
トリューの発言にシャルトは眉をひそめ、面倒くさい人物に目を付けられた。とシャルトはごちるとまた溜め息を付いた。
罪状状況とかちゃんと設定描ききれてないわ(ーー;)難しいです(;´д`)




