表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第一部
26/85

23 ニャンコと何時もと夢の先と


誘拐から政治に関わる問題にまで発展した事件は表向きには落ち着いた。


喧騒が静まりいつもの騎士団に戻ってきた。



連なる山々。

瞬く目に映る山の高さに目が眩む。

突けば崩れそうな峰を私は呆然と眺め、山が…………。と呟く。




「…………山が増えてます……」


「……………………………」


「2山を1/3まで減らしたのに!3山に増えてる!」


ディルムンはいつも通り無口無表情で黙々と書類にペンを走らせる。

私は不在中溜まった計算書類を目の前に頭を抱えた。


回復後、いつも通りディルムンの所で計算の日々が始まった。

宿舎に居るより騎士団本館に居る方が安全だとの判断で、居るなら計算。とのお達しだ。


いつも通りに変わらない皆の態度に感謝した。



騒動はまだ終わってはいないが私の日常はそれなりにいつも通りに戻ってきた。

書類は前より増えたが………


いつも通り計算して書き込み、計算して書き込む。


いつも通り。

それがどんなに大切か……………


いつもの世界を無くした私に

ここでのいつもの生活が戻る事に言い知れない想いが溢れた。

それを誤魔化す様に計算に打ち込んだ。



変わらない毎日を思って………………






そう……表向きはいつもの日々に。




だがまだ終わってはいないのだ。






私はブランブル団長に呼ばれ会議室へ向かう。


( 気が重い…… )


逃げたくなる様な気を奮い立たし足を運ぶ。



会議室のドアを叩き入室を促され室内に足を踏み入れれば、団長、隊長達勢揃いで待ち構えていた。


( 蛇に睨まれたカエル気分を何度も体験したくないわね…… )


血の気が引く気分を味わいながら意識を集中して足を進ませる。気を抜いたら震えて立ち止まりそうだからだ。


ブランブルに席を進められ着席するも皆からの視線が気になり落ち着かない。

シーニアとシャルトは心配そうな顔をしてこちらに視線を向け、セレンは目を眇め項垂れている。

バーマンとドウェルは目を閉じ腕を組み沈黙し、ディルムンは双眸鋭くこちらをチラリと見て視線を戻した。

一人見慣れない赤い髪の人がいるが、あれはたぶん国境警備で滅多に戻って来ないと言われている3番隊隊長だろう。


ブランブルが私の着席を確認し居住まいを正し厳しい顔で眼光鋭くこちらを見据えた。私も覚悟を決めブランブルに顔を向け視線が交じる。

ヒヤリと冷気が背筋を伝い恐怖心に身が竦んだ。


「リラ・トゥーノに問う。以前の質問に嘘偽り隠し事はないか?」

「?……ありません」

何を聞かれるかと思えば、何故前の事?意味が分からず私は首を傾げる。

「前回の真実に無い情報が出たのだが?」

「情報?」

私はやはり訳が分からず首を傾げればブランブルは更に眉間に深い皺を刻み、すうと目を細めた。

「リアン・シュベーフェルを知っているだろう」


ああ、それか…と私は合点がいった。


ブランブルの射殺さんばかりの眼光に血が引いた。私は震えるのを堪えなんとか意識を保ち言葉を絞った。


「……知ってます」

私の答えに空気が変わる。

ヒヤリとピリリと殺気の様な鋭い気配に息が止まる。


「嬢ちゃん隠してたんか?」

ブランブルの低い唸る様な声に震える手を握りしめ細く息を吐いた。

「違います」

「だが嬢ちゃんの自白証言には書かれてるが?」

今度こそ隠し事は許さん、とばかりに威嚇する様な語気に強く追求される。


私は目を閉じ深呼吸して視線を戻し話す。



ーー夢の中の先の真実ーー


「私は薬で眠らされた時に夢の中でリアンに会いました。仮死状態で死に近く、私の中に眠る魂のリアンに近づけたため記憶が出たみたいです。それまで思い出しもしませんでした。私は彼女の力で共に異界を渡りこの世界に来て、彼女は力を私に渡し、天に還りました」


ーーそれが自白剤で暴かれてしまった真実ーー



リアンの事を思い出したのは夢の中での事。

私はまだ記憶が朧げではっきりとはしていない。


「死にかけて思い出したって事か?」

「……はい、たぶん」

「リアンの事を聞かせてくれないか?」


先ほどとは違い幾分か雰囲気が和らいだブランブルに私は夢の中の話をした。



リアンの魔術失敗による暴走転移、生物転移術式、獣化、私の世界を話した。




「術の失敗で嬢ちゃんの世界に……」

ブランブルは表情無く呟いている。


偉大な大魔術師の失敗談。

流石に皆驚いたのか困惑している。

シャルトは、大魔術師リアンが失敗で?とブツブツ呟いている。


「もう無いな?」

ブランブルの睨みの入った詰問に私が肩を下げ息を吐いた。

「もう無いです」

「………………その言葉信じるぞ?」

ブランブルは大きく息を吐いくと目を閉じた。

そして目を開けると私を見つめ双眸を細めニヤリと笑う。


「嬢ちゃんの世界の戦さ事情についても聞きてぇんだが?」

「私、そんな事も喋らされたんですか……」

はぁ。と私は項垂れため息をつき、ブランブルに答える。


空を飛び、海を潜り、鉄の箱が大地を走る。

無難な説明に終始徹した。




ブランブルの興味津々な瞳が痛かった………。







私はブランブルにリアンの疑問を聞かれ、自白剤で暴露された真実の真相を説明した。

その後、近代兵器にまで話す事になり困惑した。

線引きが一番難しい知識を何処まで誤魔化して伝えるか頭を悩ました。



私はひとしきり話し、ブランブルから解放され休憩室で一休みしていると皆も集まり先程の話しの続きになってしまった。



ブランブルに近代兵器を根掘り葉掘り聞かれ、情報の線引きの難しさに頭を悩ませていたのに、今は初顔合わせの第1騎士団3番隊国境警備部隊隊長ラグド・ヴォルカンから質問責めを受けている。


「お嬢さんは色々知っているなあ。戦に剣を使わないみたいだが他には何使って闘うんだい?」

「それは…………、誘導尋問には引っかかりませんよ」

「違うよー。純粋な興味」

引っかからないぞ。とばかりに私は半目でジロリとラグドに視線を投げると興味津々で見つめられ、溜め息と共に肩を落とした。


「凄い知識でしょ?」

セレンは悪戯っぽい笑みを浮かべ楽しそうだ。

私は、一般常識です。と返すが、その基準が凄い。とラグドに驚かれる。

「私もその知識にあやかりたいですね」

シャルトは羨望の眼差しでこちらを見るが相手にすると面倒なのでスルーしておく。


ラグドの興味が尽きず質問が絶えない。

「お嬢さん貴族じゃないの?」

「一般人です。身分制度はありませんから」

「それだけの知識と教養と身体で?手足ヤワヤワだよ?」

「一人で生きていくには当たり前の知識ですから」

「一人で?女性が?」

「それが当たり前なんです。一人暮らしで料理洗濯家事して仕事します」

「令嬢はしないよ?」

ラグドは驚いて私を見ている。


「私は騎士団で訓練しているから出来るけど普通の御令嬢は出来ないわよね」

セレンは理解できないと言う風だ。


「全国民が一般人の庶民だから普通です。私もいつかその内ここも出ていく訳ですから」

「出てくの?」

「ずっとここに居られないし、お金貯まったら出るつもりです。騎士団に迷惑かけたくないですから」

「ま、まて、女が一人暮らしなんて」

ラグドは一人暮らしと聞いて慌てている。

慌てるラグドの言葉にシャルトが身を乗り出した。

「なら私の屋敷に来ませんか?貴女と夜通し語り合いたいです」

期待を込め、和かに双眸を細め柔らかく微笑むシャルト。


「ごめんなさい。お断りします。居候と同じで居心地悪過ぎます。一人がいいです」

私が即答すると唖然とするシャルトは能面の様に表情が無くなった。


「うわーー公爵ぶった切った。貴族垂涎の申し出を……」

「皆が喉から手が出るほどなのに……」

ラグドとセレンの呟きは聞かない事にした。



「くくく。面白いねーー。こんなんならマメに戻ればよかった。最初から見たかったねぇ。くくく」

ラグドは肩を揺らして笑っている。



「……危険だ」


それまで会話にも参加していなかったディルムンがポツリと呟いた。


「一人暮らしの女性なんて他にもいるでしょう?」

「そうだなぁ……」

私の質問に、数は少ないが居なくはないなあ。とラグドは呑気に答える。

「なら別にいいじゃない?私だけが特別じゃないわけだし」


「リラは特別だからダメ」

シーニアは真面目な顔で言う。


「お前の知識は貴重だ、確実にまた誘拐される」

ディルムンは無表情だが口調は厳しい。

「ま、魔術習うもん」

私は口を尖らせ不満気に反論するも賛同者は居ない。


「お嬢さん接近戦は無理だろ?」

「無理だよ。リラの力では抵抗出来ないよ?」

ラグドとシーニアは二人して否定する。



「お前は人を殺せない」


「…!」

「人の命を奪う覚悟が無いのに身を守れる訳が無い」

ディルムンの言葉は私の心に突き刺さった。



厳しい事実。

それから目をそらす事は出来ない。



一人項垂れ考え込むも答えは出ない。



「そんなに悩まないの。困ったら私に言ってね?妹が出来たみたいで嬉しいって言ったでしょ?一緒だったら楽しそうよね〜」


項垂れる私をセレンが慰めてくれた。

「セレンがお姉ちゃんなら嬉しいです。見習いたいくらいに素敵女子ですから」

眉を下げ微笑すると背後の男性陣から呻き声の様な呟きが聞こえてくる。

見習っちゃダメダメ……。リラはそのままで。セレンは素敵じゃなくて……。様々聞こえる呻きをセレンはひと睨みして諌める。


セレンが、家のあのドレス着せたい、あれも似合いそう。髪型もああしてこうして……セレンの着せ替え妄想が口をついて出ているのを聞き、騎士団から出るのは大変そうだと私は内心ゲンナリした。




( いつまでも、ココって訳にはいかないわよね …… )


私の引っ越し計画はかなり難しそうです……。


◉ラグド・ヴォルカン 188cm 33歳

第1騎士団3番隊国境警備部隊隊長

ワインレッドの髪 (赤髪)

アイスブルーの瞳(水色)

胸元位の髪の長さ。

精悍な顔立ち、端整な目鼻立ちで雄々しい美丈夫。目元は涼やかで切れ長。マッチョ。


覚え書きを付け忘れてました(^^;

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ