21 ニャンコと混迷と
少し時間が戻り、騎士団side視点
なんちゃって似非殺陣。流血表現あります。
屈強な軍馬が夕闇の中を駆け風を切りマントをはためかせる騎士の一団。
東の森を目指し馬を休める為、途中休憩を挟むも必要時間のみで皆無言だ。
夜の帳が覆う頃東の森に着く。
森の中を駆け抜け近くまで行くと馬を降り様子を見ながら進む。
部下が斥候に出て状況を確認し報告に戻って来た。
「二階建て正面8部屋、玄関右横にあり。明かりがあるのが一階の2部屋。見張り5名。別棟には人の気配無し」
報告を受けシャルトが切り出す。
「近くに行ったらリラの居場所を確定します」
「相手側に魔術師がいる可能性が高い。短時間で制圧する。心して掛かれ」
ディルムンは部下には見張りを、自分達は中を制圧。と指示し突入する。
駆け出した部下は見張りに向かいディルムンとシーニア、シャルトは館に侵入する。
シャルトは魔力確認すると声を上げた。
「左一番奥です!」
その声にシーニアは駆け出し奥の部屋へかう。
ドアを蹴破り部屋の中に視線を向ければ、剣を構える男の背後で服を乱し肌を晒したリラが寝台に横たわっていた。
「リラッ!」
全身の血が滾り男の剣を叩き払い間合いを詰め斬り込んだ。
相手を斬り伏せるとリラが起き上がり茫然としているのを目端に捕らえ、「大丈夫か!?」と語気荒く詰め寄り、リラを怖がらせてしまった。
急いでリラにマントを掛け、ごめん。と謝りひと呼吸おいていつもの口調を心がけた。
「大丈夫?」
リラのホロリホロリと流れる涙をただ見ていた。
触っても大丈夫だろうか?
こんな後では触られる事に拒絶されないだろうか?
シーニアが思いを巡らせていると掠れた声で呟く言葉が聞こえた。
「しー……にぁ…………っ」
シーニアはリラを抱き寄せ腕の中に包み込んだ。
「遅くなってごめん」
*
シャルトの声でディルムンはシーニアと違う部屋へ向かい突入する。
シャルトはリラとは違う魔力を感じ魔術師が居るであろう部屋へ向かうディルムンを追った。
ディルムンに細身の男が斬り掛かり、フードの男が術を展開するのが見えた。ディルムンは細身の男を剣圧で切り崩し、その瞬間術が発動するのをシャルトが雷撃を放ちフードの男を倒した。細身の男が渾身の一撃に来たがディルムンが剣を打ち上げ一撃で切り捨てた。
静まり返る室内をディルムンは証拠を探した。
しかしそれは探す必要も無く机の上に置かれていた。
ディルムンはそれを手に取り目を通すと息を飲んだ。
「どうしたんです?」
訝しんだシャルトはディルムンに近寄ると手紙を渡され目を落とした。
「…………………………」
言葉にならず立ち尽くすシャルトとディルムンの背後のドアに人が来た。
リラを抱き抱えたシーニアだ。
「リラを確保しました」
それを見てディルムンは配下に指示を出す。
生き残ったフードの男を捕縛し自決防止と魔術師の魔具の回収後、搬送する様に部下に伝える。
撤収。と言うと馬に向かった。
マントに潜る様に包まり顔色の悪いリラ。
シーニアが抱えて馬に乗っているが一言も発しない。
シャルトがシーニアに目配せするがシーニアは首を横に振る。
ただ今は静かに帰路に向かうのみだ。
道中リラは眠っていた。
シーニアはリラを起こさぬ様に落とさぬ様に優しく抱き抱えていた。
*
闇夜に未明から薄明かりが差し込み夜が開けようとしていた。
その静寂の中馬を進める者達が騎士団に向かっていた。
騎士団の門をくぐり馬を進めると大きな人影が立っていた。
「ブランブル団長……」
シーニアは呟きリラに目線を落とした。
「まずはお疲れさん。無事奪還ご苦労。嬢ちゃんは医務室に寝かしな。本館なら安心だろ」
セレンが看病を申し出た。
「ディルムンは報告、シャルトにゃ別件がある。戻りついでに一仕事頼まれちゃあくれねえか?」
「貴方が頼み事などとは槍が振りそうですね」
シャルトは慇懃無礼に答えた。
「全ては報告の後だ」
部屋に戻るブランブルの後をディルムンが追従する。その後をシャルトも追った。
*
シーニアはリラを抱き抱え医務室にセレンと向かう。重い空気の中を躊躇いがちにセレンが口を開く。
「リラは大丈夫なの?」
「……………………」
無言が答えとばかりにセレンは息を飲む。
「…………………………怪我は………… ない」
その“間”に意味があるのか。とセレンは顔を曇らせ口を箝して深く追求はしなかった。
医務室の寝台にリラを横たわらせ、静かにリラを見つめるとシーニアはセレンに深く沈んだ声で頼んだ。
「リラを、頼む」
踵を返したシーニアからは鋭く怒気を纏っていたのを感じた。その後姿をセレンはただ見送っていた。
セレンはシーニアのマントに包まれたリラを解き寝台に寝かし直そうとすると、あぁ。と納得するも、同じ女としての虚しさと哀しさが胸に去来していた。
リラのシャツは無造作にボタンが止められ、両手首には指の後が残っていた。
*
団長室のドアを開けブランブルとディルムン、シャルトは部屋の中へ進む。
ブランブルが席に座るとディルムンは一連の報告をする。
現着後、屋敷突入後対象の救出。見張り5名内4名死亡、主犯格3名内2名死亡。生き残り2名確保対応後こちらに配下が搬送中。と報告すると証拠を提示した。
「生き残りは魔術師と傭兵。証拠は書きかけの手紙です。物質転送陣で黒幕と手紙のやり取りをしていた様です」
ブランブルは目を見開いて手紙を凝視した。
そこへシーニアがノックして入室してきた。
「嬢ちゃんはどうだ?」
「眠っています」
「そうか…嬢ちゃんの救出時の話を聞かせてくれ」
ブランブルのその言葉にシーニアは、ギリリと奥歯を切歯した。
シーニアは苦々しく救出時を報告した。
「そうか……」
流石に二の句が継げずブランブルも口を結んだ。
「だが間に合ったんだ。それで良しにしろ。仕事に感情挟むな。今は解決が先だ。嬢ちゃんの真相が真実なら尚更慎重になれ」
ブランブルはシーニアを諌め、新たに分かった真相に頭を悩ませた。
「真相とはなんですか?」
シーニアはリラを救出していたため手紙は読んでいなかった。ブランブルから手紙を受け取り目を落とし読むと言葉もなく手紙をブランブルに戻した。
「リラは異世界から……大魔術師によって?大魔術師リアンは100年程前の人ですよ?信じるのですか?」
シーニアは混乱しブランブルに困惑の表情を向けた。
「嬢ちゃんから聞いてたんだ。異世界から来たと。だが大魔術師リアンの話しは聞いてない。だとすると俺も一杯食わされたかな」
ブランブルが眉間に皺を寄せ厳つい顔を更に顰めた。
「とにかくまずは休め」




