14 ニャンコと講師とこぼれ話と
今日の私の仕事は午前中で終わった。ディルムンが仕事で午前中しか居らず私は午後から時間が空いたので本館の図書室に行く事にした。
異世界という世界で、自分の状況把握するのにも情報が少なすぎる。
私はこの国の歴史などを詳しく知ろうと本を物色していると奥の席でシャルトが書類を書いているのが目に入った。
図書室のランプの下で優雅な雰囲気を纏い姿勢正しく書き物をするシャルトに一瞬目を奪われ私はシャルトに遠慮がちに声を掛けた。
「こんにちは」
「おや?貴女が図書室とは珍しいですね」
「調べものに来ました」
私が声を掛けるとシャルトは書いていた手を止めて書類を端に纏めインク瓶に蓋を閉め私に向いた。
「よろしかったら今お時間良いですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
私が答えるとシャルトは立ち上がり向かいの席に私を誘導し椅子を引いてくれる。
( 恥ずかしい事をスマートに出来るシャルトは貴族だねえ…… )
シャルトのエスコートに恥ずかしくも感心しながら私は座った。シャルトも机の上で両手を組んで置くと私に向いた。
「貴女とゆっくり話をしたかったのです」
「そうなんですか?」
「ええ、教育に対する内容や政策の話は素晴らしい話しで、とても有意義な時間でした」
「そう…ですか…」
「貴女のその知識に興味がありまして、もっとお聞きしてもよろしいですか?」
私の知識はブランブルにも渡せないと豪語した手前、話せないのだが…。
話せる範囲なら…。と言い淀み、前に話した事なら大丈夫だろうと、住んでいた町の事や建物と地震の関係、地質構造を話した。
( 前にシーニアやセレンに話した内容と同じだから、大丈夫かな?新しい情報流出してないし )
「あとは、国としての組織について…」
三権分立や防衛組織を話した。
王権国家で貴族や騎士団とかの世界観に、三権分立や自衛隊の話しをして理解しきれるのか疑問だが、シャルトは興味津々で聞いている。
私の知識など高校短大、ニュース程度の知識で正確でもないうろ覚えを人に話すのは気が引ける。
私は、もう話したくないなぁ。と思いながらシャルトに話し終えた。
一頻り聞いていたシャルトは、ほぅ。と感嘆のため息をついた。
「貴女は博識なのですね」
私はシャルトのその言葉に、いや違う。中高生の知識。皆知ってる程度。とは言えず返答に困り私はシャルトに別と話を振る事にした。シャルトの知識欲は分かるがこれ以上話す訳にはいかない。
シャルトは研究に没頭すると数ヶ月は研究室に篭り出て来ないらしい程探究心旺盛らしい。獣化の謎が解けない限りシャルトの私への興味は止まないのだろうと思うと気が重い。
私自身も、なぜ猫になったのか分からない以上説明も出来ない。
異世界転移という私も理解出来ない事態に自分自身何も進展していないのが歯がゆい。
私には元の世界に帰る手掛かりさえない今、魔力と言う理解出来ない物を操るシャルトの情報は藁にもすがる思いだ。
「私も聞きたい事があるのですが、良いですか?」
「おや。私にですか?何をでしょうか?」
「魔術と魔力についてです」
私は聞きたかった事をやっと聞けた。
シャルトから魔力の基礎を聞いた。
前に獣化解除後に道すがら聞いたがちゃんと聞きたかったのだ。記憶のない時にも聞いているらしいですが、記憶がないのでもう一度教えて貰った。
「私に魔力があるなら私も魔術を使える様になるでしょうか?」
「貴女の魔力の高さならすぐに使える様になるでしょう。こちらから魔術師としてお誘いしたいくらいです」
貴女の魔力は素晴しくとても高いのですよ。貴重な存在です。とシャルトに手放しで言われ気恥ずかしくなる。
「今度お時間ある時お教えしますよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
シャルトに魔術講師をお願いする事になり、私はなんだか一歩進んだ気がした。
魔術で何ができるのか。
自分ができる事。
帰るためにできる事。
その手がかりを少し掴めた様な気がした。
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◉こぼれ話 ニャンとも番犬
今日もいつもの様に計算して私は事務方に書類を届けに来た。
「いつも早くて助かります」
「いえいえ。仕事ですから」
私が渡した書類を担当者が受け取り確認しながらこちらを見た。
「良かったら今度飲みにでも行きませんか?」
日頃の感謝をしたいので。と担当者さんは私に爽やかな笑顔を向けた。
「うーん」
私は暫し、ひと悩みする。
ですけど……と言い澱み、ディルムンさん付きになるかも?と口籠ると、え? と言う顔をされた。
前回ディルムンさん付いて来たし、私の監視?で付いて来るし……とブツブツ口籠って思案していると、担当者が慌てて書類を纏めた。
「やっ。また今度でっ。うん。仕事頑張ってね?」
担当者はそう言うとそそくさと書類を抱え奥へ退がっていった。
「?」
私は呆気に取られながら担当者の後姿を見送っていると背後から声がした。
「あら。番犬が番犬らしい仕事してるわねー」
私の後ろにクスクス笑いながらセレンが立っていた。
「番犬?」
振り返りセレンを見つめ訝しむ私に、いいのよー。気にしないでー。とセレンはまた笑っていた。
後日私は、彼女の背後に番犬有り。と噂される事となる。
2016.12.5微調整加筆修正
2017.3.8 本文にタイトル入っていたので削除
2017.4.8誤字修正




