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ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第一部
13/85

13 ニャンコと空言と挨拶とこぼれ話と


不審人物、身元不明の私の真実がブランブルに明らかとなり私の監視は解けた。


監視のためセレンと同室だったのが晴れて私は個室になった。


居候の私に荷物は殆ど無く、移動は簡単に終わる。



私は必要最低限の必需品も無くなる前に購入しようと思い、買い物へ行く事にした。



給金は記憶の無い時のエレの仕事分の給金を前回貰っている。

今の私の仕事でも給金を支給して貰ったので二回目の給金だ。

( やってて良かった、お仕事大事! )


記憶の無い私でも私は私なのだろう。

けれど私として仕事してないのに貰うのは何とも言え無い気分だが今は納得しておく事にした。




今日も午後から時間が空くので、今日こそ買い物へ行く!

だが、買い物をするには、ひとつ面倒な事があった。



まず私は、5番隊の部屋に向かった。

ドウェルに買い物へ行く事を伝えた。


「本館玄関で待て。護衛を連れて行く」

言葉少なに用件を言うとドウェルは仕事に戻るので私も直ぐに退室をする。



護衛を付ける。



これが私が騎士団の外に出て買い物をする時の条件。

なので買い物の度に護衛を頼みに5番隊に行く事が義務付けられた。

( 凄く面倒!気軽に外出できないじゃん! )


買い物の度にセレンに付き合って貰うのは申し訳ないので仕方ない。面倒でも護衛を頼みに行くしかないのだ。





程なくして護衛が来た。



「シャルトさん?」

護衛に来たのが騎士では無くシャルトが来て私は驚いた。


「ドウェル隊長が護衛を指示していたのが耳に入りまして私に任せてもらいました」

シャルトは柔和な笑み浮かべ私に一礼する。私も慌ててお辞儀をして挨拶を返した。

「お、お手数おかけします。シャルトさん」

「ええ。よろしくお願いしますね。シャルトで結構です。敬称も敬語も要らないですからね」

彼はふわりと笑うと私の手を取り唇を落とした。




シャルトはクスクス笑いながら私を見ている。

「挨拶とは言え慣れないですか?」


手にキスをするなんてテレビか映画でしか見た事ない。貴族的な挨拶をされ顔を赤くした私をシャルトは興味深く眺めている。

「こう言う挨拶は私の国ではありません」

視線が泳ぎ赤い顔を隠す様に両手で頬を抑えた。

私は誤魔化す様に外へと繰り出すとシャルトは私の隣に並んで歩いた。


「では、もしかして初めての挨拶でしたか?」

私は恥ずかし紛れにチラリと睨むもシャルトは素知らぬ振りな顔で、なら挨拶が楽しみです。と楽しそうだ。

私は赤い顔が熱くなるのを誤魔化す様に俯いて街を歩いた。




「今日は何処に買い物へ行くのですか?」

シャルトは私に今日の予定を聞いてきた。


「セレンさんに貰った香油が無くなったので同じ物を買いに行きます。あとはお酒かな?」

「お酒ですか?」

「この間飲んだお酒が美味しかったので」

「何処で飲まれたのですか?」

「セレンさんシーニアさんディルムンさん達と外へ食べに出た時です」

「へぇ。成る程、いつの間に」

シャルトはふーんとばかりな顔をすると、何やら思案顔をした。




前にセレンが買い物をした小物雑貨店に行き私は店内を散策する。

香油は洗った髪に少量付けて馴染ませ洗い流す様に使うので余り香りがしないのを探していた。

シャルトは私にどんな物を探しているか聞いてきたので希望を言ったら、これなんてどうです?貴女に似合いそうと思いますが?と選んでくれた。

「良い香りだね。前のもいいけどコレもいいね。香りを変えて気分を変えてみるかな?」


私は、シャルトが奨めた香油にするね。と会計に向かうとシャルトに香油をひょいと持っていかれ代わりに会計を済まされた。


「ちょっ!?私払うよ?自分のだし。買い物に来たの私だよ?」

「女性と居るのに払わぬ男はないでしょう?」

シャルトは当然とばかりに首の傾げ私を見つめている。

「ソレは護衛の仕事ではありません」

「男としての矜持なので気にしないでください」

シャルトに、贈り物をしたくて買っているのですから貰って頂けますか?なんて言われたら断われません。

( NOと言える人間に私はなりたい… )


私が恐縮してお礼を言うとシャルトに満面の笑みで返された。



次に向かうのは酒屋だ。

私は飲むのは好きだ。

本当は酒飲みだ。

基本ワイン1本くらいなら酔わない。日本酒も中瓶1本飲んでも大丈夫なくらいだ。友達と飲み潰れた時は缶ビール15本ワイン2本ウイスキー1本を空けたからだ。それ以降は限度を弁えた飲み方になりました。うん。……二日酔いつらい。……二度と、しない。



果実酒を2本買おうとしてやはり支払いはシャルトがした。

「護衛の仕事だけしてください。今は矜持お休みにしてください」

困惑顔でそう言うも気にも留めないシャルトに抗議しても無駄だった。

荷物も私が持つと言っても、シャルトは、女性に持たせるなんて以下略を繰り返す。

「もう。護衛にシャルトには頼まない様に言います」

「それは困りますね。こんなに楽しいのに?」

「そうですか。……私を揶揄って遊んでいるんですね」

私が憤慨だとばかりにすればシャルトは、お気になさらず。と爽やかに笑っている。



「揶揄ったお詫びにお食事をご一緒させて頂けませんか?」

「揶揄ったの認めるんですね?」

私の憤慨をシャルトはサラリと妖艶な笑みで受け流す。


シャルトから夕飯のお誘いだが私は、支払いが私なら。と答えた。

「私と食事を共にはして頂け無いのですか?」

シャルトに違う角度で返され私に対する返答をずらされる。

「私とではお嫌ですか?」

シャルトが眉を顰め困った様な寂しそうな笑みにこちらが逆に罪悪感を持たされる。


断れそうもなく抵抗も無駄みたいなので私は仕方が無く諦めた。

「……ご一緒させてください」

「ええ。喜んで」

シャルトはサラリと手を取り唇を落とす。


呆気に取られる私を楽しそうに眺めるシャルトに赤い顔で睨んでも無駄なので私は俯いて顔を逸らすしかなかった。

俯いて見えないけど、きっとシャルトの顔は満面の悪戯顔だ。絶対。



案内された場所は、いわゆるお高そうな店だった。

( 流石貴族よね。選ぶ店が違うわねー )

「ここはドレスコードが無いので大丈夫ですよ」

私は、お高そうでもシャルト的にはラフな店なのね。と心の中で独言る。



美味しい食事に私の頬は緩みっぱなしだった。

食後に食事の余韻を噛み締めているとシャルトに笑われた。


食事中の会話はシャルトに私の国の事を聞かれた。

ブランブルにも知識は渡せないと豪語した手前迂闊には話せない。

最初に話した読み書き計算は国民全員普通にできる事を学校や教育制度の事を含め更に詳しく話した。

( うーん。線引きが難しい…… )



「貴女の国は本当に平和で幸せな国なのですね」

「島国だから侵略される事が中々無いですから」

「成る程。それでも国内が平和な事は凄い事です」

「そこまでの道のりは永く重い物です。数々の戦さを経て得た物ですから。維持もまた難しいですし」

「この国もそうありたいですね」

シャルトは深く頷くと感慨深く双眸を翳らせた。



店を出ると日は暮れ、空は暗くなっていた。

「では帰りますか」

そう言うとシャルトは私の手を握り歩き出した。

有無を言わさず手を引かれ戸惑う私を横目に、笑みを浮かべるシャルト。


今日はシャルトに遊ばれた一日だと思い私は諦めの溜め息をついた。



そして宿舎で別れる際にも私の手に唇を落とし、おやすみなさい。と言うと楽しそうにシャルトは帰った。



部屋に戻ってもなかなか顔の熱が冷めなかった。





**********


◉こぼれ話 ニャンとも困る



休憩室で珍しく隊長達が揃った。


相変わらず国境警備部隊の3番隊隊長は居ないので会った事は無い。



お茶を飲み一息つくとセレンが私に聞いてきた。


「リラは猫の時の記憶あるんだよね?」

「う、うん…」

セレンのなんだか奇妙な雰囲気に対して、猫の時の名残か私の中に警戒心が湧いてきた。


「シーニアと一緒だったけど、どうだったのかなって思ってね?」

「ど、どうって?」

セレンのよく分からない質問に私が戸惑っているとブランブルが、おっ!っとばかりに話に食い付いてきた。


「見たのか?シーニアのハダカ!?」


質問の破壊力に目を見開き私は慌てふためいた。

後ろでお茶を飲んでいたシーニアがお茶を咽せて咳こんでいる。


「見てないです。見ないです。隠れていました!!」

私は慌てて身振り手振りで否定するもセレンとブランブルは興味津々で追及をやめない。


「本当に?」

「本当かぁ?」

セレンとブランブルは私に詰め寄り念を押し、その剣幕に押された私の視線は彷徨っている。


セレンとブランブルの勢いに呆れているバーマンと平然とお茶を飲むドウェルとディルムンからの助け舟は期待は出来そうも無い。


「恥ずかしいから見てないです!!」

「チラリとも?」

「チラリとも!!」

私は頭を抱えセレンとブランブルに言い返すも、本当か?と怪しい視線を送るブランブル。


「でも一緒に寝たんでしょ?抱いて寝たって言ってたわよ」

セレンは悪戯顔で、うふふ。と笑っている。


恥ずかしさに私は挙動不振になり動揺が走る。

「勘違いされるような事を言わないで下さい!猫です!猫だから!猫ゆえに!!」

「でもリラでしょ?」

うぐぐぐぐっっ

私は恥ずかしさで身悶え頭を抱え唸った。



「で、シーニアは?」

「はっ??」

傍観を決めていたシーニアが突然セレンに話を振られ、質問の意味に頭が着いていかない様子だ。


ブランブルは双眸を細めニヤリとあからさまに悪戯な顔をした。

「嬢ちゃんと一緒の部屋に居た感想だ」

「だっ!!そ、それはっ!!猫だし!猫だったし!猫だと思ってたからっ!!!」


リラと同じ様な言い訳に悪戯心が加速するセレンが愉しげな笑みを浮かべシーニアに迫る。

「でもお風呂一緒に入ったんでしょ?」

「っっっ!!一緒に入ってない!洗っただけだ!!」

「猫だと思ってリラの全身くまなく洗ったのね?全身をイジリ回したんでしょ?チュウしちゃったりして? 」

セレンの立て続けの質問に耳を赤くし横を向いて恥ずかしそうに指で鼻の頭を掻くシーニア。


セレンはチラリと私に視線を移す。

「リラ、シーニアに何されたの?」

「もう、知りません。覚えてません」

私は顔の表情を読まれまいと横を向き逸らした。


もう私は惚けるしかない。

全身洗われたとか、朝チュンとか頭をよぎるが、黙秘する。


「えー言えない事されちゃったのね?」

「されてません!」

セレンの追求は止まず私は躱しきれなかった……。



私は休憩中延々と暇なセレンとブランブルに揶揄い倒された。


「人を揶揄って遊ばないでーーー!」


終始ドウェルとディルムは無口無表情だった。


2016.12.5誤字修正

2017.4.8誤字修正

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