12 ニャンコと真偽と真実と瞑想と
私の毎日は計算の日々だが勿論休みもある。
私の仕事はディルムンが訓練などで居ない時は隊長室には居られない。そのため休みになる。
今日はディルムンが午後から訓練のため時間が空いた。
私は買い物に出ようかと思うも、一人で騎士団から出て良いのか分からずブランブルに聞きに行った。
「話ってなんだい?」
ブランブルに買い物に私一人で行って良いのかを伝えるとブランブルに、ちょっとこっち来い。となぜか人の居ない会議室に連れて行かれ二人きりになった。
良く分からない状況で居心地が悪く、回りを見回しブランブルに勧められた席に私は座った。
机を挟み私の対面に座ったブランブルは腕を組むとこちらを向いた。
「嬢ちゃん、仕事は慣れたか?」
「っ、はいっ、少しづつですが」
緊張で口が渇く様な気がする。
「嬢ちゃんはここでの生活どう思ってんだ?正直に言ってくれるかい?」
あぁ、質問をするために別室にされたのか。と思い私は深く深呼吸をした。
「身元不明の不審人物である私の面倒みて頂いている騎士団に対し感謝しております。状況の分からない場所で身寄りの無い私には感謝しきれません。いつか一宿一飯の恩義を返せればいいと思っています」
私は居住まいを正し手を腿に置き背を伸ばしてブランブルに視線を向けた。
「成る程な。じゃあ、自分から騎士団を離れる気はあるか?」
「無いです。他に行く所無いですから」
「そっか。ならここから逃げる気は無いんだな?」
「無いです」
私の即答した答えに納得したのか、腕組みしていた腕を解き、机の上に手を置くとブランブルは身を乗り出し双眸鋭く細めた。
「なら、全部、正直に、話せ」
「………………っ」
私は息を飲んだ。
見透かされている事に私の背筋に冷たい物が走りドクリと心臓を射抜かれた様な気がした。
「嬢ちゃんの様子を観てりゃ敵じゃ無いのは分かる。だが隠し事はそろそろ吐いてくれねぇか?」
ブランブルの瞳が更にすうっと細くなり鋭さが増した。
肉食獣に狙われた獲物はこんな気分か。と背筋を伝う冷や汗を感じていた。
「あまり無体な事もどうかと思って嬢ちゃんから話してくれんの待ってたんだがこの機会だ、喋っちゃくれないか?」
くれないか?じゃ無くて、くっちゃうぞ。に聞こえるのは、ブランブルの獰猛な視線に射抜かれ身動きが取れず、それなりに動揺しているからなのだろう。
いつかは話さなければならないと思っていた私は隠し切れないと思い諦めた。
私は深い深い溜め息を吐くと、話す覚悟を決めた。
「私は、地球と言う異世界から来ました。この世界の住人ではありません」
ブランブルが息を飲み目を見開いた。
「異次元を渡りこの世界に来たみたいです。私の世界には魔術は存在しません。違う世界から来たのでここの世界の事が全く分かりません」
「…………どうやって来たんだ?」
茫然とするブランブルは呟く様に口にする。
「分かりません。知っていたら元の世界に帰っています。今の私に分かるのは、猫と木から落ち気が付いたらこの世界に居た。私は猫になり、人に戻った。これだけです」
私は淡々と表情を変えず説明に徹した。
異世界。
この事実がどう出るか。
私にはそれが一番の問題だ。
「異世界か………」
「異世界です………」
ブランブルは肘を机に付き顔を手で覆った。
衝撃から抜け切れていないブランブルは譫言の様に言葉にした。
「嘘だろ、とは一概にゃあ言えねぇなぁ…。嬢ちゃんのその知識や情報は、嬢ちゃんの世界の知識って事かい?」
「……はい」
「他にどんな知識がある?」
私は暫し思案に暮れて慎重に答えた。
「確かに知識、情報はあります。が、話せません。文明が違う以上、知識の共有はできません。文化侵略となり相手側に良い影響のみとは限らないのです。責任の取れない情報は渡せません」
私がそう言うと聞いていたブランブルは気を取り戻した様で、ほう、言うなぁ…。と、再び目を細めた。
私も引き下がれないと思い気を引き締めブランブルに対峙する。
するとブランブルは乗り出した身体を椅子の背に預けニヤリと笑った。
「成る程な。ここの世界の人間じゃ無いなら、敵でも味方でも無いって事だな」
「お世話になっている騎士団に対し不利益になる様な事など致しません。一宿一飯の恩義を返したいと言いましたが?」
……私はなんだか場に慣れてきた。
お偉いさん相手に接客している気分になる。
いや、ブランブル団長は団長だから偉いのだが…。猛獣属性の接客はあっちの世界ではない。
普通のお偉いさん接客対応の様に口が回りやすくなってきた。
「嬢ちゃんの立ち位置を確認したかったんだが、えらく驚く事実が出てきたもんだ」
「全て信じてくれるのですか?」
「嘘つくならもっと違う事言うだろ?話が途方もなさ過ぎる」
「ありがとうございます」
「この事は他に話すな、漏れれば命を狙われる。他の隊員にも秘密にしておけ」
「…………はい」
命を狙われるのか……
理由は分からないが、ブランブルは狙われる理由を知っている様子だ。
監視は解く。だが護衛は付ける。
そう言ってブランブルは私に退室を許可した。
時間の掛かる買い物許可申請だった。
おかげで買い物は次回になった……。
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ブランブルは椅子の背に身体を預け深く息を吐いた。
異世界だと。
途方も無い言葉が出てきた。
ブランブルは目を瞑り天を仰ぎ大きく息を吸い、吐き出すと目を開けた。
だがこれで繋がった。
一辺だけでも繋がったのだ。
大魔術師リアン・シュベーフェルに。
リラはリアンに繋がる何かを持っている。
「聴いていたな?出掛ける際5番隊に護衛は任せた。一人で歩かせるなよ」
そう言うと部屋の陰から何処からともなく男が出て来ると膝を付き傅く。
「了解しました」
そう言うと再び陰の中に消えた。
ブランブルは魔術師達が知らない事を一つだけ知っている。
獣化術は開発者のリアン・シュベーフェルしか成功しない。
それを知るブランブルはリラを引き入れるためなら多少のゴリ押しなど構わないのだ。
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2016.12.5微調整加筆修正
2017.3.8.本文にタイトル入っていた為削除しました。




