11 ニャンコとお酒とお誘いと
途中主人公外視点に変わります。
分かり難かったらすみません。
仕事が終わり私が帰ろうとするとシーニアが、一緒に外で夕飯食べよう。と誘って来た。
行こうとするとディルムンが、同行する。と言う。
「飲みにまで付いて来るな!」
シーニアは邪魔だとばかりに抗議する。
「仕事が一緒だからって上司気分か!」
何でお前がっ!と非難するもブランブルから監視を命令されている事を言えばシーニアも項垂れていた。
「俺じゃぁ信用が無いのかぁ」
帰り際に言い合っていたら仕事終わりのセレンに見咎められ皆で一緒に行く事になった。
イシェルワ国の王都は王宮を中心に南側に馬蹄の様にU形に城下町が広がっている。
王城の北側には右側に騎士団、左側に魔術師団が設置されている。
冬も終わり春となったが夜は外に出ると少し肌寒くなる。歩けば程よく上がった体温を風が撫で心地良くなる。皆背が高く歩幅が違うので早歩きをして付いて行く。身体を温めるには丁度いい速度に、トレッキングみたいだ。と思いながら私は歩を進める。
街に着くと、シーニアはどうやら行きつけのお店に行く様で、こっちだよ。と席に進み付いて行った。ちょっとお洒落な居酒屋?みたいな雰囲気のお店で店内も赤煉瓦作りの落ち着いた装飾だ。
私とセレンが並んで座り、向かいにシーニアとディルムンが座った。
皆席に着くと先ずお酒を頼むみたいでシーニアとディルムンは瓶で何かを頼んでいた。
シーニアは、何飲む?とメニューを見せてくれた。
セレンは、リラはお酒飲める?果実水にでもする?と聞いてくれる。セレンは気を回わせる素敵女子です。見習いたいです。
「そう言えばここに来てお酒は初めてです。飲めるので大丈夫ですよ。甘めのお酒をお願いします」
「なら私と同じで良いわね」
メニューが読めても料理の内容が分からないので、料理を幾つか頼んでもらった。
お酒は直ぐ来て皆で、お疲れ様。と杯を掲げ口を付けた。
( こう言う所は世界が変わっても同じなのね )
揚げ物が来たのでつまみながらお酒を味わった。料理は素朴で、いわゆる昔っぽい味付けかな?手の込んだ物もあるけど、ちょっとまだ洗練されてないかな?と思いながら口に運ぶ。イタリアンぽかったり、アメリカンぽかったり、似た味を楽しんだ。
「仕事だいぶ進んでるみたいね。事務方が喜んでたわよ」
「リラの計算早いからなぁ」
「まだ要領が分からないから迷惑かけてないと良いんだけど」
「謙虚だねリラは」
( 謙虚大事。日本人精神は抜けません )
食事をしながら話しは進む。
シーニアに、リラがお酒飲めるのは意外だ。と言われ、そう?と返せば、十代だと思ってたから。と言われた。
どうやら16〜17才位に見られていたらしく、それは年齢詐欺だ。と返せば笑われた。
「童顔な種族なんです。私はこれでも同性の中では大きい方なんですよ」
え?それで大きいの?二人から愕かれ、私の身長は男性の平均身長に近いですよ。と言えば、小柄な種族なのねぇ。と不思議がられた。
「小柄だとお酒回るの早く無い?大丈夫?」
セレンに心配されるが、大丈夫です。酔いません。と返す。
「酔わないの?酔った事無いの?」
シーニアは信じられ無いと言う顔をしている。
「基本、人前で酔うまで飲みませんよ?嗜む位なので」
「俺なんか何時も二日酔いまで飲むからなぁ、じゃぁリラは酔う程飲んだ事あるの?」
「部屋で一人で飲む時位です」
「一人は寂しいよ。一緒に飲もうか」
( シーニア、からみ酒か? )
机を見ると瓶が何本か空いている。
「シーニア飲み過ぎるな」
ディルムンが初めて喋った。
私にはそれが可笑しくてクスクス笑ってたらディルムンにジロリと見られた。
「私の監視じゃ無くてシーニアの監視に来たみたい」
セレンと目配せし二人でまたクスクス笑っていた。
シーニアは直ぐ飲み過ぎるから信用ないのよ。とセレンに言われシーニアはバツが悪そうにしていた。
「なんだ。残念。酔った所見れるかと思ったのに」
お酒で頬を赤くし、ニヤリと笑うシーニアに、私はヤレヤレと肩を竦め呆れて相手をする。
「早々酔いません。今までで酔わされた相手は一人です」
一瞬、何かがピタリと止まる様な気がしたが…?
「リラまだ飲む?果実水にしとく?」
「そうですね。果実水にしておきます。明日に響くのは困るので」
セレンに口直しの果実水を頂き、そろそろお開きとばかりに撤収の準備をする。
お代は声を掛けたシーニアの奢りになった。
流石に悪いです。と言うと、また一緒に飲もうね、今度は二人で。と耳元に顔を寄せて言うとシーニアにスタスタ先に行かれてしまった。
私は囁かれた耳に手を当て、多分私の顔は赤いんだろうなぁ。と思いながらセレンと並んで帰った。
寮に戻り遅めの入浴を済ませ部屋に戻った。
お酒には強い方だが慣れない場所で少し回ってきたみたいだ。ここに来て久しく飲んで無いのも影響した様だ。なので、セレンにお休みを言うと早々に眠りに落ちた。
*
私は久し振りに良く寝た気分だ。
( 部屋飲み用にお酒買っておくのも良いかも )
そして、いつも通りの毎日が始まる。
猫じゃ無い毎日。
会話が出来る事に私は感謝する毎日だ。
私は書類を部署に届け隊長室に戻る途中、シーニアに捕まった。
ちょっと良い?と言うとシーニアは返事も聞かず私の手を握り歩き出した。
私は手を引かれ小走りにシーニアに付いて歩き息が上がる。
「シーニア?」
呼ぶも振り向かず返事もないシーニアに訝しむも手を引っ張られ私は追いつく為に脚を動かすのが精一杯だ。
シーニアが立ち止まった時には私は息が上がり胸に手を当て息を整え見上げると表情の無いシーニアが私を見下ろしていた。
シーニアを見上げながら思わず、シーニア?と言いながら一歩退がればシーニアに近付かれ、また一歩退がれば近付かれ、数度繰り返すと私の背は壁に当たった。
退がれない私の両肩の横壁にシーニアの両手が置かれ私は、壁ドンだ。などと思いながらも、この状況に思考が停止する。
私の視界全てがシーニアで埋まった。
シーニア?再び名を呼べばやっと視線が重なり口を開いた。
「リラが酔わされた相手は誰?」
…………キョトンとした顔で私はシーニアを見返す。
「友達だけど?」
そんなの答えじゃないとばかりに、どんな?と言いシーニアは顔を近づけた。
「昔からの友達……………」
本当に?と昨夜の様に耳元で艶のある声色で囁かれれば頭の中が真っ白になる。
「とっ友達。飲み仲間でっ。だからっ飲み過ぎた時があって、ふっ二人して二日酔いツライねって、ベッドで苦しんで…」
ベッドで…の言葉にシーニアは顔を耳元から離し私の正面に向けた。鼻と鼻が触れそうな程の近さに私は呼吸を忘れ思考が止まる。
「…………たの?」
「……なに?」
「泊まったの?」
止まった私の思考がやっと声を拾う。
「かっ彼女の、しゅ就職祝いでっ」
シーニアが止まった。
「………?」
「……彼女?」
「とっ、友達の、家でっ」
私の言葉にシーニアは壁に両手を当てたまま深く俯き、深い溜め息を吐いた。
シーニアは下を向いていた頭を上げ、バツが悪そうな顔をして、彼氏じゃないの?と呟く様に言った。
「いっ居ませんっ」
私はそろそろこの状況に心臓が保たなくなりそうで息が苦しい。
シーニアはバツの悪い顔のまま、ごめん。と言いながら私から離れた。
振り回してごめん。シーニアはそう言うと誤魔化す様に鼻の頭を掻いている。
また私はシーニアに手を掴まれ、送るよ。と来た道を戻る。
状況が飲めない私は、シーニアどうしたの?しか聞けず、シーニアも、何でもない、ごめんね。とはぐらかされた。
無言のまま6番隊の部屋の前まで来ると、シーニアは腰を屈め私と目線を合わせた。
「次の休みに二人で出掛けたいんだけど、良いかな?」
シーニアはズルい。そんな言い方されたら断り難い。
私が答えに詰まっていると、考えておいてね。とシーニアは耳元で囁きイタズラな笑みを浮かべクルリと背を向け去っていった。
「なんだったのよ」
私は耳に手を当て茹でる頭で暫し呆けていた。
その後、落ち着いてから部屋に入れば、遅い!とディルムンに怒られた。理不尽だ。
**********
ディルムンの机の上はいつもと同じく今日も書類で山積みだ。
合同訓練後は特に書類が大量になる。
況して今まで溜めていた分がまだ終わって無いのに追加が来てディルムンはウンザリした顔をした。
彼女は息抜きをしたいようで俺に許可を貰いに来た。
「ディルムンさん休憩しませんか?お茶をお持ちしますが?」
「ああ」
ディルムンの返事は短い。返事があるだけマシなのだが。
彼女は休憩室の横にある給湯室でお茶を淹れて戻り、俺にお茶を渡すと自分の席に座って一息付いていた。
前とは違う彼女。
記憶の無い彼女とは違う雰囲気だがやはり当人、似ている。
本人に似て居ると言うのは変な話しなのだが。
その事を前に聞いてみた事がある。
記憶の無い自分を覚えて居るのか?と。
「覚えてません。ただ皆さんが前と違うと言うのが困りますね。記憶の無い私は私ではありません。私の一部であり全てでは無いのです。欠けた私です。それを理解して欲しいですね」
今の彼女は自分の意見をしっかり持ち意思を貫く強さも感じられる。
計算は確かな物で事務方から修正書類は戻って来ていない。ただ黙々と仕事をし、この状況を取り乱す事無く飄々と彼女は受け流している。
今の彼女は記憶を取り戻したせいか前よりも計算が早い。上がった書類も各部署に届けて貰うため助かっているのが現状だ。
因みに彼女が書類を届けると各部署が、6番隊の書類が何時もより早い!早く済むぞ!と歓迎されているのを知っている。不愉快だが。
仕事は早く卒が無く教養があり意思もある。況してやあの知識と教養。知識の量には驚かされた。ただの小娘かと思えば、歳も23だとは見えない。
記憶の無い時の彼女は所在無さげだった分、違いが顕著だ。
そんな彼女の欠点は、
ああ、彼女本人は知らない。
知らないから直しようがない事くらいか。
彼女は何故か名前の発音が上手く出来ず、出来る名前と出来ない名前があるようだ。
バーマン、ブランブル、セレンはちゃんと発音しているが、シーニアはしーにぁ、ドウェルはどぇる、俺はでぃるぅんになってる。
童顔で舌足らずな発音で年相応には見れない。
皆も名を呼ばれるたび舌足らずな呼び方に顔が緩むのが分かる。どんなに緊迫してても舌足らずに言われると場が緩むのだが彼女は知らない。
彼女だけが知らない。
2016.12.5改稿
微妙な加筆修正




